塀の配置で天空率NGの際の対処法 | 比嘉ブログ

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建築企画CAD「TP-PLANNER」開発者の日常・・建築基準法,天空率、日影規制講座などチャンプルーなブログ

 2月11日土曜日朝
みなさんおはようございます。
本日は沖縄の実家からのブログ。

 親父の緊急入院で急遽かけつけた。
90近い年齢なのでなにがあってもおかしくない。

 幸い、応急処置して頂いたナカムラ先生の適切な対応で
回復にむかっており事無きを得た。食欲もあり病院食ではもの足りないと
こぼすほどの回復で、ひとまず安心だ。
そうなると早く自宅に帰りたがるので、やっかいだが2周間程度は入院し
様子をみる事となった。

 沖縄の昨日は、20度を超える暖かさだ。
この時期が内地との気温差が大きい。特に今年は甚だしい。

今週嬉しいニュースが飛び込んできた。
9日「森は海の恋人」牡蠣養殖の畠山 重篤氏が国連のフォレスト・ヒーローズに選出された。
森林保全に貢献した人が表彰され世界で5人だけだそうだ。
哲学的な信念に満ちた風貌が世界のメディアに取り上げられ日本人として誇らしい。

 さて本日は、その様な事で出かけなければならない。・・・が
昨日、飛行機の中で書いたテーマがある。

 天空率講座開始!
先週だったと思うが、長いつきあいの関西のM氏から
「どう考えてもNGになるはずが無い事例でNG.なんだろう?」
いや「なんやろ?」との質問。
天空率を考える上で重要なのでこの際比嘉ブログでも取り上げておこう。

 まず事例から

3方向道路で北側が準住居で日影規制が5/3時間。

日影規制3時間の幅内に高層建物を配置する。(本例では35m)

南側の道路幅員は5.5m幅で天空率で対処する。

幸い、敷地西側には天空率緩和に充分な空地がある。
隣地境界には2mの塀がまわる。南側の道路の前にも塀が設置されている。
この塀が今回のポイント。

 まず日影規制から
閉鎖した規制ラインでは

赤○印の部分がNGだ。このところ解説を続けているがこの場合も
発散方式が有効だ。

土地有効活用からも発散方式は有効だといえる。この場合建物幅を
日影規制時間3時間幅内に収まる様に設定する。
その事により北側の住環境では建物の横方向から陽が差し日影時間が
3時間を超える事がない。

 さて天空率だ。この場合南側の道路だけが斜線規制でNGなだけだ。
問題ないだろう。天空率計算開始!

 ところがびっくり?!
南側の一部がNGさらに北側の道路では後退距離が充分で適用距離を超えて
いるのにNGとなっている。あわててはいけない。冷静に自動発生した区分を
検証しよう。

 

斜線規制でNGだった部分だ。
天空率の区域区分の解説から始める。
 南側は、住居系1.25勾配と工業系1.5勾配で高さ制限の勾配が異なる。
その際それぞれの勾配で区分し天空率比較する。
 さらに3方向道路より令132条が適用される。
この区域は、西側の最大幅員6mの2倍を超えた道路中心10mの5.5mの
道路幅員が適用される区域。

左右の緑部が区域内空地を示す。充分な広さだ。
次いこう。

この区域は、西から2A(12m)、さらに南側5.5mの道路中心10mを越えた
広い道路6mが20mの適用距離で区分される区域。

この区域も緑の区域内空地が充分だ。以上が住居系1.25勾配の区域。

次だ。

この区域は西側6m道路がまわりこんだ2Aの6m道路が適用される工業系区域。



そもそも計画建築物がない。塀が比較されるだけなので
OKクリアー。

問題は次だ。NG区域だ。始まるヨ

青線でくくった枠がその区域。準工業の1.5勾配の区域。
2A=12mを越えた5.5m道路中心10mの区域。
この部分には計画建築物は塀のみだ。斜線規制では問題外。
立体で確認すると

 算定位置からは塀のみが視界にはいる。微少な為、殆どが99%以上の
天空率だが適合建築物が存在しない為、100%になっている。
これでは勝てるわけがない。
本日はこの事の対応策を考えたい。

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出かけなければいけない。ちょっと休憩しよう。
では再開までしばいお待ち下さい。
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 ・・・再開しよう。
この区域は道路中心10mの区域だが用途地域が斜に交差する為に
後退距離5.347mに対して区域では最大の奥行きが5.034mとなる。
したがって全区域が後退距離内にあり適合建築物が存在しない事になる。

 さらに北側6m道路の区域を検証する。
本来適用距離外の区域で斜線規制では問題が無い


この区域も全ての算定位置でNGの赤表示が並んでいる。
この区域の後退距離は、12.348m。ゆえに6mの幅員と合わせると18.348m。
20m-18,348m=1.652m分が敷地内に区分されるがその区分は後退距離の
範囲内、やはり適合建築物が存在しない。

斜線断面では、適用距離の範囲外の為、ここでのNGは納得できない。

対策を考えよう。
高さ制限適合建築物は、後退距離の範囲内で自由に設定可能だ。
この場合後退距離を0mにすると


天空図を重ねて確認すると

クリアーした。
しかしこの手法は「肉を切らせて骨を断つ」薩摩自顕流の様で荒々しい。
南側道路に同様に適用すると

NGになった。根本的な解決法でない事がわかる。

基本に戻ろう。高さ制限適合建築物の定義を確認する。

第135条の6 法第56条第7項の政令で定める基準で同項第1号に掲げる規定を適用しない建築物に係るものは、次のとおりとする。
1.当該建築物(法第56条第7項第1号に掲げる規定による高さの制限(以下この章において「道路高さ制限」という。)が適用される範囲内の部分に限る。)の第135条の9に定める位置を想定半球の中心として算定する天空率が、当該建築物と同一の敷地内において道路高さ制限に適合するものとして想定する建築物(道 路高さ制限が適用される範囲内の部分に限り、階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分でその水平投影面積の合計が建 築物の建築面積の8分の1以内のものの頂部から12メートル以内の部分(以下この章において「階段室等」という。)及び棟飾、防火壁の屋上突出部その他こ れらに類する屋上突出物(以下この章において「棟飾等」という。)を除く。以下この章において「道路高さ制限適合建築物」という。の当該位置を想定半球の中心として算定する天空率以上であること。

 天空率による緩和は計画建築物天空率の絶対的な数値できまるわけでは無い。
道路高さ制限適合建築物の天空率と比較する事でその可否が決定する。

 今回の事例の様に適合建築物が存在しない場合。正しい比較といえない。

後退距離の範囲内でも高さ制限に適合する建築物を想定する事で解決しよう。

(前面道路との関係についての建築物の各部分の高さの制限に係る建築物の後退距離の算定の特例)
第130条の12 法第56条第2項及び第4項の政令で定める建築物の部分は、次に掲げるものとする。

1.物置その他これに類する用途に供する建築物の部分で次に掲げる要件に該当するもの
イ 軒の高さが2.3メートル以下で、かつ、床面積の合計が5平方メートル以内であること。
ロ 当該部分の水平投影の前面道路に面する長さを敷地の前面道路に接する部分の水平投影の長さで除した数値が5分の1以下であること。
ハ 当該部分から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものが1メートル以上であること。
2.ポーチその他これに類する建築物の部分で、前号ロ及びハに掲げる要件に該当し、かつ、高さが5メートル以下であるもの
3.道路に沿つて設けられる高さが2メートル以下の門又は塀(高さが1.2メートルを超えるものにあつては、当該1.2メートルを超える部分が網状その他これに類する形状であるものに限る。)
4.隣地境界線に沿つて設けられる門又は塀
5.歩廊、渡り廊下その他これらに類する建築物の部分で、特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況を考慮して規則で定めたもの
6.前各号に掲げるもののほか、建築物の部分で高さが1.2メートル以下のもの

これらの条件は、後退距離内で高さ制限に適用する条件だ。
高さ1.2m以下の塀などは存在して良い事になる。

つまり適合建築物の後退距離の部分に1.2m以下の塀を設定する事は高さ制限に
適合する。

TPーPLANNERでの対象法だが2通りある。
1)手動の場合
①「入力「天空率拡張データ」「斜線適合建築物」で任意に配置する。
②天空率計算時「天空率計算時設定ダイアログ」「計算対象建物」で「斜線適合建築物」
をチェック後解析する方法。

2)自動の場合
天空率計算時「天空率計算時設定ダイアログ」「計算対象建物」で「1.2m高さ建物」を
チェックし計算を行う。

2)の手法が手間いらずになるのでこの手法で解析してみよう。

全て青印OKだ。北側6m道路を確認しよう。

断面図で確認

高さ制限に適合しておりさらに後退距離に影響を与えない
高さ制限適合建築物が自動配置されている事がわかる。

思いの外長くなった。本日は飛び回らないといけないこともありおしまいにしよう。

では来週までお元気で!

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