沖ノ鳥島 転覆事故について | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

日本最南端、沖ノ鳥島の桟橋建設工事中の事故がニュースで流れた。

2隻の船で桟橋を曳航中に桟橋が転覆、桟橋上で作業していた16人が海に投げ出された痛ましい事故で胸が痛む。


ダウンこの日は比較的穏やか。「桟橋を海に浮かべた瞬間は問題はなかったが、引っ張る時に傾き始め、ものの数分で転覆した」と松永部長。ただ事故の詳細は不明といい、「引っ張り出す時に何らかのトラブルがあったとしか言えない」と繰り返した。アップ


穏やかな海で何故事故は起きたのか、20代の野人が東シナ海で遭遇した事故とよく似ている。

野人の専門は「海洋学」「船舶設計」「航海」「潜水」「フィッシング」「マリンスポーツ」、つまり、海の仕組みを知り、船を作り、船を乗りこなし、潜って、釣って、遊び、数十年間、総合的な見地から海の物理的仕組みを理解して来た。

この6つを業務として修得した人は一人もいない。


桟橋は船ではなく水を進む構造にはなっていない。

推進機を付けて自力で進むには水の抵抗で極端に遅いが、安定している。

水に浮いている幅広の板をイメージすればわかるが、簡単にひっくり返るものではない。


しかし、この板にヒモを付けて引っ張ればどうなるか・・・(力を加える位置 力の方向によって動きは極端に異なり 引く側も引かれる側もコントロールが難しい)

スピードが上るほど不規則な水の抵抗が大きくなりひっくり返りやすくなる。

スキーや水上スキーの板の先が反らずに真っ直ぐな場合と同じで、雪や水でつんのめってしまう。つまり抵抗が命取りになりスキーの役目を果たさない。


しかし、平らな水面や雪面で、板を後ろからゆっくり押せば、水や雪は上から被るがひっくり返ることはないし、面の状況に応じて速度も方向も調整出来る。簡単な道理だ。

押せば安全な人が入った浮き輪も、ヒモで引けば不安定になるのと同じ。


船で強引に引っ張れば、成るべくして成ることはやるまでもなく、その形態から事前に予測出来る。

絶対に乗るな、貨物船に乗って帰るように」

東シナ海でもしつこいくらい念を押して了解させたが、貨物船の船長も船員も、友人の建設会社責任者も従業員も・・理解出来なかったようだ。


24歳で最年少、島ではヤマハ海部門の責任を担っていたが海洋工事の経験では足元にも及ばない。

こんな安定感のあるものがひっくり返るはずがない、野人はああ言ったが絶対大丈夫」と言うのは全員の合意だった。

しかし、来た時は空の木船だから海面をうまく滑ったが、帰りは人の重みの分だけ沈んで水と波の抵抗が比べ物にならないのだ。


穏やかな海を、わずか数百mの港まで貨物船で曳航された台船は転覆、救命胴衣も付けず上で休んでいた友人他11名の作業員が海に投げ出され2名が亡くなった。

先に帰港、台船の引き揚げ準備をして待っていた野人は、同行しなかったことを悔やんだ。


理を解するかどうか、解せなくとも指示を守るかどうかが生死を分けたが、理を説く方にも説き方の責任はある・・その事を痛感した

野人理論にはその時の教訓が生きている。

潜水士として捜索にも加わり、友人の遺体は野人が3日後に発見、2匹の巨大鮫を追い散らし、自らの手で28mの海底から抱いて運び揚げた。


今回の桟橋は長さ30m、幅20mで揺れもなく、一見、船よりもはるかに安定して見える。

水を注入して沈めることでさらに安定させているが区画構造まではわからず、引けば水の抵抗は膨大。

構造が単純ゆえに設計段階で間違えることは考えづらい。


海上に伸びた海底に設置する4本の足柱の構造と、重心への影響は記事からはわからないが・・

横転、転覆は重心の移動が主因、引く力に加え、柱の重心移動も関係しているだろう。

絶対大丈夫のはずが大丈夫でなかったのだから、今回は予測出来なかった事には違いない。


この辺境の地での海洋工事には多くのプロフェッショナルが携わっている。

構造上の可能性もないとは言えないが、曳航時に加わる力が桟橋にどう作用するか、計算で読めなかったことが原因ではなかろうか。
船で曳航して台船から引き出すしか方法はなく、他にもこの方法で設置しているだろうが今回は失敗したのだ。


曳航は箱船ではなく船型を持つボートでも難しく、水や波の抵抗で舵が効かず左右に振れる。
引くか押すかで天地ほどの違いが出る
浜名湖での転覆事故も同じ道理だった。


工事を担当した会社の一つ「五洋建設」には東海大海洋学部の友人、後輩が多く、海洋学部教授も専門家としてのコメントを入れている。


皆それぞれが専門家だが、専門家の弱点は、総合的、立体的な思考の組み立てだ。

点でも線でも面でも不十分、仕組みとはあらゆる方向がある立体であり、思考の起点次第で答は異なって来る。

起点を誤れば、それに気付かない限り間違いは何十年、何百年でも続く。

今は行方不明者が早く見つかることを願っている。


沖ノ鳥島桟橋工事事故

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20140331-00000772-fnn-soci

東シナ海流42 上陸作戦の悲劇

http://ameblo.jp/muu8/entry-10135766940.html

東シナ海流43 行方不明

http://ameblo.jp/muu8/entry-10136941130.html

東シナ海流44 海底捜査の苦悩

http://ameblo.jp/muu8/entry-10137375674.html

東シナ海流45 巨大サメとの対決

http://ameblo.jp/muu8/entry-10137721730.html

東シナ海流46 遺体を抱いて浮上する

http://ameblo.jp/muu8/entry-10138079879.html


浜名湖ボート転覆事故原因

http://ameblo.jp/muu8/entry-10567279481.html

漁船転覆 ブローチング現象

http://ameblo.jp/muu8/entry-10242823505.html

遭難 春の嵐

http://ameblo.jp/muu8/entry-10086283185.html