なごやんのBCL史(44)もうひとつの国際放送 | なごやん

なごやんのBCL史(44)もうひとつの国際放送

 イタリアやポルトガル、ブルガリアなど、まだ記事にしていないヨーロッパの国も多数あるのですが、今回は(20)ドイチェ・ヴェレ(30)ラジオ・ベルリン・インターナショナルに続く3つ目のドイツネタです。


【背景】

 ドイツの電波事情というのは少々複雑です。というのも、第二次世界大戦が終わった後、「敗戦国、犯罪国」ドイツでは使うことのできる放送電波が限られていたからです。


 そしてまたドイツでは、ナチス時代のように放送に政治が介入することを許さないという視点から「ドイツ公共放送連盟(ARD)」という非政府組織を作り、国内各地の放送局を統括しています。ドイツの放送局は地域割がしっかりしていて、NHKのような全国統一の放送はありませんでした。


 一方、第二次世界大戦後に分断されたドイツの東部分(ドイツ民主共和国;東ドイツ)では長波による自国の情宣放送がドイツ連邦共和国(西ドイツ)に向けて発信されていました。


【Deutschlandfunkの始まり】

 東ドイツからの西ドイツ向け情宣放送に対抗するため、ARD傘下の北西ドイツ放送が長波を使って東ドイツ向けに放送をし始めましたが、西ドイツ政府としては地方放送に属さない放送局を立ち上げ、東ドイツの人や東ヨーロッパに住むドイツ人、ドイツ語を母語ないし主言語とする人に向けての放送を始めることにしました。そして本社をケルンに置いたのです。これが「Deutschkandfunk(DLF)(ドイチラントフンク、ドイツ放送)」です。


【国際放送DLF】

 DLF は上述のように当初は「同胞向け」に放送されていましたが、次第に守備範囲を拡張し、ポーランド、チェコ、セルビア、クロアチア語、さらに英語でも放送するようになり、長波および中波によってヨーロッパ、とりわけ北部ヨーロッパ全域にまで送信範囲を拡大しました。出力は最大800KWと強力です。

 インターバルシグナルにはベートーベンの交響曲第9番の「歓喜の歌(An die Freude)」の最初、「♪Freudeschöner GötterfunkenTochter aus Elysium」の部分が使われ、英語では「This is Germany.You are listening to the English Service of Deutuschlandfunk broadcasting from Cologne.」とアナウンスされました。


 一方、DLF 以外のARD傘下の地方局でも西ドイツ以外にまで聴取範囲が広がっていることがあり、ARDではこんな「国別聴取可能放送局早見盤」を作ったりもしていました。一部の放送は日本でも聴取可能でした。

                      聴取可能放送局早見盤

(小円盤のピンク部分を大円盤の国に合わせると、窓に出た●に該当する局が聴取できる。)


 受信報告に対しては他の放送局と同じように受信証が送られてきました。

マインツ大聖堂?


 こんなおしゃれなデザインの受信証もありました。

Treffpunkt Bahnhof(待ち合わせ駅)なるほどね


 DLFの番組表は詳細でわかりやすいものでした。

番組表


 DLFでは情報誌を年4回(季刊)発行していました。 英語版もありました。

DLF情報誌(Deutschlandfunk Informationen)


 私は放送されたり手紙で送付されたりしたアンケートには積極的に答えるのですが、上の情報誌にはその結果が細かく解析、掲載されていました。いかにもドイツ的です。

DLFアンケート結果のまとめと考察(上記情報誌より)


【DLFのその後】

 ご存じのように、1989年、東西ドイツが再統合されました。東ドイツにあった「ラジオ・ベルリン・インターナショナル(RBI)」は西ドイツの「ドイチェ・ヴェレ(DW)」に抱合されました。


 そして、東西ヨーロッパ冷戦下で生まれたDLFもその役割を終えます。

 独立性を失ったDLFのヨーロッパ部門(国際部門)はドイツの国際放送、DW に移行されました。


 もっとも、DLFとDW はもともと親密な関係にあり、私がBCL 史(余話)私の言語学習で少し紹介した「ラジオドイツ語講座(Auf Deutsch gesagt)」のテキストはDW、DLF 合作によるものですし、放送内容も同じでした。

       ラジオドイツ語講座テキスト(DWのものと同一)


 本来のDLF はDeutschlandradioとしてFM放送を行っています。

 そして、同局のHPによれば、来年の夏、再びDLFとして蘇ることになっているようです。


 ドイツの放送については、話題がまだたくさんありますので、これからも追々書いていきます。


 次回は「その他の地域」で、北米を予定しています。


海外放送の過去記事はこちらをご覧ください。


相互リンク⇒アクティブなごやん(再開ブンデス、ゴートクは先発外れそう)


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