On that days(9) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

真尋はパーティーでのミニコンサートであったにも関わらず

アンコールを受けて再び舞台に戻る。



同じくリストのコンソレーション



こういう叙情的な曲が

彼は

抜群に巧かった。



絵梨沙は溢れてくる涙をハンカチでそっと拭いながら



このピアノから離れることができない自分を知った。


このとき

自分の未来とか

自分の夢だとか


それも

一瞬見えてしまったようで。



彼が

遠くへ行ってしまうようかのような

不安も

少しだけ

抱きながら。





パーティーを終えた後

北都は招待客から口々に真尋のピアノの賞賛を受けた。



「社長にあんな素晴らしい息子さんがいらっしゃるとは。 驚きました、」


「いえいえ・・・。 好きにやっているだけで、」

謙遜して苦笑いをするだけであったが。



「あれだけの逸材。 きっと世界に羽ばたくピアニストになりますよ。 これからどんなプロデュースをしていくのか楽しみです。」



音楽関係者からの頼もしい言葉に

北都はふと志藤のことを思う。




真尋は

自由気ままに生きる見本のような子供で

人から命令されて動くことを極端に嫌った。


小学生の時から在学していたお坊ちゃん学校の校風に馴染めずに

中学を終えるとそこを飛び出した。


命令されて人と同じように動くことができなかった。



ピアノでも

指導者とそりが合わずに何人も変えて。


コンクールに上位に入る弾き方を強要する教師とは徹底的にやりあい

本当に手のつけられない猛獣のようだった。


そんな真尋を

彼は短い期間であっという間にここまで引き上げた。



プロ契約したと言っても

まだまだ自由を優先にする真尋に

その厳しさを教えたのは



間違いなく

彼で。



いったいこの子はどんな道を生きていくのだろうと

心配しなかったと言ったらウソになる。


親として

感謝せずにはいられない気持ちになっていた。





そして

その気持ちは真太郎も同じだった。


たくさんの招待客を見送った後、ゆっくりと志藤に歩み寄り

どちらともなく手を出して。

固い握手を交わした。



「・・ありがとうございました、」



真太郎は志藤に頭を下げた。


「おれに、礼なんか、」



「いえ。 ぼく一人では何もできなかった。 真尋一人でさえも。 弟の眠っていた力まで引き出してくれたのは・・志藤さんですから。」

そして優しい笑顔で微笑んだ。



「彼が世界一のピアニストになるまで。 見守っていきましょう、」



志藤も本当に優しい笑顔でそう言った。




もう手放しで喜びたいほど

真尋のピアノは感動的で。



しかし。

本番は明日だ。



志藤は

ピシっと気を引き締めた。



真尋の第一歩をみんなが喜びで迎えました。


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