「ひよっこ」 第52回
第９週 「小さな星の、小さな光」
雄大のプロポーズ、そして豊子の立てこもり
雄大） あの！
（幸子に向き直る雄大）
お父さん…。
なんと、なんと…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
雄大） あの…幸子さん。
幸子） はい？
雄大） いや、幸子。
幸子） えっ？
雄大） 僕と…その…。結婚して下さい！
お父さん、プロポーズの瞬間です。
生まれて初めて見ました。
雄大） 僕は、地位もないし、学歴もないし、
金もないし…。
澄子） ねぇもんばっかりだ。
（澄子を小突くみね子）
雄大） でも、夢だけは持ってるつもりだ。
でっかい夢を！
澄子） 夢っこはただだからな。
（澄子の頭をたたく時子）
雄大） でも、それはどうなるのか分からない。
保証も何もない。だけど、今の歌にあっ
たように、２人なら苦しくなんかないと思
うんだ。幸子と２人なら…。幸子と２人で、
生きていきたいんだ。結婚して下さい！
（涙を浮かべ何度も頷く愛子）
幸子） はい。よろしくお願いします！
雄大） ありがとう！ よろしくお願いします！
豊子） やった～！
（バンザイする豊子）
（笑い声）
（幸子に飛びつく優子）
優子） 幸子！
幸子） 優子！
愛子） おめでとう！
みね子） おめでとう！
時子） おめでとう！
幸子） うん！ 愛子さん！
愛子） よかったよかった。（泣）
幸子） ありがとうございます。
（拍手）
清子） 随分、にぎやかな寮なんだねぇ。
（少し離れたところから見てる清子）
雄大） 皆さん、これからも、僕たちのこと、
よろしくお願いしまう。
幸子） お願いします！
愛子） こっちこそ！
みね子） おめでとう！
一同） おめでとう！
（拍手）
一同） ♪雪の白樺並木 夕日が映える
走れトロイカ ほがらかに 鈴の音高く
走れトロイカ ほがらかに 鈴の音高く
響け若人の歌 高鳴れバイヤン
走れトロイカ かろやかに 粉雪蹴って
（ひな壇に立ち、優子と一緒に歌う清子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（清子と去って行く優子を見送る乙女たち）
（振り向き、大きく手を振る優子）
（手を振り返す乙女たち）
澄子） ありがとうございました！
時子） また会おうね！
優子） さいなら！ また会おうね！
お父さん…。
優子さんはお母さんと、
秋田に帰っていきました。
何だか優子さんの小さな背中が、
切なかったです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
1965（昭和40）年12月20日
工場最後の日
そして、工場の最後の日が
やってきてしまいました。
愛子） はい、急いでね。
朝ごはんの時間なくなるよ。
一同） は～い。
澄子） よし！
みね子） どうしたの？ あんた。
澄子） 最後の日ぐれえ、
怒鳴られねえでやってみようと思って。
みね子） はぁ。
幸子） でぎるならもっど早ぐやりなさいよ。
時子） ん？ あれ？ こういう時豊子が、
ビシッと言うんじゃないの？
みね子） どうしたの？ 豊子。
遅いの珍しいね。
幸子） 具合でも悪い？
豊子） 何も、大丈夫です。
澄子） おれと逆で、最後だからいいべど
思ったんでねぇのが？
豊子） え…？
澄子） 何だよ。おめえ、どうしたんだよ？
豊子） どうもしねえよ。早ぐ、どいてけそこ。
澄子） うん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
澄子） あぁ、うんめぇな、
和夫さんのみそ汁はぁ。
みね子） んだねぇ。
時子） 寂しいね。これが飲めなくなるなんて。
幸子） んだよねえ。
みね子） んだね。
（一人バクバク食べる豊子を見るみね子たち）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
お父さん…。
この作業も、今日で最後です。
（ブザー）
女性） 豊子！？
トランジスタの向きが逆だがね。
豊子） すみません！
幸子） あんた、初めでじゃないの？ 豊子。
時子） んだよね。
豊子） すみません。
松下） はい。気を付けて。じゃ、続けよう！
一同） はい。
幸子） スイッチ入れます。
（ブザー）
お父さん…・。
何だか、豊子の様子が、
少しおかしかったです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夕方＞
幸子） 最後の一枚流します。
一同） はい。
（ゆっくりと流れていく基板）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（最後の一台のラジオの検品
作業を見つめる乙女たち）
（拍手）
松下） ご苦労さまでした！
皆さん集合して下さい。
一同） はい。
愛子） ご苦労さま。
幸子） 全員集合しました。
松下） ありがとう。
（話し声）
（窓の外を見る一同）
幸子） 何ですか？ あの人たち。
松下） あぁ…。あの人たちは、この工場にある
機械を運び出すために、来ています。
幸子） そんなにすぐ？
松下） うん。少しでも借金を返さないと
いけないからね。
（どよめき）
愛子） こら乙女たち。気にしない気にしない、
そんなこと。これからプレゼントの時間
だよ！
幸子） 何ですか？
愛子） さっ、何でしょう？
松下） これから、このトランジスタラジオ。
皆さんがつくってくれたAR-64を、
一人一人にお配りします。
どうか、大切にしてやって下さい。
一同） はい！
愛子） さっ、並んで！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
愛子） ありがとう。
松下） ありがとう。
幸子） ありがとうございました。
愛子） ありがとう。
時子） ありがとうございました。
松下） ありがとう。
みね子） ありがとうございました。
愛子） ありがとう。
澄子） ありがとうございました。
松下） ありがとう。
（ラジオを受け取りおじぎをする豊子）
お父さん…。
私が、私たちがつくった、
トランジスタラジオです。
（笑顔で乙女たちを見つめる
松下と愛子）
松下） それでは皆さん！ ご安全に！
一同） ご安全に！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
豊子） やだ。
幸子） えっ？
（工場に戻り、すべての
入り口の鍵を閉める豊子）
豊子） やだ。やだ、絶対やだ！
やだ…やだ…やだ。
やだ…やだ…。やだ…。
絶対やだ～！
みね子） 豊子…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
優子の謎の行動（まったく謎じゃなかったけどｗ）
により、雄大が幸子に公開プロポーズ。ないない
尽くしの男でいいの～？と思うけど、でっかい夢
を追う男を応援したいと思うのもまた、女の夢で。
そんな２人は、乙女たちにとっても、憧れとなった
んだろうなあって思う。恋っていいなって思うよね。
最後まで、優子が雄大に何を言ったのかは、明
かされなかったのもいい。雄大が幸子にプロポー
ズした。乙女たちは、幸せだった。それで…いい。
ところで、何気に存在感のある優子の母・清子さ
んの中の人。田村たがめという、劇団っぽいイン
パクトのある名前だなあと思ったら、「あまちゃん」
で高校の先生・いっそんの中の人の奥さんだった。
なるほど～というか、なんかいろいろ腑に落ちた。
まるで澄子のようにバクバクご飯を食べたり、起き
るのが遅かったり、仕事で失敗したり。豊子になに
が起こっているのか…ドキドキのクライマックスは、
まさかの工場に立てこもり。やだやだと、絶対にや
だと子供のように叫ぶ豊子。幸子が雄大のプロポ
ーズを受けた時、誰よりも早くバンザイと叫んだ豊
子。誰よりも読書家で、努力家で…でも、誰よりも、
ピュアなハートの持ち主だと、みんな知っていたよ。
豊子の純粋さに、おぼこさに、胸を打たれるという
か、愛しくて愛しくて、涙が止まらない。豊子ぉ～！
澄子とは、対照的な立ち位置にされていたけれど、
本当は２人もまだまだ子供。澄子と同じように、み
んなが大好きで、みんなでいる場所が大好きで…
離れたくない、大好きって、叫びたかったんだよね。
プレゼントは自分たちが作ったトランジスタラジオ。
うれしそうに、宝物のように、胸に抱く乙女たち…。
よかった。自分たちの働いた時間が、形になって。
そんな乙女たちの感傷さえ待ってくれない現実の
厳しさが辛い。豊子の気持ちが分かり過ぎて辛い。
乙女たちと別れるのが辛い。立てこもりたいのは、
別れの時間を少しでも引き伸ばしたいのは、視聴
者の気持ちでもあったりする。ガンバレ、豊子～。
どうにもならなくてもガンバレ！ ワガママになって
いいから。思いを全部吐き出しちゃっていいよ～。
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