本日のネズミ番外編【Vol.12】BLIND MORE-RAT。 | ネズラー通信編集部のブログ

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本日のネズミ番外編【Vol.12】
BLIND MORE-RAT(英名)。


画像は、 http://blog.livedoor.jp/xcrex/archives/65717908.html より。

ネズミ上目Spalacinae亜目の総称。
和名は「メクラネズミ」と呼ばれており、
 学名も上述を使います。
 (2014.2月、同窓の獣医師にも確認済み)。
 この名は時代にそぐわない名であることは
 確かです。
 従って、本記事上では、
 学名であるSpalacinaeを使いご紹介します。


ネズミの仲間たちは
南極を除く
世界中に暮らしています。

そして哺乳類の40%にも
及ぶのです。

ネズミの一番の不思議は、
種により
かなり特技が
異なることでしょう。

空を飛べるネズミもいます。
ハムスターのように
貯蔵の名人もいます。
以前、
ご紹介したマーラのように、
走ることに特化したネズミも
います。

本日の主人公は、
恐らく哺乳類が抱えている
「寿命」という問題への
アンチテーゼのような特技を
持っていることで
近年、
スポットライトを浴びています。

それは
「癌への対抗」と
「若返りシステム」という
究極的な必殺技です。

Spalacinaeたちの
見た目の特徴から
お話を進めましょう。

Spalacinaeたちは
8種が知られています。
(出典:今泉忠明著 世界珍獣図鑑 P155より 人類文化社 2000年版)

体長は種により大きく異なり、
15cmのものから、
大型のものは35cm!
ネズミにしては大きな部類です。

尾はありません。
体重も、
100-570gと
種により大きく差があります。
生息地は、
アフリカ北東部より、
アジア西部、地中海東部まで。

何枚か写真を見ましたが、
皆、似たような見た目です。
モグラのようです。

あまりかわいい写真が
引用できるWebでは
見つかりませんでしたが、
書籍や図鑑には、
野菜を齧っている
愛らしい姿も見る事が出来ます。

Spalacinaeたちは、
地下生活に特化しています。
そのせいで、
モグラそっくりになりました。
このような現象を
「収斂」と呼ぶのですが、

例えば、
・目は皮膚に覆われている。
・前肢の爪が発達。
・シッポがない。
・毛は垂直に生えている。

最後の特徴はどうしてか
想像できますか?

答えは、
地下のトンネルを移動するとき、
毛並みの方向がないので、
左右どちらに動いても
問題ないように垂直に
被毛が生えているのです。

見た人はモグラと間違えそうですが、
モグラと違うのは、
・門歯(前歯)が上あごから立派に生えている。
・食性は草食よりの雑食。ほぼ草食動物です。

生活が非常にユニークです。
シロアリのような
「塚」を作るのです。

まず土を掘り返し、
直径2.7m!
高さ90cm以上!の大きな塚を
築き上げます。
大したパワーです。

その塚の中にトンネルを掘り、
トンネル生活をしています。
トンネルを掘るときが面白く、
モグラのように
前肢で掘り進むのではなく、
ネズミらしく、
何故か、
前歯でトンネルを掘るのです。

Spalacinaeたちが住む地域には
雨季があります。
雨季には塚の下の方は浸水するので、
塚の上の方で生活します。

また乾季には、
寝室用の小さな塚をつくることでも
知られています。
寝室とは、
贅沢なネズミさんです。

Spalacinaeたちの
繁殖について。
巣立ちは生後4-6週間と
ちょっと
長めかもしれませんね。

若い個体は、
一生の中で、
一番地上を歩くと考えられています。

それは、
夜中に自分の縄張り=塚をつくる
場所探しに奔走するからです。

さて、
モグラに比べて、
非常に大きな身体をしている
Spalacinaeですが、
草食動物であるということが
起因しているようです。

草食性なので、
食物が豊富にあり、
大型化もでき、
塚をつくるくらいのエナジーを
使うことが出来るのです。

これは、
アフリカのサバンナで、
肉食獣がゾウやキリンなどの
草食獣より小型である、
というのと同じですね。

Spalacinaeたちの
競合相手はハムスターです。
同じ地下トンネル生活者ですからね。

さて、
Spalacinaeたちは
ネズミにしては大変長寿で、
30年は軽く生きます。

哺乳類につきものの
癌耐性を持つ動物としては
真社会性を持つ
ハダカデバネズミが知られていました。

しかし、
システム的には
Spalacinaeたちは
全く違う方法で
体内の癌を消し去っています。

医学的なお話になるのですが、
http://gigazine.net/news/20131025-secret-of-long-living-mouse/
などは
理解しやすいかな?

例えば、
ヒトの場合、
生後数週間で、
老化が始まります。
自身の免疫システムが、
自身を攻撃しはじめるのです。

成長>老化のときは、成長し、
老化>成長になり、
寿命は尽きるのです。

医師、獣医師の方は
ちょっと乱暴な書き方ですが、
ライフサイエンスの入門としての
お話なので、
ご容赦下さい。

私たちの身体はタンパク質で
構成されています。
良質のタンパク質、
例えば、
ネズミさんには
「ひまわりの種」など
適量与えると、
毛の艶や爪などが
美しくなりますね。

Spalacinaeたちは、
野草を食べていますが、
非常に良質のタンパク質を
合成するのが得意という
特技を持っているのです。

いわば、
常にピチピチお肌ってことです。

ヒトと生活圏が被らなければ、
関わることもない動物もあります。
(農作物を荒らすときは
 害獣となってしまうのですが)

しかし、
まだまだ世界の動物たちの中には、
すごい特技を持ったものが
いそうですね。

分類学は、
こういった動物の発見にも
役だっています。

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