りんくのページ へ ◆もくじ1へ (ガラパロ他) 
もくじ2へ(スキビ1)もくじ3へ(スキビ2)
もくじ5(スキビ3)もくじ4へ(いろいろ)
◆もくじ6(ガラパロ2)

ご訪問ありがとうございます。

Kierkegaard

旅人は、目的があって旅をしているのではない・・・

ただ遠くへ、見知らぬ世界を求め彷徨(さまよ)っているのだ。

***

カチッ、枕元に置いてある置時計が午前二時丁度を指し示した。

「ふうっ、ツ」

蓮は、上体を起こすと顳かみに指を当てて苛立つ意識にふうっと大きなため息を吐き頭(かぶり)をふる。

仕事や私事で煩わしいことなど思い当たる事はないのに、何故苛立つ。

明日は郊外でのロケがあり早い、寝ないとは思うが寝付けない。

蓮はベッドを降りて、窓辺に立つとブラインドの隙間から街を見つめた。

窓に己の顔が映り込む、どこか苛ついた顔、指でチョンとその顔を弾いた。

「何に苛ついている?」

ふと現在共演している少女の顔が浮かんだ。

「君は綺麗になった・・・」

***

キョーコは、布団の中で丸くなっていた、ただし大きな瞳は開いたままだ。

「眠れない・・・どうして・・・明日も早いのに」

「むむむ・・ん」

ガバっと起き上がるとそっとした足取りで窓の外を見つめた。

漆黒の空、月も雲に隠れ闇が広がっている。

「敦賀さん・・・ちゃんと眠れていますか?」

***

「敦賀さん、おはようございます」

「おはよう、最上さん」

「おはよう、キョーコちゃん」

和やかな撮影現場である。そしてドラマの撮影が始まった。

緑のキャンバスに白や黄色い色が乗っかていた。

風がそよぐ、すっとのびた茶色い筋の道を少女が歩いている。

道の途中で両手を空に上げた、青いキャンバスから白い羽が舞い落ちて少女の手に。

「この空は、あなたに続いていますか?」



Kierkegaard

つづく その2