前々回のエントリーで予告したように、このエントリーでは「3.内部告発の内容の不自然性」について検討します。現職警察官の内部告発の内容の詳細については、朝木市議万引き事件・転落死事件まとめWiki
の「現職警察官による内部告発
」のページを参照してください。このページには、
(1) 2008年7月29日の八王子駅前街宣における瀬戸先生の演説の内容
(2) せと弘幸blog「日本よ何処へ」の2008年7月30日、8月16日、8月17日の各エントリーにおける現職警察官の内部告発への言及
が記載されています。
さて、この「現職警察官の内部告発」ですが、現職警察官は、「瀬戸さんたちが、この運動を時効前に国民運動として盛り上げてくれるならば、我々はその全貌を明らかにする用意がある」(2008年7月29日の演説より)とか、「瀬戸さんたちがこの問題に火をつけて下さい。騒ぎが大きくなれば、隠された真相はやがて明らかになるでしょう」(7月30日のエントリー)とか言っているらしいです。他の方々も指摘していますが、まず、詳細を明らかにしない内部告発や、騒ぎが大きくなれば、隠された真相はやがて明らかになる内部告発って内部告発っていえるのか?と思ってしまいます。真相を自ら明らかにするのが内部告発だろうと思うのですが。まあ、それは、とりあえず置いておきましょう。
今回のエントリーで行うのは、「現職警察官の内部告発」によって明らかにされた捜査経過と、確実であると判明している事実の対比を行うことです。もちろん、内部告発は秘密の暴露ですから、今まで事実とされてきた事項と反することがあることは確かです。しかし、だからといって、何でもかんでも事実をひっくり返せばいいというわけではありません。内部告発は、他の「客観的事実」とも整合性がとれており、全体として合理的なストーリーが成立しなければならないのです。このような観点から、今回は、「現職警察官の内部告発」について考察します。
では、瀬戸先生の2008年7月29日の演説の内容を見ていきます。以下は、瀬戸先生の演説の動画から文字起こしをしたものの一部です。それなりに時間がかかりましたが、それだけの甲斐はありました。
えーそれではですね、なぜこれを最初に取り調べをした警察官がこれは自殺ではなく、何者かによって殺害されたと、第1直感としてそう思ったか、まずそのことであります。その事を皆様たちに、お伝えしたいと思います。まず、この自殺をした、女性市議のですね。この両腕の内側にはですね、痣があった。いったい痣と言うのはどうして起きるのか。例えば自分がですね、強く掴んでですね。それで痣などできるはずがありません。じゃ、どのようにして痣ができたのか。これから皆様たちに、そのシーンをお見せいたします。こうゆう風にですね、二人の男に、まず両腕を掴まれて、強く、そしてもう、引きずられていったんですね。そして監視役一人の男性がいた。だからこそ、この腕の、両腕に、つかまれたときの痣があった、これはもう検視結果から明らかなんです。解剖したときにはっきりそれが診てとれた。
では何故それを、ずっと隠蔽していたか。つまり、自殺をするような人がですね、自らの手をですね、痣ができるほど強く握る、そうゆうことは考えられません。ましてや女性であります。女性がですね、いくら力をもって、自分の腕を掴んだところでですね、そうゆう痣などできるはずがないんです。つまり彼女は、二人の男に、両脇から両腕を抱えられ、無理やり連れ去られた。そしてそれを監視していた人物もいる。だから警察はですね、3名の人物がこの事件に関わっていると、そうゆうふうに最初から睨んで、この捜査をしたのであります。
皆様も、あの、オウムによって、家族を一家、皆殺しにされた弁護士、坂本事件、ご存知でしょう。朝木さんはですね、創価学会・公明党を徹底的に糾弾していた、批判をしていました。そして追求していた。誰がこれを疎ましく思うか。うるさく感ずるか。創価学会・公明党を追及していればですね、これを、うるさく、疎ましく思って、何とかしようと考えるのは、まず、創価学会・公明党以外には考えられない。だから、捜査はまずですね、そういう関係者によって、絞られて捜査は開始された。そうゆう中で、そうゆう人物が浮かんで、警察はですね、もう一歩でその人間をですね、名前を特定し、逮捕する、そういう段階まで至った。
しかし、これを指揮した検事、これは創価学会の検事であった。だから、これに対してストップをかけた。そうゆう推理がまず成り立ちます。この推理を崩すですね、そうゆう(1語不明瞭)事実もない。非常にあやしい。なぜならば、この解剖所見がですね、何ヶ月にもわたって隠蔽されてきた。自殺を装ってですね、殺害された、私たちはそうゆう風に思っております。だからこそ、検察庁にですね、八王子検察庁に対し、この事件の捜査のやり直し、それを今日、申し入れるつもりであります。
赤字部分は、今回のエントリーにおいて着目してほしい部分です。
内部告発の内容を説明するこの演説からは、警察の捜査が次のような経過で行われたと読み取れるでしょう。
(1)最初に取り調べた警察官は、両腕につかまれたときの痣があったという検視結果(解剖結果)から、これは自殺ではなく、他殺であると考えた。
(2)警察は、3名の人物がこの事件にかかわっていると、そうゆうふうに最初から睨んで、捜査を行った。
(3)捜査は、創価学会・公明党の関係者に絞られて開始された。
(4)捜査により、「そういう人物」が浮かんで、警察は、もう一歩で犯人の名前を特定し、逮捕するという段階に至った。
(5)しかし、これを指揮した検事(創価学会の検事)がストップをかけた。
少し朝木明代市議転落死事件について調べた人は、この内容に違和感を感じるのではないでしょうか?内部告発によれば、警察は、最初から他殺であると考えて捜査したといっているようです。しかし、実際には、警察は、初動捜査の結果として、朝木明代氏の死亡(1995年9月2日午前1時)のわずか6時間後の同日午前7時に「事件性が薄い」と判断しており、そのことは、各紙に報道されています(資料屋 ◆bfimNvQTbさんのブログの「市議が異状死した直後の聖教新聞を検証してみた
」を参照)。各紙に報道されているのですから、初動捜査の結果として警察が「事件性が薄い」と判断したことは、極めて確実であると思われます。しかし、内部告発の内容は、それに反しているのです。これほど確実な客観的事実に反する内部告発の信憑性は、疑問視せざるを得ません。
警察が最初から他殺であると考えて捜査した、というのは瀬戸先生の単なる言い間違えや記憶違いとは考えにくいということも付言しておきます。なぜなら、瀬戸先生は、警察は、最初から他殺であると考えて捜査した、ということを匂わせる表現を3回(上記の赤字部分)もしているからです。
もう一つ違和感があるのは、「最初に取り調べた」警察官が他殺であると考えたという点です。内部告発の内容を素直に見れば、「最初に取り調べた警察官」とは、朝木明代氏の遺体を「最初に取り調べた」警察官のようです。でも、朝木明代氏の遺体について「最初に捜査をした警察官」には、捜査の責任者であり、かつ、広報を担当していた千葉副署長が含まれているのです。もちろん、千葉副署長は、首尾一貫して「事件性が薄い」と発表し続けた人物です。
以下に、朝木明代氏の遺体がどのように取り扱われたかを見ていきましょう(まとめWikiの朝木明代市議転落死事件
のページを参照してください)。ビルから転落した後、朝木明代氏は、防衛大学校付属病院に搬送されます。その後、救命措置が行われましたが、9月2日午前1時ころに死亡します。その後、朝木明代氏の遺体に死後処置が行われ、死後処置の後、遺体が東村山署に運ばれて東村山署で検視が行われました。そして、遺体についての捜査が行われた最初の機会であるこの検視には、千葉副署長が参加しています。千葉副署長が「事件性が薄い」と判断したことは周知のことでしょう。
このような過程を見てみると、内部告発者は「最初に取り調べた」警察官が他殺であると考えたって言ってますが、これは、意味が通らないわけではないけれども全く不十分であることが分かります。もし内部告発者が本物なら、「警察としては(あるいは、捜査責任者である千葉副署長は)『事件性が薄い』」と判断していたが、「最初に取り調べた」警察官の中には他殺だと考えている者がいた」というべきではないでしょうか?
それにしても、内部告発者が捜査のキーマンである千葉副署長について何も言及していないのは一体どういうことでしょう。内部告発者は、検事の指揮により捜査にストップがかけられたと言っていますが、徹頭徹尾、「事件性が薄い」と言い続けた千葉副署長について何ら言及がないのは非常に不自然であるように思います。もし、内部告発が本物ならば、警察が十分な捜査をしていない、というやり玉に挙げられるべき最初の人物は捜査責任者である千葉副署長ではないでしょうか?せめて、千葉副署長が検事の指揮に迎合して捜査をやめさせた、ぐらいは言ってもらわないと、内部告発として整合性がないように思えます。
以下に、今日のエントリーの内容をまとめます。
(1)「現職警察官の内部告発」によれば、警察は最初から他殺と判断して捜査した、ということです。しかしながら、警察が初動捜査の結果として「事件性が薄い」と判断していたことは、極めて確実性が高い客観的事実です。このような、客観的事実と反する「現職警察官の内部告発」は、信憑性が薄いと判断せざるを得ません。
(2)故朝木明代氏の遺体を最初に取り調べた警察官には、「事件性が薄い」と判断した千葉副署長が含まれています。他殺であると考えた内部告発者は、なぜ、千葉副署長に言及していないのでしょうか?これは、他殺であると考えた内部告発者の発言としては不自然に思われます。