Don't miss the eyes(3) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「なんだか・・・高宮さんがかわいそうで、」


夏希はようやく見つけた言葉でそう言った。



「かわいそう?」


「妹さんの・・・結納があるんですけど。 お婿さんを取って、・・その・・えっと、地面? 地主?」


「・・地盤?」


「そう! それを・・・ついでもらうらしいんですけど。 もう高宮さんは必要ない人になってしまうんじゃないか、とか。自分でそれを望んでいるにしても。 すっごい居づらい状況なんじゃないかとか。 ・・ここで、別れたらまたしばらく会えないなあとか。 もう、一瞬のうちに色んなことを考えてしまって、」



泣きながらそういう彼女が本当にいじらしい。



「でも、やっぱり高宮さんとおつきあいするなんて・・違うんじゃないかって、」


「そんなこと、ないわよ・・」

と慰めたが、夏希はもっともっと泣き出した。



「もう、そんなに泣いて・・・。 ついていってしまったんやからしょうがないやん。 明日、帰ってくるんでしょう? お金はあるの?」


「た、高宮さんに貸してもらったので・・・」


「でも、このまま帰ってきてしまったら、しこりを残したまままた高宮さんと何ヶ月も離れ離れになってしまう・・。もう一度きちんと話をして・・」


「今夜はもう用事があるみたいですから。 妹さんの結納は明後日なので。 あたしは・・明日、帰りますから・・」


「加瀬さん、」



「今度はちゃんと帰りますから・・」




こっちまで

胸が痛くなるやんか・・・



萌香は小さなため息をついた。






「あいつらはいったい何をしているんだ? なんの逃避行なんだ?? え?」

斯波はもう呆れてしまった。


「加瀬さん本人もよくわかってないみたい。  勝手にもう体が動いてしまって、みたいな。 それで、場違いな空気に傷ついて・・・」



斯波は何だか腹立たしい気持ちになって携帯を手にした。


「ど、どこに電話をするの、」


「加瀬に今すぐ帰って来いって言う。」



いきなりの行動に、

「ちょ、ちょっと待って。」

萌香は慌てて彼の手をとって止めた。


「また気持ちが行き違いになったまま、離れ離れになったらどーするんですか。」


「でも! わかってたことだ! おれは初めっから加瀬には高宮なんか無理だと思ってた!」


「清四郎さん、」



「高宮が。 高宮のほうから加瀬のことを好きにならなければ! あいつらは絶対につきあうことになんかならなかったはずなんだ!」



斯波の心配が

手に取るようにわかった。



「今ならまだ傷が浅いうちに終われるんだ。 そうやってまた傷つくのは加瀬なんだぞ?」


「そやけど。 加瀬さんはもう高宮さんのことを好きになってしまっている・・・、」

萌香の言葉に斯波はそっと携帯をテーブルの上に置いた。


「だってもし本当にもう帰って来たいと思ってるならとっくに戻ってきているはずです。きっと、待っているんです。高宮さんが来るのを。」



「切ないこと・・言うな。」



斯波はプイっと横を向いてしまった。





夏希はホテルの部屋でベッドに寝転がってうだうだしていた。


すると

高宮から電話が来た。



「も・・もしもし・・」


「やっと出た・・ずっと話し中だったから・・・」



夏希は泣いていたことを悟られないように、


「はあ・・」

と言った。


「これから本家の方に挨拶に行くんだけど、夜、行くから。」


「え! ダメです。 食事会があるって。」


「いいよ、そんなの・・・おれは関係ないし。」


「関係なくないです! 絶対に、行ってください。じゃないと・・・」


「加瀬さん、」



「あたし、本当に何で来たんだってことになりますから、」



彼女のその言葉に高宮は冷静になって考えた。

確かに

そんなことをしたらまた夏希への風当たりが強くなる。



「わかった。 じゃあ、食事だけしたら、すぐに行くから。 だから、待っていて。」



もうそんなことを言われると

胸が張り裂けそうになる。


高宮の家族の前であんなに恥ずかしい思いをしたのに、それでも

まだこのまま帰る決心ができていない自分がいる。



何を

期待しているんだろう。



そんな自分も嫌だった。



「絶対に、行くから。」



彼の言葉が胸に刺さる。



その会食も

高宮には居心地の悪い場所だった。

兄の法事の時のように

みんなヒソヒソと自分が父の跡を継いで出馬しないことを、ああだ、こうだと囁き合って。



「城ヶ崎くんは優秀な人物だが、きみは高宮の長男なんだから。 そこのところをもっと考えないと、高宮先生も安心できないだろう。」

後援会長からまた小言まがいのことを言われて。


「優秀な人物がなったほうがいいでしょう。 ぼくは向いていませんから。」



何度

同じことを言わせるんだ。



こんな無意味な会話をしているのも、もどかしい。

早く夏希のもとに行きたかった。



和食懐石の店だったので、畳にギブスは本当につらかった。


最後のデザートを待たずに、

「おれ、帰ります。足がおかしくなってきた。」

高宮は父にそう言った。


「は?」


「悪いけど、」


「お兄ちゃん、大丈夫?」

恵は心配した。


「ああ。 大丈夫。 会長、申し訳ありませんが、ぼくはここで。 本日はありがとうございました。」

高宮は後援会長にそう言って、壁を伝わるように歩き始めた。


「隆之介! 失礼よ、」

母もそう言ったが、もう振り返らなかった。



時計はもう9時を指していた。



早く、彼女のところに行きたい。



心が、はやる・・・。



斯波は夏希のことを心底心配しておりますが・・

ホント、なんの逃避行なんでしょうか・・


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