シナモンの種類と特徴 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

シナモンと言えば誰もが知っている古くからの香辛料で、料理やお菓子作りには欠かせないものになっている。シナモンには、「シナモン、カシア、ニッキ」と3種類あり、同じクスノキ科だが木の種類は異なる。厳密に言うならシナモンと呼べるのはスリランカ産だけのようだ。3種の香りは微妙に違うのだが、成分は同じ「桂皮アルデヒド」だから同じような使い方で一向に構わない。まあ細かいことは言わずシナモンはシナモンで良いだろう。

カシアとは中国の「シナニッケイ」のことで、ニッキとは日本の「肉桂」だ。シナモンは皮のコルク層を除去した薄い皮を何枚も重ねて丸めたもので辛味はない。カシアはコルク層がついた厚い皮を丸めたもので、シナモンより香りが強く日本で一番売られているものだ。肉桂の樹皮は香りが弱くて用いられず、根の皮に強い香りと辛味がある。日本で古くから親しまれているニッキ飴や八つ橋や「ニッキ棒」はこの肉桂の根が使われていた。シナモンティーとはルーツが異なる。原産地は中国南部からベトナムにかけてだが、現在の主要産地は中国、ベトナムの他、タイ、カンボジア、スリランカなどだ。それに日本でもわずかだが生産している。紀元前4千年頃にはエジプトのミイラの防腐剤として使われていた記録がある。同じクスノキ科のクスノキは防腐剤「樟脳」の原料だからニッケイも同じ効果があるのだろう。クスノキもニッケイと同じ香りを放っている。シナモンは砂糖と相性が良く、甘味を引き立て、40度前後でもっとも香りが強くなるようだ。

子供の頃よく駄菓子屋でニッキ飴を買って食べたが、ニッキ棒も大好物だった。懐かしさを感じる男性も多いことだろう。皮をかじりながら歩くのが好きだった。

小学校の遠足では、毎年春秋に3時間かけて登った山の頂上の近くにニッケイの大木が一本あり、必ず数人でこっそり採りに行っていた。土を掘る小型スコップとノコギリとナイフは必需品で、帰りの空のリュックはニッケイで満杯だった。当時から樹皮に香りはないことがわかっていた。持ち帰ってから良く洗い天日干しで乾かし毎日ポケットに入れて学校に通った。そしてビーバーのように樹皮だけかじるのだが、一番香りの良い根の太さは決まっていた。本物の肉桂だとは思うが、山には似たような香りの「ヤブニッケイ」があり、今となっては定かではない。ヤブニッケイと違って肉桂は山に自生していないことを知り自信がなくなったのだ。たとえヤブニッケイだったとしても十分美味しかったことは確かだ。ニッキは中年の郷愁を誘う(笑)。野人の家にも農園にも肉桂は植えてある。ただ、いまだに根を掘り起こして食ったことがない、木が可愛そうで・・・