飯田線全駅間歩き2(中部天竜-天竜峡) その3・大津峠越えサバイバル | 駅から駅まで・旅のあしあと

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鉄道路線全ての駅間を歩く全駅間歩きを10年以上続けています。
今は東海~北海道エリアを歩いていますが、目指すは全国全路線全区間踏破!
そんな壮大な目標、たぶん一生レベルでかかるので、長い目で見守っていただけるとうれしいです。
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その2からの続き


こんな全駅間歩きは嫌だ。

駅間全てに山越えか峠越えがある。
…ここから先、マジでこんな感じの駅間がしばらく続きます。


<飯田線全駅間歩き2の他日程はこちらから>
1日目(中部天竜-水窪)へ
3日目(小和田-田本)へ
4日目(田本-天竜峡)へ


2日目(5月3日(日))   歩行区間:水窪-小和田   天気:晴れ(後曇り?)
水窪(8:15発)-大津峠(10:07着・10:25発)夏焼隧道(入口)-大嵐(12:36着)-



今日は、水窪から秘境駅として有名な小和田を目指します。
水窪から天竜川沿いの大嵐(おおぞれ)に向かうため、林道で大津峠を越えます。
大嵐からは天竜川林道まで大回りをして、小和田駅へのアプローチを仕掛けます。
今日歩く駅間はたった2駅間ですが、歩行距離は35km以上に及びます。

さらに、今日は小和田駅で駅寝をします。
いったん水窪駅を出発すると、翌日昼の平岡到着(実際は鶯巣)まで補給地点はありません。
つまり、翌日昼までの食料・水を全て持って山登りすることになります。
食料はあらかじめフリーズドライ食品を買い込んでおいたので問題ないのですが、
水は結局4リットル(=4kg)持っていくことになりました。
これでもちょっと少なめで、途中の水不足がちょっと心配です。

高低差も最高(最低:250m、最高:900m)なら、荷物重量も最重です。
全駅間歩きでは久しぶりのサバイバルコースの始まりです。




水窪駅まで戻ってきました。
準備体操を終え、ザックを背負いました。
水がたっぷり入ったザックは、昨日よりも明らかに重たくなっていました。




2日目の全駅間歩きの始まりです。
まずは水窪市街を北に進みます。




山が目前まで迫ってきました。
林道までショートカットするために、この坂を登ります。
そんなに距離無かったけど、この坂がちょっときつかった…。



 
いよいよ天竜川林道に入りました。
天竜川林道は、水窪市街から伊那小沢駅付近までを結ぶ広域林道です。
道は曲がりくねっていますが、沿道住民の生活を一変させた林道と言えそうです。

この林道が無ければ、この区間の全駅間歩きなんてできないと思う一方で、
今は廃道化していて普通には歩けないあんな道やこんな道も、
もしかしたら歩けたのかもしれないと思ってしまいます。




林道はゆるやかに、しかし確実に高度を上げていきます。
予想していたよりも傾斜が緩やかで、ほんと助かった…。

20分ほど歩くと、スタートの水窪市街と駅がはるか下に見えました。




林道はさらに標高を上げます。
民家は一切無く、道もカーブの連続ですが、
車が時々エンジンをふかしながら通過していきます。




大津峠の頂点が近づいてきました。
もうすっかり山の中です。




大津トンネルをくぐって、大津峠の頂点に着きました。
標高は900メートルで、今回の全駅間歩きでは最高地点でした。
標高差650メートルの峠道を一気に上ってきましたが、意外と疲れませんでした。

日陰を見つけて、しばし休憩します。
体中火照って暑いのですが、時折吹く風が涼しく、とても気持ちよかったです。




大津第二トンネルを過ぎると、林道は下り坂に変わります。

峠を越えたあたりから、斜面崩落を至るところで目にするようになりました。
路面の土砂はあらかた取り除かれていて通行に支障はないのですが、
今も時々崩れているというだけでちょっと怖くなります。

 

 

 

 

 

 


峠を下り始めて約30分、林道西山線との分岐点にさしかかりました。
ここから林道西山線に入って、7km先の大嵐駅を目指します。


…にしても、ここの道しるべは非常におおざっぱです。

「←愛知県」
「←長野県」 「水窪市街→」
ってさぁ。

確かに間違いないんですけどね。
だけど、「大嵐駅」とか「富山」とか「天龍村」とか具体的な地名もいれていただけかないと…。




林道西山線に入っても下り坂が続きます。
落石が時々路面まではみ出し、ワイルドな雰囲気も漂います。
そんな道をライダーの集団が走り抜けていきます。




分岐点から1時間ほど歩いて門谷川を渡っても、周囲はまだ深い山の中。
駅はおろか、人家すら見当たりません。




山の斜面全体にモルタルが吹きつけられています。
放っておくと斜面が崩れる恐れがあったんでしょうけど、なんだか異様…。

やがて、右手に佐久間湖が見え隠れするようになりました。
緩やかな下り坂をさらに進むと、ようやく飯田線の線路が見えてきました。
ここまで来れば、大嵐駅まであと少しです。




林道西山線の終点に到着しました。
終点の横には、県道288号の鷹巣橋が架かっています。
瀬戸大橋をイメージさせる立派な吊り橋です。

橋の対岸は愛知県豊根村です。
平成17年に合併が行われるまでは富山村だった地域です。
富山村は、島嶼部を除いて日本で人口が最も少ない村として知られていました。
合併直前の人口は、わずか200人あまり。下手すると、1集落の人口よりも少ない数字です。
隣村と合併したにもかかわらず「村」というところで、周辺の人口がいかに少ないかが分かります。




橋の上から佐久間湖を撮ってみました。
正直なところ、佐久間湖の水の色はちょっと奇妙な感じがしました。




さて、鷹巣橋で豊根村と繋がっている県道288号は、
大嵐から天竜川の左岸に沿って佐久間ダムに向かう道路でした。

右看板の通行止め表示は、県道288号に対して表示されているものです。
県道288号は、全区間のじつに8割以上が常時通行止めとなっています。
特に夏焼集落から南数キロの区間は崩落が著しく、すでに正式な廃道となっています。
おそらく、右の表示はこれからも変わることがないものと思われます。
それにしても、「通行不能」とはなんともストレートな表現です。

大嵐駅はもう目の前ですが、
せっかくなので、県道288号を少し歩いてみたいと思います。



 
南へ5分ほど歩いて、夏焼隧道の入口に着きました。
1kmあまりのトンネルの向こう側には、夏焼集落が控えています。


なんだか電車が走ってきそうな雰囲気ですが、
実はこのトンネル、本当に飯田線の線路跡だったりします。

かつての飯田線は、中部天竜から大嵐にかけての区間も天竜川に沿って走っていました。
ところが佐久間ダムの建設が決定し、線路が水没することになったため、
佐久間駅から水窪方面に大きく迂回するルートが建設されました。
佐久間ダム完成後、旧線のほとんどは湖底に沈みましたが、
夏焼隧道はその大部分が水没を免れ、道路に転用されました。


トンネルの入口からは、常に涼しい風が吹いています。
ここにいれば、真夏でもクーラーはいりません。
むしろ、少し冷たいと感じるくらいで。




トンネルの向こう側まで行ってみたかったのですが、
時間的にも体力的にも厳しい展開になるので、入口で引き返しました。

大嵐駅の近くには、ホーム跡のような構造物がありました。
帰ってから調べてみても確かなことは分かりませんでしたが、
新線切替時に大嵐駅も移転したそうなので、その可能性は十分にありそうです。


あとは、(現在の)大嵐駅に行くだけです。


その4へ続く


 
水窪駅から大嵐駅までのGPSログです(1/54,000)。
地形図を眺めると他にもルートが存在するように見えますが、
多くは廃道化しており、スムースに歩けるルートとなれば事実上このルートのみになると思います。
このルートは車でも走破可能ですが、地元の方の話によると意外と時間がかかるんだそうで。