Don't miss the eyes(2) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「加瀬さんはおいくつなんですか?」

食事をしながら気を遣って恵が聞いてきた。


「あ・・えっと。 23です。 今年、いえ去年の4月に北都エンターテイメントのクラシック事業本部に入社して、」

食事のマナーが気になって答えるのもたどたどしくなってしまう。


「どちらの大学を出てらっしゃるの?」

高宮の母に聞かれた。


「江南女子体育大学です。」


「体育大学? ああ・・」



そんな感じね、

と言わんばかりのうなずきをされた。



「ご両親は東京の方?」

母の追及は続く。


「いえ、実家は福島のいわきです。 父はあたしが高校生の時に亡くなって。 今は母一人ですが。」


「あらそう。 ご苦労なさってるのねえ・・」



いかにも

上辺だけの同情もされて。



夏希は頑張ってフォークとナイフを駆使して食事をしていたが、



「加瀬さん・・それはお肉料理用のナイフよ、」

手にしていたナイフを見た恵がそっと注意した。


「えっ! あ・・・す、すみません!」


夏希は動揺してしまい、自分の目の前の水の入ったグラスを倒してしまった。



「あっ! も~~、ほんっと・・すみません・・・」



高宮の父はずっとブスっとした顔で、母は失笑するばかりで。



早く

帰りたい・・・。



泣きたくなった。



「ごちそうさまでした。・・ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。



帰り際、夏希は高宮の家族に深々とお辞儀をした。


「気をつけてお帰りになってね。」

母は冷笑を浮かべていた。



夏希はうつむいたまま会釈をして、そのまま帰ろうとした。



「加瀬さん!」

高宮は杖をつきながら彼女を追いかけた。


「ごめん、ほんと・・失礼ばっかりで。」


「いいえ。 こちらこそ。 ご迷惑をおかけして。」

夏希は視線を落としてそう言った。


「東京に、帰らないで。 夜、行くからホテルで待っていて。 一緒にメシ、食おう。」


「でも、夜も・・お食事会があるって、」


「そんなのいいよ。」


「よくないです。 ほんと空気が読めてないの、あたしですから。」

夏希は泣きそうになりながらその場を走って去ってしまった。




「どういうつもり?」

母は高宮に冷たくそう言った。


「本当にあんな子とつきあってるの?」


「あんな子って、彼女のことを知りもしないくせに!」


「遊ぶのはかまわんが、つきあう人間は選んだほうがいいぞ。」

父もおもしろくなさそうにそう言った。


「遊ぶだなんて! おれは真剣に・・・。 それに、もうおれのことはいいだろう? こうして城ヶ崎さんも婿に来てくれることになったんだし、」


「それとこれとは話は別だ。 おまえを政治家にすることは諦めたが、高宮の跡取りはおまえに変わりないんだからな。」


「そうよ。 あんなわけのわからない子とつきあうなんて、」

両親の辛らつな言葉に、



「お父さんもお母さんも失礼よ。 ほんと加瀬さんに逆に悪いことをしてしまったんじゃないかしら。 お兄ちゃん、ごめんなさい。」

恵は高宮にそう言った。


「いや・・」


「とにかく! 今晩の食事会には城ヶ崎さんのご両親と、後援会長もお見えになるんですから、あなたも絶対に来てもらいますからね!」

母はぴしゃっとそう言った。







来るんじゃなかった・・

来るんじゃなかった!



夏希はホテルの部屋に帰って、ベッドに突っ伏してしまった。



高宮さんのことは好きだけど。

あたしが好きだからって

つきあえる人じゃないんだ。


世界が

違いすぎるよ・・・。



ぐすんと

鼻をすすった。



その時、携帯が着信する音がして、手で涙を拭いて出た。


「加瀬さん?」

萌香だった。


「く、栗栖さん・・・」


「でかけてるの? 実家に帰らないって言うから、今、清四郎さんと加瀬さんも誘って食事でも行こうかって言ってたんだけど、留守みたいだから。」

彼女の温かい言葉が胸にじーんとくる。



「な・・長野・・」



夏希は泣きそうになりながらそう言った。



「は? 長野? って・・まさか・・高宮さんと??」

萌香は激しく驚いた。


「な、なんかわかんないんですけど! 見送るだけのはずだったのに・・・乗っちゃって、」

涙がどっと溢れてきた。


「乗っちゃってって・・・」


「も、来るんじゃなかったって・・状況で。 あたしがバカだったんですぅ~~。」

いきなり電話口で泣かれて、萌香はもう戸惑うばかりだった。




電話中・・・



気になった高宮は夏希の携帯に電話をするがずっと話中だった。



「で、ご家族と食事を?」


「ハイ・・・でも、もう・・・ほんっと1秒でも早く帰りたくなる雰囲気で・・。 なんで、来たんだみたいな空気が充満してて・・・」

夏希はしゃくりあげながら言った。


「ほんと、なんでついて来たんだって・・・話なんですけど、」



萌香はため息をついて、

「で、どうしてついていったの・・・?」

基本的な疑問を彼女にぶつけてみた。


「どうしてって・・・」



夏希はもう

それさえもわからなくなっていた。

自分自身に聞いてみたい気持ちだった。



この場に来てしまったことを後悔ばかりする夏希ですが、もうわけがわからなくなっています・・

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