$・・・この先生キノコるには。-ニガクリタケえー、そろそろ・・・
毒キノコ 事件がでだす季節となりましたが・・。
先だっての2日に墨田区の錦糸公園で開かれた
「すみだまつり・こどもまつり」
こちらで販売されたキノコが毒キノコだと判り
同区が回収を呼びかけるという騒動がありました。

今回はその ニガクリタケ について書きましょう。

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【墨田区役所 2010年10月5日掲載】
 「すみだまつり」において販売された
 「毒性のあるニガクリタケ」について


長野県阿南町が出したブースで販売された
「やまきのこ(100グラム300円)」4パックの中に毒性をもつニガクリタケが入った可能性のあることが、
出荷元である阿南町の事業者の話から判明しました。

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大元の記事は現在のところ墨田区役所のHPで発表されており、
残るは一パックが未回収との事です。
日にちが経つほど食ってしまう危険性が高まるところですが、6日現在で死亡者とか聞かないので
そのパックには混入していなかったか・・・、
もし食っていたとしても軽くて済んだのかもしれません。

ちなみに・・、このニガクリタケは 煮ても焼いても塩蔵しても毒は分解されない という特徴を持つ。
しかし、地方によっては「~~すれば大丈夫」といった民間伝承が残っており、
自称・キノコ名人のおっさんとかが家族に食わせて中毒になるといった事件も過去にはあります。
毒キノコ事件の多くはこうした無知と妄信から起こるものですが・・・・。
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$・・・この先生キノコるには。-キノッピー■ 栗茸(クリタケ) と 苦栗茸(ニガクリタケ)
さて、今回の騒動の原因の一つは 地元の農家の野生もの手摘み だったという点。
阿南町にしてみれば地元の特産をアピールしたかったのでしょう。
確かに、昨今では地方の土産物屋でもこうしたキノコ販売を見かけます・・。

実のところ野菜と違ってキノコの「野生モノ」「天然モノ」には注意が必要です。

私自身、どうも誤認っぽいパック詰めを見た事が何度かあるのです。
確信が持てなかったので「イチャモン」をつけるのはよしたけどね。
キノコには地方で呼び方が違ったり、毒に対する評価も違うので一概に言えないのも一因。

$・・・この先生キノコるには。-ホウキタケ例えば岐阜・高山の朝市などでは 「ホウキタケ」 
とその近縁種を見かけることがあります。
このホウキタケだけなら食用でいいのだけども・・、置かれているのは・・・・・
これ・・その仲間の多くが毒キノコに分類されているんですよね。
けれども、この山間の地方ではかつて冬の食べ物が少なかった事情から、
塩蔵し保存すると共に毒抜きをしてまで食べる習慣が残ったと思われます。

では、ニガクリタケ にそんな必然があるかと言うと・・無いです。
こっちのケースでは単に 見かけがそっくりで間違われやすい という悲劇に過ぎません。

その「苦(ニガ)」と言う名前から想像できるように、
優秀な食用菌である クリタケ とそっくりで、苦い のでこの名が付きました。
しかも、野生の状態では生息域もかぶっていて、時には混じって生えている事すらある。
双方とも木材腐朽菌(辺材に生息する白色腐朽菌)で、切り株や倒木、埋まった木片から時に大量に発生する。
いわゆる 名人 でも採集の段階では気が付かない程のそっくりさなのだ。

$・・・この先生キノコるには。-ニガクリタケ2まあ・・、ニガの方が傘の色が明るく裏が黒っぽいとか特徴が無いわけではないのだが・・。
野生の状態だと汚れていたりしてまず判別不可能というわけ。
今年は猛暑の影響で発生時期や色にも変化が見られるそうなので、
いつも クリタケ を採ってる場所という安心感から間違う可能性も高かった。
だから、このキノコを出品した農家を責めるのもどうかと少し思うんだよね。

とはいえ、TVニュースによれば、ブースの販売を任された業者を介し出荷した農家は
特にキノコ栽培の経験がある訳でもない素人さんだそうだ。
そこらで採ってきた物をほいほい売り物として出すのもどうかと思うんだけどなあ。

さて、その ニガクリタケ には確実な判別法がある (# ゚Д゚)つDASH!
そう・・・ 食べると苦い !! (毒成分:ファシキュロール[Fasciculol E/F])
いやいや、食べちまったらヤヴァいけれど、かじる程度で飲み込まなければ大丈夫。
農家の人も料理してからそれで気付いたのかも知れないな。
とにかくどえりゃ~苦いので、口に入れた時点で危ないと判る。
クリタケ で悩んだ時は一個づつ確かめるのが防止策と言える。

ちなみに、 熱を加えるとこの苦味が消える と言われ
それがさらなる 誤食 を招く原因となっている事も知っておこう。
苦味は消えても毒は残っている ので、加熱してしまったらもうアウトだろう・・(つД`)あせる

過去にそういう事例があったと、どっかの本に書いてあったんだが、
とある「自称:キノコ名人」というおっさんが、煮こぼせば苦くないから大丈夫と家族に食わせて、
一家そろって入院したというニガクリタケ騒動があったという。

自然界の苦いもの・酸っぱい物は危険という本能的なこの判断法、
山菜類でも有効なものはあるが、キノコも含め触っただけでも危険なものもあるので
一概には信じてはいけない、決して万能ではない事も知っておこう。

また、万一に備えて採ってきたキノコは全部を食べずに一部を残しておく習慣もつけたい。
これは中毒症状が出た際に、原因特定のための標本が必要だからだ。
もっとも・・、そんな不安な食材なら食べないのが鉄則でもあるんだが・・・。
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$・・・この先生キノコるには。-キノッピー■ 安心なキノコを選ぼう
毒キノコ騒動の多くは先に書いた 「無知」「妄信」 、つまりは防止できるものだ。
都会に住む人は土産物屋の野生キノコには手を出さないよう願いたい。
ま・・その・・・商売の邪魔してるようだが、安心な食材という意味では大切な事だ。

$・・・この先生キノコるには。-クリタケ3今回の間違われた クリタケ にしても、ちゃんと栽培技術が確立されているので
食べたければ安全な栽培物がスーパーで手に入る。
あるいは露地栽培ものでキノコ狩りできる農園も見かけるので行ってみるのも良いだろう。

農家側もまた・・、地元の野生モノは自分達だけで楽しみ
むやみに売らない配慮も必要なのではなかろうか。
売りたければ栽培すればいいのであって、安易な「お土産化」には注意を促したい。

さらに、近年ではスーパーでよく見かける 有機野菜コーナー だとか、直販コーナー も注意。
農家側が誤って店頭に並べた場合、スーパーの店員が毒キノコに気が付く可能性は低い。
「☐×村の○△さんが採りました」という写真プロフィールがあるからといって信用できないのも・・
いいのやら、悪いのやら・・・・・ ┐( ̄ヘ ̄)┌ ヤレヤレ
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$・・・この先生キノコるには。-キノッピー■ 今、毒キノコが増えている訳
さてさて、最後に・・・
実はその食用である方の クリタケ にも毒成分があると判った話と
東京都の毒キノコ統計など。

近年の自然志向やバイオ技術の進歩により、菌類もずいぶんと注目されるようになってきた。
かつては「金にならない」と言われてきたキノコ研究も最先端学問の仲間入りである。
そこで判ってきたのが、従来は食用とされてきたものにも毒成分が見つかる例だ。

$・・・この先生キノコるには。-スギヒラタケ最近では中部地方の山間部でポピュラーな スギヒラタケ での毒騒動。
それまで民間でふつーに食べていた(私もばーちゃん家でよく食った)わけだが、
2004年に東北で起きた死亡事件が発端で何らかの有害成分があるとの見解が出ている。
毒成分のはっきりした同定は不明のままだが、
腎臓に疾患のある人を中心に原因不明の中枢神経障害から
数日で死亡に至るという症例が報告されている。
食ったら全員が中毒するわけではないが、何らかの病状と合わされるとヤヴァいというやつだ。

$・・・この先生キノコるには。-クリタケ4で・・・、実は・・ クリタケ にも毒成分が見つかっています。
食用とされ栽培、製品化までされているからやっかいな話ですなあ。

高い免疫活性化効果を持つキシロビオースをはじめ、
エルゴステロールなどのビタミンD群関連要素を多く含み、優秀な食菌とされている一方、
海外ではネマトリン、ネマトロン、ハイフォロミンA,B。などの成分を元に
毒キノコとされているケースもあるのです。

ですから日本の研究者でも意見が分かれるところなのだけど、
「過食しなければ大丈夫」 と言う見解が多いようです。
自然毒は一概に『有毒』といっても程度のランクがあって、
ホウライタケ のように酒と一緒に摂取すると、アルコール分解に支障が出て悪酔いする、
といった条件付中毒や、ウスタケ のように体質・体調によっては下痢するよといったものまで様々。
クリタケ もこの・・いわばグレーゾーンにあるモノだと言えるでしょう。

ただ、もともと地方での食習慣から、現在でも親しまれているって訳なので、
もともと食べていない地方の人がすすんで食べる必要も無いって思う所です。

問題は・・「過食しなければ」のとこです。
でもね、誰でもバケツ数杯のキノコを食えば腹を壊すわけで・・。
水だって飲みすぎは水中毒で死ぬし、そもそも 中毒するまで「過食」するのか って事なんだよね。
ふつーに家庭のおかずに食うに分には、そうそう騒ぐほどの毒成分では無い
っと言うことでいいのだろうなあ。

ーー  東京都 毒キノコ報告例
                 患者数/死亡者数
平成10年10月3日 特定できず 14 / 0
平成10年10月20日 カキシメジ 3 0
平成12年10月16日 ツキヨタケ 6 / 0
平成16年10月18日 クサウラベニタケ 3 / 0
平成19年10月15日 ドクツルタケ又はシロタマゴテングタケ疑い 2 / 0
平成20年9月29日 ツキヨタケ 2 / 0

ーー

いずれも毒キノコ事件の常連キノコ達であります。
この子達には「かじってみる判別法」はききません。
とにかく野生モノはやたら食わない、不安があったら手を付けないのが肝心ですね。
   END

$・・・この先生キノコるには。-キノッピーP.S 今回使ったこのキャラは、群馬県きのこ振興協議会 の キノッピー です。
実は・・、この命名キャンペーンにかつて応募しまして、惜しくも採用はもらしたものの入賞(゚∀゚ ) モヒョ
ダンボールいぱーいのものすごい量の群馬産キノコが送られてきました。
文字通り食べきれなくって近所に配りまくったもんです。
あれこそ「過食」だったのかもしれない・・・。
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