私は 『キノコウォッチング』 に出かける際に、いくつか『儀式』を行う。
これにより飛躍的にキノコとの出会いが増えるのだが・・・
・・・・・その謎について語ろう。

ちなみに、 『キノコ・ウォッチング』とは、
採集や狩りではなく、単にキノコを観察し、その造形を愛でる行為である。
まあ、バードウォッチングのキノコ版といった理解でよろしい。
一般的にはどうしても「キノコ狩り」に代表されるように
「食用か?そうでないか?」で判断されがちなキノコ達おやしらず

だが、自然が創りだしたその神秘の造形美を見よ!!
花のように生ける事ができないだけに、その時、その場での出会いは素晴しい。
キノコだけではなく、ソレを取り巻く環境を含めて愛でる事こそウォッチングなのだ。ビックリマーク
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$・・・この先生キノコるには。-キノコモード1■見えてるけど、見えてない。
人間は「見る」という行為において
入力される視覚情報の20%程度しか認識していないという説がある。

コレはどういう事かというと、
目に入る100の情報のうち、無意識に取捨選択をして20まで減らしている のだ。
すべてを認知していたらヒトの脳はパンクしてしまう、そこで無意識に選別している。
情報として判断し、記憶として保存するためにはそうせざるを得ないわけだ。

さて、これらの取捨選択の基準は優先度と興味度である。
日常生活において必要ないと心の奥で判断されたものはどんどん捨てられてしまう。
例えば「道端でおしゃべりするおばちゃん」、例えば「視界の隅に佇む看板」、
あなたが街を歩いたとして、目的のコンビニに至る途中の風景のうち
どれだけに興味を向けて「~~~だな」っと意識的に認識したろうか?

・・そう、多くは「見ている」OKけれども、「見ていない」NG事にされているのだ。
視覚においてすらそうなのだから、五感すべてについて言うならば
我々はどれだけの外部情報を無意識の闇に流しているだろう?
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$・・・この先生キノコるには。-キノコモード2■キノコモード
山に出かけたとしよう。
そこには雄大な風景と、深緑の彩りがひろがっている。
だが、多くのヒトは「足元の貴重な薬草」にも、
「樹上の珍しい昆虫」にも気が付かない。
なぜなら「草」であり「虫」であるものに注意を向けていないからだ。

無意識レベルで自分に関係無いとフィルターがかかっている。
こうした日常や仕事中心の心理状態が「都市生活モード」と呼べる。

この「都市生活モード」に対し、キノコに意識を向けた状態を
『キノコモード』 と呼んでいる。

なあにそれ自体は難しい事ではない。
山菜取り名人やタケノコ堀名人が・・、なにげない草むらや落ち葉に情報を見出すように
キノコに関する情報を全開で受け取れるよう心の目を研ぎ澄ませばいい。
無意識の情報フィルターを入れ替えるのだ。

ただ問題なのは、そう体のリズムを変化させるには時間が必要な点だ。
私は体感的に三日間必要だと思っている。
最低三日間、その環境ですごさないと本気モードに変わってくれない。
かくも日常生活の影響は大きいのだと思い知らされる。

とはいえ・・、毎回 キャンプに行く訳にもいかないし、
公園に泊り込む訳にもいくまい。
そこで、冒頭で示した『儀式』が出てくるのだ。

いやいや・・、べつに髑髏ドクロの上に蝋燭を立てる必要は無い。
要は「簡易キノコモード」にするためのスイッチになる事柄を自分で決めればいい。
ある種の自己催眠であり条件反射のようなものと理解すればいいだろう。

私の場合、頭にタオルをかぶるのが常である。
そんな簡単な事でも十分なのだ。
最初はバンダナを海賊巻きしてたが、やはり利便性においてタオルが一番。
ちょっと見てくるか~~ っという時にはコレで十分だ。

だが、もっと余裕があって本腰を入れる場合、
トレッキング用の靴を履いたり、腰ベルトには双眼鏡やナイフを装備する一連の動作が
いわば心構えをする儀式の時間となる。
いかに気分を切り替えるか自分なりの方法を決めればいいのだ。

これによって、普段は見逃すであろう落ち葉の状態や
いつもなら見上げない樹上の変化にも敏感になる。
『キノコモード』 --- その真髄は五感情報フィルターのリセットにあると言えよう。
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$・・・この先生キノコるには。-キノコモード3■キノコ・ウォッチングのススメ
さて、儀式を済ましキノコモードになれば・・・世界が違って見える。
身近な公園でも様々なキノコに出会う事ができるだろう。

地上一㍍ほどで切られた樹木からは「ヒラタケ」が顔を出す。
傍らの立ち枯れたものには「アラゲキクラゲ」がびっしり生えている。
冬の寒風の中で樹のウロから「エノキタケ」が伸びようとし。
アカマツの松葉が積もった中に「マツカサタケモドキ」がひょろりと見える。
子供達が走っていく道の傍ら、古い切り株には「マンネンタケ」が鎮座している。

そう・・、もしかしたら誰もが見てる風景に存在するキノコ達。
望む者にはその姿を現してくれるのだ。
そして、観察の際にはちょっとしたお約束事もある。

『やたら引っこ抜かない!!』ドンッ

綺麗なお花を見つけた場合、摘んで持ち帰っても活ける事ができる。
だが、多くのキノコは引っこ抜いてしまったらそれまでだ。
場合によっては本体菌糸のある土壌そのものの衰退を招くケースも考えられる。
なるべく自然の状況を壊さないように心掛けたいものだ。

なぜかヒトはキノコを見つけると引っこ抜いてしまう習性がある。
子供時代を思い出して欲しい、興味を持ったらとりあえず引っ張ってみたものだ。
雑木林などでもよく見かける、抜いて打ち捨てられたキノコに出会うのは悲しい事だ。

また、なるべくキノコを傷つけないためにも
コンパクトな鏡を持ち歩くようお勧めしたい。
傘の裏側や株の奥を見るにあたって活躍してくれるだろう。
上級者編としては、双眼鏡ハサミかナイフも欲しいところ。
キノコは下から上へ探すのが鉄則だが、広い範囲を探索する場合に双眼鏡が役に立つ。
そして、落ち葉や枝に埋もれていることも多いので、そっと除去するための道具もありがたい。

かくしてあなたの眼前には隠されざるキノコが姿を現す。
食材としてだけではないキノコの魅力にきっと気がつく事だろう。
キノコが生える環境は生物ホメオスタシスが健在な証だ。
キノコウォッチングを通して循環する世界を体感して欲しい。

さあ、『儀式』を執り行いフォールドへ・・・
    『キノコウォッチング』 に出かける事をおススメしよう。足あと
  END