「とと姉ちゃん」とあの雑誌 (1)~ブラジアパッドと直線裁ちで作る洋服~ | 日々のダダ漏れ

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「とと姉ちゃん」とあの雑誌 (1)
~ブラジアパッドと直線裁ちで作る洋服~




「とと姉ちゃん」こと小橋常子には、モチーフと
なった、実在の人物がいます。暮らしの手帖
社の初代社長、大橋鎮子さんです。




仕事をしている様子です。



とってもバイタリティー旺盛な人だったらしい
ですよ。彼女が、自身のモットーを語ってい
る音声があります。
聞いてみましょう。



鎮子) 自分がやってみようと思ったって
    ことはやってみんですよ! そして
    ダメだったら「ごめんなさい。私は
    バカでした。
すいません」はでね、
    帰っちゃえばいいんですよ。その
    勇気が
あると何でもできるのね。
    ですから私はもう何でもね、
厚か
    ましいくらいにね、当たってみろっ
    ていうことで、
今日までね。来られ
    たんじゃないかしらと思う。






そんな、鎮子さんの雑誌作りを支えたのが、
こちらの男性です。ロングヘアー。
花森安治さん。




「とと姉ちゃん」では、花山伊佐次の、
モチーフとなりました。花森さんの声
も聞いてみましょうか。




どんな感じだと思いますか? 怖い?

花森) 本当のジャーナリストが何人おるか。
    どうしてあんな、
ぬるま湯みたいな
    記事しか出てこない。




やっぱり。何でも怒ると、
部屋の窓ガラスが震えたらしいです。

そんな2人が、仲間と共に作り上げたのが、
雑誌、「暮しの手帖」です。



花森さんは編集長、鎮子さんは編集部員、
兼、雑誌を出す会社の、社長というわけ。

雑誌には、
衣・食・
住を豊かにする知恵がたっぷり。





創刊から20年ほどで、100万部に近づくまで、
売り上げを伸ばしました。







そこまで支持を集めた訳とは?
暮らしに役立つ情報が詰まっているから、
というだけでは、どうやらないようです。

ヤマザキマリ) 鼻面にパンッと突きつけるような
      感じのね、そういうパンチ力というか
      気骨さがあって。普通じゃでき
ない、
      この雑誌はどうかしていると。

よく売れたのに、どうかしている雑誌?



何だか不思議ですよね。
どういうことなんでしょう?

**********



片桐) こんにちは。「とと姉ちゃん」
    で東堂チヨを演じております、
    片桐はいりです。



いす) こんにちは。私は、いすです。
片桐) いす…。いすさんとお呼びして
    よろしいんでしょうか?
いす) はい、いすです。鎮子さんが、仕事中
    ず~っと愛用して下さっていた本物の
    いす。だから年季が入っていますよ。



片桐) よろしくお願いします。
いす) よろしくお願いします。
    まず、これを見て下さいね。




いす) これが鎮子さんたちが手がけた雑誌、
    「暮しの手帖」第一号。
    どうぞ、手に取ってみて下さいね。
片桐) いいんですか? 失礼します。   
    うわ~。貴重な…。
    いや~かわいいですね。
いす) このイラストは全て、
    花森さんが描いていたの。
    あの方ね、ちょっとこわもて
    だけれど、絵はかわいいでしょ?
片桐) ねえ。




創刊号が出たのは、1948年です。
終戦からはまだ3年。
住む家のない家庭が、370万世帯あった。
そんな頃です。










ページの中には、空襲で焼けた家具の
代わりになる壁掛け収納や、



ほんの少しの布だけで、
まとめ髪を結うテクニック。




おがくずを詰めて作る、
かわいい縫いぐるみまで。



厳しい暮らしに、快適さや、楽しさを
もたらす知恵が、あふれています。





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そんな、この雑誌の原点とは。



鎮子さんが戦時中、
防空壕に避難している時に
温めていたという、ある、アイデアです。


鎮子) 私は、戦争中の女学生ですしね。なん
    にも生活に関することを知らないで、過
    ごしてるから。じゃ、私の知りたいことを、
    印刷物にしたら。私の5歳上の方と、5
    歳下の10年間の(年齢の)方達に、きっ
    と喜んでもらえるんじゃないかしら。そう
    思ったんですよ、防空壕の中で。




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いす) はいりさん。
片桐) はい。
いす) 10ページを…どうですか?
片桐) 10ページ。
    「ブラジアパッドの作り方」…ですか?
いす) そうなんですよ。こういう事なの。




片桐) フフフッ。ちょっと見ていいですか?
いす) あっ、あのね、中よ、中!
片桐) 中?
いす) パッドだけ出してみて下さいね。
片桐) はい。
    うわっ、針金が、入ってますね。




片桐) それで確かに乳首もある。フフッ。



片桐) 本当に面白いです。硬いですよ!

作り方を、見てみましょう。



針金を、渦巻き状に曲げたら、



綿を丸めたち乳首をつけ、
ツンとした胸の形を作ります。




ガーゼと綿で包めば…出来上がり。






片桐) でもなぜ、この、ブラジャーじゃ
    なくて、パッドの作り方を、記事
    にしたんでしょうね。
いす) そこがですね、
    「暮しの手帖」の目の付けどころ!


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ご覧の映像は、少し後のものですが、戦後
初めてファッションショーが開かれたのは、
創刊号が出た年と同じ、1948年です。




それまで、もんぺ姿を余儀なくされて
いた女性たち。おしゃれな洋服への
憧れが、高まっていました。

ところが…洋服の下、ブラジャーに問題が。



パッドが入っていないんです。



既製品も、手作りのものも、
当時は大抵そうでした。
だから、胸のラインが、言ってみれば、
いけてない、訳です。



そこでこの雑誌は、身近な材料で
作るパッドを、提案しました。




手持ちのブラジャーに、
パッドを組み合わせるだけで、
胸のラインが美しくなる。
この記事、好評だったそうですよ。


**********

いす) はいりさん。
    創刊当時の、「暮しの手帖」の中で、
    特に、女性に喜ばれたファッション
    の記事が、あるんですよ。
    それが、こちらです。




直線断ちで作る、洋服。



デザインは花森さん。
鎮子さんは、服を作ったり、
ご覧のように、モデルを務めたりしました。




直線裁ちの記事は、創刊から、
10年間、毎号のように登場。



それだけ、好評を博した、という訳。
どんな服だったのか。




当時の誌面を基に、
実際に作ってみました。


**********



このワンピース、実は、
あるものをリメイクしたんですが、
分かりますか?

浴衣です。浴衣のリメイクなんです。
しかも、ほんの1時間ほど
でできるんですって。
1時間って、すごくないですか?

しかもしかも、
お裁縫の達人じゃなくても、
手縫いで簡単に作れちゃうんだそうです。




**********

今回、直線裁ちのワンピースを
再現してくれたのは、
デザイナーの、清松加奈子さんです。
シンプルなデザインが、魅力の方。




リメイクに使ったのは、まさに
創刊号が出た頃に作られた、
アンティークの浴衣です。




では、再現の様子、ご覧下さい。



まずは、浴衣の袖を大胆に
外していきます。




続いて、襟も外します。
手で簡単に外れました。






ここまでで、15分です。




あとは、襟や袖を外した所を
デザインに合わせて、直線縫いで整えます。




それだけです。

清松) 波縫いをすることが、たぶん日常
    だったと思うので、ホント、こんなん
    で、洋服になるんだったら、ワクワ
    クしながら、きっと、昔の、人たちも、
    作ってたのかなと思うと、物を大切
    にする気持ちっていうか、愛おしく
    なる、感じが生まれてきます。


全ての作業が、1時間で終わりました。



もう少し、細かい所を見てみましょう。
外した襟は、なんとベルトに。




ウエストをギュッと締めます。
袖は縫い合わせて、パフスリーブにします。




二の腕を、ほっそり見せてくれます。

ほかのデザインもお見せしましょう。
こちら、涼し気なワンピースは、
浴衣の前後を、逆にして縫いました。




こちらは、上半身のシルエットが
タイトになっていますが、




布を折って、ひだを寄せただけ。





難しいテクニックは使っていません。



**********

いかがでしたか? 直線裁ち。
創刊号の記事で、
鎮子さんは、その魅力を、
こんなふうに書いています。

直線と体の曲線がデリケートにひびき合って、
あの美しく流れるような線が出て来る
                    創刊号より


清松) 無い中で生まれる物っていうか、
    ゼロから作ることが、なかなか難
    しい時代だったと思うので、浴衣
    からっていう決まりもあるかもしれ
    ないけど、そこから100も200もっ
    てぐらい、デザインが生まれるっ
    ていうのは、何か楽しいなって思
    います。

**********

人々はまだ、食べていくのに

精一杯だった時代の雑誌。
それなのに、少し、意外です。
読者から、最も支持を集めたのは、
直線裁ちという、ファッションの記事でした。

花森さんの言葉です。

かなしい明け暮れを過ごしているときこそ、
きよらかな、おしゃれ心に灯をつけよう。
それこそ、私たちの、
明日の世界を作る力だと、言いたいのです。
         「スタイルブック」より 1946年


 (2)~料理記事へのこだわりと鎮子さんのお宅訪問~
 (3)~商品テストと「戦争中の暮しの記録」~

**********

朝ドラ「とと姉ちゃん」で、高畑充希さん演じる
主人公・「小橋常子」のモチーフになった女性、
編集者・大橋鎭子さん。出版業界内で伝説の
“天才編集者”とよばれている花森安治さんと
共に、雑誌『暮しの手帖』を立ち上げた方の

き様や、仕事に取り組む姿勢が紹介した番組、
「『とと姉ちゃん』とあの雑誌」の、ご紹介です。

情報量が多いため、3回に分けてのご紹介と
なります。朝ドラの、小橋常子とは全くの別人
だという事が、この番組を観れば分かります。
モチーフとなった大橋鎮子さんは、とても魅力
的だし、花森安治さんも、2人がつくった雑誌、
「暮しの手帖」もどれだけ素晴らしい雑誌かが
よ~く分かります。ドラマでは、そのすごさが、
まったく伝わってこないのが本当に残念です。

私は「暮しの手帖」にはまったく興味がなかっ
たし、朝ドラでの大橋さんとは全く別人の常子
を見せられて、それに輪をかけて興味を失くし
ていたのだけれど…この番組を見て、「暮しの
手帖」を読んでみたいと、心から思いました…。


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