山上の古寺の静寂 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは


伊勢の国、浅間山上にある金剛証寺は好きな寺の一つだ。一つと言っても他に寺は知らない(笑)。この寺へ行くには伊勢志摩スカイラインと言う有料道路か、麓から歩いて登るしか交通手段がない。いつ行っても静かで落ち着くのだ。年に数回は訪れるが別にお参りして手を合わせるわけでもない。境内の池の側の茶店で抹茶とぜんざいをいただいて帰る。

駐車場から石段を歩いて上ると仁王門があり、門をくぐると鐘つき堂がある。その横には茶店、前には池、本堂はさらに石段の上にある。相当古い寺で、昔の人はお伊勢参りに来ればここまで足を伸ばしたようだ。浅間山は植物の宝庫、それが目的で四季に足を運んでいる。登山は面倒で苦手だ。勾配のない山があれば最高なのだがいまだお目にかかったことがない。山頂からは伊勢鳥羽が一望出来る。茶店にはスタッフのお姉さんが一人だけ、相変わらず平日は閑散としている。ぜんざいを食べながら話を聞いた。毎年この寺で開催される「あじさい祭り」は盛大なのだが昨年はまったく咲かず中止になったらしい。庭園の管理にシルバー人材を入れ、和尚さんがアジサイの剪定の指示を出した。数値ではなく「刈るのはこの位置」と自分の腰を指差した。おじいさん達は忠実にその通りにしたのがアジサイは咲かなかった。高さが極端に違っていたのだ。和尚さんは長身で下駄、おじいさん達は単身でズック、おまけに腰が・・・曲がっていた(笑)。その差が極端過ぎて、思い切りちょん切られたアジサイは咲くに咲けなかったのだ。まあこれも仏の御心だろう。