*問題は、「200字論述新研究37(問題15・16)」で確認してください。
*解説➊は、「200字論述新研究41(問題16を考える➊)」をご覧ください。
*解説➋は、「200字論述新研究42(問題16を考える➋)」をご覧ください。
問題16 解説➌
■松方財政の影響■
松方正義が実行した強力なデフレ政策は、日本の社会に長期にわたる深刻な不況をもたらした。
それは、定額地租の効果を最大限発揮させた過程でもあり、農民層の分解を促進していった。
地主への土地集積が進行して寄生地主制が確立する一方で、土地を失った農民は都市へ流入し、低賃金労働者になった。
また、自由民権運動は激化・衰退へとむかい、一方で、物価の安定・低賃金労働者の形成・金利の低下・輸出の拡大を背景に、1880年代後半の日本は企業勃興期に突入した。
【定額地租の効果】
定額の地租は、経済状況との関係でその重みが実質的に変動した。
たとえば不況が深刻化して農産物価格が下落するなどデフレが進行した場合、これによって米などの売却代金が減っても税額がかわらないことを意味する定額地租は、負担者にとって実質的な増税効果を発揮した。
一方、政府は物価・人件費などの下落を活用することで実質的な増収効果を享受することになる。
【寄生地主制】
土地集積に成功し、高率の現物小作料に依拠して生活するようになった地主のことを寄生地主という。
私的土地所有権を認めた地租改正と松方デフレにともなう農民の没落によって形成された寄生地主制は、1920年代以降、徐々に衰退へとむかい、戦後の農地改革により最終的に解体した。
小作地率の変化
問題16 解答
松方財政とよばれるデフレ政策の結果、日本はインフレを克服して銀本位制を確立したものの、長期の深刻な不況に陥って農民層の分解が促された。この過程で地主への土地集積が進んで寄生地主制が確立する一方で、土地を失って都市に流入した農民は低賃金労働者と化し、同時に民権運動も激化・衰退を余儀なくされた。他方、物価の安定・低廉な労働力の存在・金利の低下・輸出の拡大を背景に80年代後半の日本は企業勃興期に突入した。
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