本日のネズミ番外編【Vol.3】ハイラックス。 | ネズラー通信編集部のブログ

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本日のネズミ番外編【Vol.3】
ハイラックス


岩狸目ハイラックス科(総称)
写真はキボシイワハイラックス。
http://matome.naver.jp/odai/2137445938776090901  より。

聖書にも登場し、
現在のスペインの語源にもなり、
分類学者を悩ませ、
飼育員を困らせる。

本日のネズミ番外編は
ネズミと長年、
考えられていたけれど、
実は非常に奥深い動物だった、
というハイラックスが
主人公です。

キュートなルックスは
近年、
動物園で人気ものなのでは
ないでしょうか。

種により体長に違いはありますが、
30-60cmの小動物で、
尾はハムスターのように
オマケみたいついています。

前肢に4本、
後肢に3本の指を持っていますが、
その指には
蹄(のような丸い爪)があるのです。

分類学の遷移を見て行きましょう。

1766年に
最初の学名が付けられました。

Cavia capensisです。
「ケープタウンのテンジクネズミ」
という意味です。

最初は、
ネズミ目の仲間とされました。

何故ならば生涯、
上顎の門歯が伸び続ける特徴を
持つからです。
見た目も
なんとなーく、
ネズミっぽいですね。

さて、
長い間ネズミの仲間と考えられていた
ハイラックスですが、
フランスの学者
ジョルジュ・キュビエにより
有蹄類
(蹄を持つグループの総称)に
分類されました。
ジョルジュ・キュビエ先生は
解剖学が専門でした。

一生伸び続ける
上顎の門歯は、
ネズミ目やウサギ目の仲間と同じです。
解剖学的に言うと
「無根」=歯の根本が閉じていないのです。

一方で下顎は「有根」。
歯がある程度
成長すると伸びません。
この部分で
ネズミやウサギの仲間なの?
という疑問が発生します。

草食動物の特徴として
門歯と臼歯の間には
隙間があります。
こちらも面白いです。

上顎の臼歯は奇蹄目
(例えばサイ)の特徴を持ち、
下顎の臼歯は偶蹄目
(例えばカバ)の特徴を持っています。

骨格を見ると、
奇蹄目とよく似ています。
小柄ながらも
サイと似ているんです。

前肢には、
手根骨という骨があるのですが、
構造的には
鼻長目
ゾウですね)と似ています。

後肢の3本指は、
原始的な奇蹄目の特徴であると
言われています。

感情表現ですが、
興奮すると
背中の毛を逆立てますが、
こちらは、
ご存知
カピバラの頭の毛と同じ仕組みで、
ついでに背中にある分泌腺は、
顔が愛らしいイノシシ、
ペッカリー(偶蹄目)と
同じ特徴を持っています。

【追記】質問があったので追記します。
ペッカリーについて
和名はヘソイノシシと呼ばれ、
背中に臭腺があるのが特徴です。
麝香のような香りを出し、
5-15頭、時に100頭の群れを作ります。
ペッカリーは非常に生き方のレベルが
「高い」ことで知られています。
その一つが
「利他的行動」(サクリファイス)と
呼ばれる自己犠牲です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ペッカリー
ペッカリー属の中のチャコペッカリーは
200万年前より生存する生きた化石ですが、
近いうちに絶滅すると言われています。
チャコペッカリーの研究は1993年より
本格的に行われました。
10頭以内の群れで暮らし、
オスとメスが入り混じった社会を
作ります。
群れの中での争いはほとんどなく、
優位や、優劣はありません。
平等な社会を築く
高度で高等な生き物です。
しかし、近いうちに絶滅すると
言われています。

写真は  http://blog.livedoor.jp/himan/archives/50399179.html より。
Wikiでは、その生態について
深くは書かれていませんが、
いずれ機会を見つけ
詳述したいと思います。
兎に角、
見た目がかわいいイノシシです。
カピバラがかわいいと思うなら、
ペッカリーも愛らしいと
思えるでしょう。
(シャボテン公園で飼育されています)
一方で高級皮革と知られ、
毎年10万頭が姿を消すペッカリー。
彼等の高等な生き方や
美しい姿。
この世界に居場所がないのが
少し寂しいですね。


(本文へ戻ります)

さらに解剖学的な特徴として、
脳は、ゾウに、
胃は、ウマ(奇蹄目)に
似ています。

書きながら、
偶・奇を確認しています。
非常にややこしいですね(笑)

さて、
近年、
化石などの発掘により、
ハイラックスは、
長鼻目(ゾウ)や、
海牛目(ジュゴン・マナティー)を含む
有蹄目の祖先
だと考えられるように
なりました。

よくぞ、
色んな動物の特徴をテンコ盛りで、
何かに特化せず、
生き延びてきたものです。

ハイラックスには
素晴らしい能力があります。
それは壁登り。

肢の裏を
くぼませて
吸盤をつくることにより、
垂直に壁を
登ることが出来るんです!
こうなると、
カエルやヤモリまで
含んでいますね。

動物学者、
今泉忠明さんは
その著書の中で、
12匹のハイラックスが
逃げたお話を
書かれています。

当時は
動物園では
人気がなかったようです。
日向ぼっこが好きで、
活発に動くような
動物ではありませんから。

肢の裏を吸盤にして
壁登りを出来ることを
知らなかった飼育者たちは、
動物園の展示で、
巨大な円形の土管を
作ったそうです。

高さもあったので、
金網もガラスも
しなかったとのこと。

レッサーパンダも、
透明のガラスの
円形場に
展示されていたりしますね。
それを想像して下さい。

飼育展示した翌日、
12匹は姿を消します。
飼育員総出で
探したそうです。

売店の下から、
ベンチの下から、
そして最後は、
近所の住宅の通報で、
『玄関に、猫か、ウサギか、変な動物が
 座っている』

と連絡を受け、
無事確保。
(出典『世界珍獣図鑑』人類文化社P117)
このお話の通報者の方の表現が
面白いです。
ハイラックスをよく捉えています。
何なのか解らない。

それが魅力でもあります。

さて、
野生のハイラックスは、
岩場に住んでいます。

日光浴が大好きなので、
陽が昇ると、
群れで身体を寄せ合って、
じっくり
太陽の光を味わいます。

陽が高くなると、
ゆっくり散らばって、
毛づくろいしたり、
子供は
追いかけっこをして遊んだり。

その後は、
食事の時間。
草や木の葉を食べます。

夕方も食事を摂る習性が
あるようです。

また月夜の晩は
パトロールをすることも
知られています。

なかなか面白いですよね。


人類との
文化的な繋がりも記しておきましょう。

マルティン・ルターは
旧約聖書を
ヘブライ語からドイツ語に
翻訳した功績者です。
ルターの名前は
学校で習いますよね。

その彼が誤訳というか、
一つミスをしています。
何箇所かあるのですが、
例えば、
『ウサギ。か弱きもの。(以下略)』
という部分。

ウサギと訳されたのは、
イスラエルにたくさん棲んでいる
ハイラックスのことだったと
後の歴史学者が指摘しています。
ルターさんは、
ハイラックスを
知らなかったんですね。

「ウサギは小さいけれど、
 岩場に棲んで賢いね」、
 っていう箇所です。

またスペインという語源。

フェニキア人が
イベリア半島を征服したとき、
イベリアには
たくさんの
アナウサギがいたのですが、
フェニキア人は、
アナウサギを
ハイラックスと見間違い
(思い込み?)
征服した土地を
「Ishaphan」=ハイラックスの土地、
と名付けてしまったのです!

その後、
ローマ人により改名され、
「イスパニア」=スペインと呼ばれています。

日本各地に、
スペイン村などがありますが、
イスパーニャ、というのは
ハイラックスの土地、って
意味なんですよ。


非常に奥が深い動物なので
長文になりましたが、
ハイラックスは
現在は動物園でも
そのかわいい顔から
人気を獲得しています。

よく群れでくっついているので、
観ていて微笑ましいですよ。

動物園に行かれた際は
是非、
この文章を思い出して下さい。
たくさんの動物が
出てきましたね(笑)
ネズミにウサギ、
カバにサイ、
ゾウに、ジュゴンやマナティー。
カピバラやペッカリーも。
その特徴を兼ね備えた
愛らしい小動物を
じっくり観察するのは楽しいですよ。

【次回予告】
 次回はネズミと名前がついていないのに、
 ネズミというキュートな動物です。
 3月1日公開予定。
 お楽しみに!


ねずみのお話へ☆
 【ナキウサギ】
 【マーラ】
 【ハイラックス】

【左】イチオシ!コーデュラ製布地使用コインケース。
【右】がま口ポーチとミニボストン。

ネズラー通信編集部(C)