On that days(10) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

そして。


北都フィルのデビューコンサートの日がやってきた。



ゆうこは腕時計を見ながらきょろきょろと周囲を伺った。


すると

「白川さん、」

声をかけれて振り向く。



志藤の両親がにこやかに歩いてきた。



「ごぶさたしています。 ようこそおいでくださいました、」

ゆうこは嬉しそうに頭を下げた。


そして志藤の父が

「初めまして。 幸太郎の父でございます。」

丁寧に頭を下げたので、少し恐縮して


「あっ、こちらこそ! 白川ゆうこです!」

慌てて頭を下げた。



背が高くて

面差しが志藤にソックリだった。



「身体のほうはいかがですか?」

優しくそう言われて、


「最近は普段と変わらないくらいになって。 仕事もできるようになりました、」

ゆうこはニッコリ笑った。


「無理せんようになあ、」

志藤の母は心配そうに言った。


「大丈夫です。 さ、こちらにどうぞ、」

ゆうこは新しく出来上がったホールに彼らを導いた。





志藤は相変わらず忙しくホール内の細かい指示をスタッフにしていた。

「んじゃあ、ここはもうちょっとフェードアウトするような感じのライティングにしてください。」


照明スタッフとの打ち合わせ中、



「志藤さん、」



声がして振り向いた。



ゆうこと共に自分の両親がそこにいるのに驚いた。



「は・・・」



口が開きっぱなしになってしまった。


「いそがしそやな、」

母はニッコリ笑った。


「え? なに? なんで?」

非常に間抜けな言葉しか出てこない。


「あたしがチケットをお送りしたんです。 ぜひ聴いていただきたくて、」

ゆうこは笑顔で言った。



「・・・え、」



「こんなに大きくてきれいなホールでやるんやなあ。 びっくりした。」

母は天井を見上げた。



「おまえの夢が叶うんやな、」



無口な父がポツリと言って、温かい笑顔を見せる。



「オヤジ、」



志藤は突然現れた両親に

ちょっと胸に迫るものがあった。



「嬉しいなあ。 ほんまに。 夢みたい、」

母も少し目を潤ませた。



志藤はようやく落ち着いて、



「・・いろいろ。 心配かけたけど。」

ポツリと言った。



「あんたがな、好きなことして・・・幸せになってくれたら。 もうそれでええねん。 それだけであたしたちは安心や、」



ヤバ。

もう涙でそうやし



志藤はグッと堪えて、

「開演は6時からやで。 遅れないようにな。」

優しく声をかけた。




ゆうこは志藤の両親をホテルに送ったあと、またホールに戻って雑務をしていたが

いつの間にか志藤が来ていて


「もー。 なんのサプライズやって。」

ボソっと言った。



「え? なんかね。 やっぱりご両親が一番聴きたいんじゃないかなあって。 ずっと離れてたって言うし。 ひとりっ子で、ずいぶん心配したと思います。」

ゆうこはパンフレットを揃えながら言った。




「親なら。 子供が夢を叶えるところを見たいでしょう。 あたしはそう思って、」



「ゆうこ、」



胸が熱くなる。




そして、ゆうこはハッとして


「あ・・言い忘れてたんですけど、」

結納のことを切り出そうとしたが、



「志藤さん、こっちお願いします!」

玉田が走って呼びにきた。


「あ、うん。 ・・じゃあ、あとで。」

志藤は慌しくその場を離れた。



また

言いそびれちゃった・・・。



ゆうこはため息をついた。




『夢のとき』が近づきます・・・


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