「嘲笑うのはアーヴィング」
嘲笑うアーヴィング、
今朝も鬱々ながら生きる者をもはや嗤うしかないと、
雑踏に紛れ込む、俯く群れを嘆きもしない、
勤勉なるが美徳など、誰がそんな戯言を、
働きアリは消費されるだけの存在、
死して悲しまれもしないだろう、
けれど希薄さにのみ於いて、抜きん出るのは君たちだろう、
〝いくらも代わりがいるのなら、
君でなくもいいはずだろう?〟
嘲笑うアーヴィング、
朝から転がる空き瓶は、盗品故買で得たカネだった、
制度の外に出てしまえ、ようやく人のなんたるかを知る、
それまでずっと、ヒトは虫と変わらない、
〝どちらさんかが決めた価値、
そいつを奪って嗤ってやるさ〟
橋の上から吸殻捨てる、
嘲笑うアーヴィング、
退屈そうな日々を生きてる、それは俺も同じだと、
欠伸混じりに伸びた髪を掻き上げる、
〝どうにかなるさ、てめえのことさえ考えろ〟
風に吹かれて消えてゆく、
包み紙は期限切れのベーグルサンド、
嗚呼、今日もそこらじゅうに鳴る絶望、
嗚呼、ありもしない希望なら、
いっそ噛み砕いてやればいい、
悲しみ呟くアーヴィング、
〝富がないのはお互いさまさ、
せめて逃げて病んでしまうな、
死ぬまで逃げるも悪くはないさ〟
闇ゆく街を眺める彼は、
病みゆく者を正視もできず、
〝黒々しいのは何処に行っても同じらしい、
昇れない壁ならば、せめてそいつに唾を吐け〟
あれが落ちてしまえばきっと、
俺らは解放されるんだろう、
今日も昇る太陽に、その下をゆく影のセスナに、
アーヴィングは槍の代わりに吸殻投げた、
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<suicide morning?>
⇒シトロエンとオルゴール
⇒雨のカロン
⇒暴君クラウス
⇒ルフトハンザの孤独
⇒大嘘つきのロイ
あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)
あの人への想いに綴るうた
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