またもや、海外で日本人がテロの犠牲になってしまいました。バングラデシュのテロ事件で亡くなられた方々に対し心よりご冥福をお祈りいたします。
教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏のブログでもこの事件について取り上げられていました。尾木氏は、「自国生まれのテロリストは貧困、差別、 無学とされていたのに 今回はまるで逆!?」と、驚かれていました。
たしかに、今回のテロ事件の実行犯は裕福な家庭で育っていて、学歴も高い者だったそうです。ただ、この事件も他のテロ事件と同様に背景には貧困問題があると思います。
バングラデシュはＧＤＰの大幅な拡大が続いているものの、これは、グローバル企業が単純労働の安い労働力を求めて進出していることが大きな要因であり、バングラデシュ国民の所得が増えて内需が拡大しているわけではないのです。つまり、バングラデシュにある雇用の多くは、縫製工などの低賃金の単純労働ばかりで、教育レベルの高い国民でもバングラデシュ国内では職業の選択肢が限られてしまっているのです。
また、高学歴の若者達が、自分達よりも下層の低学歴の貧困層の窮状を目の当たりにして、義憤にかられたという側面もあると思います。もちろん、テロはどんな理由があろうと絶対に許されるものではなく、他の方法を選ぶべきだったとは思いますが。
一方、先進国でもテロの脅威が高まっています。先進国の場合は、企業が安い労働力を求めて生産拠点の発展途上国への移転を進め、国内の雇用のパイが減る中で、途上国から高い賃金を求めて移民が大量に流入し、自国民は実質賃金の減少や雇用の不安定化に苦しみ、移民は差別や偏見を受け、それらの不満や憎悪がテロの火種となっているのです。
これまで、グローバル化を進めることで、テロや戦争が無くなるという考え方の下で、ＥＵ結成など、グローバリズムや新自由主義思想に基づく政策が世界中で進められてきました。尾木氏も、多文化共生などのヨーロッパ的、グローバリズム的思想を肯定的にとらえているようです。
しかし、上記のように現実にはヒト、モノ、カネの国境を越えた移動を自由化するグローバリズムの推進は、過激思想が台頭する土壌を作り、テロの脅威を高める結果になったと言わざるを得ないと思います。今、世界は行き過ぎたグローバリズム、新自由主義を抜本的に見直す時期に来ているのではないでしょうか。
今回の事件で犠牲になった方々は高い志をもって現地で仕事をしていたのだと思います。それを批判するつもりは全くありません。ただ、可能な限り日本人が外国に行かなくてもいいようにすることは、テロのリスクを減らすためには絶対必要です。
国内に十分な仕事が無く、日本人が海外に出て行かざるを得ないような状況には絶対にしてはなりません。被害にあった方々はバングラデシュのインフラ整備に関する仕事をしていたようですが、日本にはインフラ老朽化対策、熊本や東北の復興、南海トラフ巨大地震などに備えた防災・減災対策、東京一極集中解消のための交通インフラ整備など潜在的な需要は多くあり、政府が継続的な財政出動を実施すれば国内でも仕事は沢山作れます。
もちろん、テロを減らすためにはインフラ整備、技術協力、教育支援などを先進国が途上国に対して行い、途上国における国民の所得が増えて個人消費が拡大し、それにより企業の設備、人材、技術への投資が促され、さらに国民の所得が増えるという内需中心の豊かな国民経済の実現を後押しすることが必要であり、日本の役割は非常に大きいと思います。
そのためにも、途上国において活動する日本人をテロから守る万全な体制を整える必要があります。尾木氏は大学の軍事研究解禁や日本の武器輸出に批判的ですが、自衛隊の特殊部隊や警視庁のSATが保有している暗視装置やファイバースコープ、集音機材などの高性能の装備をバングラデシュの軍や警察に供与したり、偵察などに使うロボットの開発を進めていれば、今回犠牲になった方々も救えていた可能性があったのではないでしょうか。
国内においては財政出動などの正しい政策を行い、デフレからの脱却によって内需中心の豊かな国民経済を実現するとともに、途上国に対しては、インフラ整備や技術協力、教育支援などを積極的に行い、国民が海外に出稼ぎに行かなくても国内で十分な所得が得られ豊かに暮らせる社会の実現を後押しし、世界に対して行き過ぎたグローバリズム、新自由主義の是正の模範を示すことこそが、テロや紛争を減らすために日本が果たすべき役割だと私は思います。
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