Don't miss the eyes(1) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

しかし

大きなホテルはどこもいっぱいだった。


「そりゃ、そうですよね。 お正月ですからね、」

夏希は力なく笑った。


高宮の家族が泊まる大きなホテルの近くのビジネスホテルがなんとか一部屋取れ、そこに泊まることになった。


「ごめんね、」

彼はそう言って謝ったが、


「いえ! もう・・泊まれるだけでありがたいです。勝手についてきたのあたしだし、」

もう申し訳ないくらいだった。



「じゃあ、おれチェックインしてくるから。」


「荷物を持っていきます、」


「ありがとう。」



夏希は高宮の泊まるホテルまでついてきた。



彼がフロントでチェックインしていると



「・・隆之介?」

その声で高宮も夏希も振り返った。


「ちょっと! あなたどうしたの? その足・・」

高宮の両親と妹、だった。


母は驚いて慌てて彼に駆け寄る。


「ちょっと転んで・・・。たいしたことないよ、」

面倒くさそうにそう言った。


「なにも言わないで! そんな格好で、」


「お兄ちゃん、大丈夫? 骨折したの?」

妹の恵は心配そうに言った。


「うん、でも大丈夫だよ。」

そう笑いかけた。



そして、母は横にいた夏希に気づいた。



「あら???」



夏希はその視線に我に返る。


「あなた・・この間の??」

上から下まで舐めるように見られた。


「あ・・は・・・えっと、」


「どこのお嬢さんだね?」

高宮の父もメガネに手をやって夏希を怪しげに見た。



「隆之介! どういうこと!? なんで、この人がここにいるのよ!」

母はもう逆上していた。


そんな母に高宮はため息をついて、


「加瀬夏希さん。 おれがこんなだからついてきてくれたんだよ、」

夏希を紹介した。


「あっ・・怪しいものでは・・ございませんが、」

夏希は言うに事欠いて、またピントの外れたことを言ってしまった。



高宮はこの危機的状況で、また彼女の発言がおかしくて笑いそうになってしまった。


「ひょっとして・・お兄ちゃんの彼女?」

美しい高宮の母にソックリの妹・恵がそう言った。


「かっ・・・彼女?」

両親は驚いた。


「隆之介! あなた・・まさかこんな子と!」

母はもう動揺しまくっていた。


「こんな子なんて、失礼だよ。 おれのこと心配して来てくれたのに、」

高宮は憤慨した。



そう言えば。

この前会った時も、怒ってたもんなァ・・・




夏希は他人事のようにそんな風に思っていた。



「失礼ですが。 隆之介とはどのような関係ですか? 明後日は娘の結納で。 そのために隆之介も呼んだのですが、そういう席だということもおわかりでいらしたんですか?」

高宮の父から威圧的にそう言われて、夏希は少し怖くなり、


「いえ・・あたし・・すぐに帰りますから・・」

小さな声でそう言って、後ずさりした。


「加瀬さん、」

高宮は彼女を庇った。


「これから城ヶ崎さんも来るのよ。 昼の食事の席も用意してあるのに。」

母は苦々しい気持ちでそう言った。


「食事は夜だろ?」


「昼も夜もよ! ご心配なく、あなたはもうお帰りになって。」

母は夏希に冷たくそう言い放った。


「はい・・」



やっぱりこんな所まで来るなんて

空気読めなさすぎ。




夏希は自分の行動を恥じた。



「失礼します・・・」

夏希はドーンと落ち込んで、そのまま去ろうとした。



しかし



「お母さん、失礼よ。 せっかくお兄ちゃんを心配して来て下さったのに。」

恵が言った。


「い、いえ・・あたしは、」

夏希は1秒でも早くこの場から去りたかった。


「お食事くらい。 ご一緒によろしいんじゃないですか?」


「恵・・・」

高宮も妹の言葉に少し驚いた。



恵は夏希に歩み寄り、


「母が失礼なことを申しまして、ごめんなさい。 これから私の婚約者の城ヶ崎さんが来るので、一緒にお食事をいかがですか?」

にっこりと微笑んだ。



なんて

品のいい

美しい人なんだろう。


あたしとは

住む世界が違う人みたいに。




なりゆきで

高宮の家族と食事をすることになってしまったが、

やっぱり来なければ良かった、と夏希は後悔ばかりしていた。



城ヶ崎もやって来て、ホテルの最上階のフレンチレストランで食事をすることになったのだが。


「あたし・・ジーンズなんですけど。 いいんでしょうか、」

夏希は心配になって高宮に小声で囁いた。


「いいよ。 そんなの。 ここまで来てくれた加瀬さんにお礼をするのは当然なんだから、」

高宮は力強くそう言った。



でも

しかし

苦手な洋食マナーだし。


やっぱり

帰りたい・・・



夏希は針のムシロどころか

千枚通しのムシロのように居心地が悪かった。



ハイソな高宮の家族に混ざってしまい、夏希は身の置き場がありません・・

人気ブログランキングへ 左矢印お気に召しましたら、ポチっ!ぶーぶーお願いします!!