根っこ!薬食の美学 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

何事も根っこが大切、根を張るとか、根本的とか、例えに使われる根っこ。根があってこそ植物は育つのが道理で、つじつまの合わない根拠のない事を根も葉もないと言われている。野菜も読んで名の如く元は野草だ。ゴボウ、ニンジン、ダイコンなど、原種は存在するが毒草のヤマゴボウ、ドクニンジンもあり、犠牲者も絶えない。ちなみに売られている山ゴボウ漬けは森アザミの根で、ヨウシュヤマゴボウは猛毒である。毒と薬は紙一重と言われるように養分を貯える根っこの効力はトリカブトをはじめとして凄まじい。薬草でも一番多く使われるのは根である。図鑑を見て思い込みで食べず、食べた人に教わるのが一番良い。時代劇に出てくる病人の為の高価な朝鮮ニンジン、飢饉で根を掘る人々など、古くから人と関わってきた歴史もあり、今でも農村では文化の一部を引き継いでいる。最近ではブルドーザーで収穫される葛の根は、葛粉や葛根湯にされるが、昔は根を木槌でたたき水にさらして作っていた。葛は道端のどこにでもあり、芽、葉、花とも食用に出来、漢方の材料でもある。胃薬や虫さされなど無数にあるが、生で食べられるものだけでもその辺の山に5種類はあり、土から顔を出す前の芽まで入れたらもっとある。

ヤマノイモ、ノビル、ヤブラン、ジャノヒゲ、チガヤなどで、ヤマイモ、俗称ジネンジョは秋から冬が食べ時で、枯れてもつるさえ見つければ掘れる。サツマイモと違って消化酵素を含むので生食出来る。ノビルはネギの原種に近く、にんにくに近いもので、土手にもたくさんあり、天ぷらやヌタにしても美味しい。ここまでは食べている人が多いが後はあまり聞いた事がない。後の3種は根にこぶのようなものを作り養分を貯えている。ほのかに甘く漢方では滋養強壮酒として使われている。掘って生で食べられる芽にはタケノコ、ヤマウド、イタドリなどがあり、これらは全てアクが少ない。これだけ知っていればどこでもサバイバル出来そうだ。15年程前、類似種を見分ける為あえて毒草の試食に挑んだ事がある。少量なら薬とは言え、2回程寝込んだ。君子危うきに近寄らずと言うことわざもあれば、虎穴に入らずんば・・と言うことわざもある。単に食い意地が張っているだけかも知れないが、微毒を和らげた一番の方法は、濃くて苦い渋茶で、5分で痛みが引いた。それからは茶を見る目が変わり、中国の文化に関心を持つようになった。まむしの毒消しはオオケタデと言われ、試そうとも思ったがやめにした。まむしには血清が一番。ジャノヒゲは蛇のヒゲと書き、別名龍のヒゲ。ほとんどの庭に植えられているので土を払いこぶをかじってみると良い。こんなことばかりやっていたので、根も葉もある人間になれた、そう思い込まなければ報われない。くれぐれも毒草の人体実験はやらないように・・