中国における動物愛護の思想や宗教、歴史について書かれていてとても興味深い記事です。



<記事元> 


Asian Correspondent


PETA: Animal rights on the rise in China


In Depth News


Buddhist Revival in China Fuels Animal Welfare Movement


より翻訳、まとめました。



玉林犬肉祭りの会場で売りに出される犬



中国は、動物に思いやりがある国としては知られていない。


この国の伝統的な思想である仏教道教、儒教は、動物への慈悲の精神を説いているにもかかわらず、残酷な動物ショーや犬肉祭り、野生動物の取引きなどで常に注目を浴びている。


しかし今、特に若く知識を持った世代で変化が起きている。

多くの国民にとって動物愛護は馴染みの薄い問題だが、2014年に行われた調査では、大半の国民が部分的であっても動物福祉向上のための法制定に賛成していることがわかった。


動物愛護団体PETA・アジアの担当者は、「インターネットの普及で多くの情報を得るようになった若者たちが、食やファッション、娯楽のために動物を虐げることに対して熱心に声を上げるようになった」と話す。




PETA・アジアによると、中国で動物愛護に関して向上している点として以下が挙げられるという。



・現在、国内にはおよそ5000万人のベジタリアン・ヴィーガンがいる


・自然派化粧品を販売する「Eco&more 」が、中国のメーカーとして初めてPETAの動物実験していないメーカーリストに入る


・多数の大手小売店が、羊に対し「ミュールシング」を行う業者からのウール調達を中止した


・PETA・アジアが最近実施した毛皮反対キャンペーン“Fur Hurts”には、全国から350,000人分近い署名が集まった


・PETA・アジアが初めて開催した「中国動物愛護ツアー」では、50校を超える大学の“動物 ≠ エンターテイメント”(動物は娯楽の道具ではない)をテーマにした展示の見学が組まれた


・ジャッキー・チェン、歌手のショウ・ルオ、俳優のチェン・ボーリン、スン・リー、リウ・シャオチンなど多くのセレブが動物虐待について声を上げている


・中国住宅省と住宅都市農村建設部は先ごろ、動物園での動物ショーを禁止する法案の骨子をまとめた



また中国政府は現在、動物福祉に関する法の改正を検討している。今年1月、全人代は、野生動物の保護などに関する改正法案についてのパブリックコメントの募集を始めた。


菜食主義や動物愛護に対する意識の高まりは、所得の増加や都市化、教育、ペットを飼育する市民の増加と関係しているのかもしれない。


さらに、国内での伝統的な宗教や文化の復興との関連性を指摘する声もある。中国社会主義中央研究所のマン・ピン教授はこう話す。


「中国人はいま、伝統的な文化や価値を再発見しているのだと思う。


古い記録によると、動物の保護は古代王朝によって最初に定められた項目で、清王朝時代には、動物の子どもや使役動物、妊娠中の女性を殺すことは禁止されていた。


現代では、熊が曲芸をし、動物たちが残酷な実験に使用されるなどしているが、私たちはこの国に伝わる伝統文化に戻ることができるのではないだろうか?


この国の文化は、仏教の核である慈愛の精神に深く根ざしている。私たちが慈愛の精神を失うということは、中国文化そのものを失うことと同じである」。


共産主義の出現前まで、動物福祉は中国の社会的相互作用の基盤となっていた。主要な宗教的・哲学的伝統である仏教道教、儒教のすべてが動物への思いやりを強く説いている。


実際、そうした精神をもって行動している者たちもいる。

2014年、恒例の犬肉祭りが開催される玉林市では、国中から集まった僧たちが、殺された犬の魂を慰めるべく市場を練り歩いた。



仏教の復興とともに、国内各地で多くの動物保護団体が設立された。またペットを飼育する家庭が急増し、動物性の食材を使用しない精進料理のレストランの人気も高まっている。


1994年まで、北京市ではペットとしての犬の飼育が強く制限され、市内を徘徊する犬は殺処分されることもあったが、現在では、10年前と比べ倍のおよそ200万頭の犬が飼育されていると見られている。


中国のすべての哲学的な伝統は、毛沢東による厳格な共産主義の元で抑制された。活発な宗教活動は許されず、仏教の多くの理想は有害または反革命的とみなされた。ペットの飼育はブルジョア的趣味として厳しく制限された。動物への配慮は反革命的と考えられ、動物は利用するための経済的資源としか見られていなかった。


しかし今、特に都市部やネット上の若年層において、動物を保護しようという動きが活発になっている。国際的な保護団体の活動が刺激となった面もあり、今では国内の多くの団体が自ら行動を起こし始めている。



ヒューメインソサエティーの関係者はこう話す。


「この数十年間、古くから伝わる動物への慈愛の精神は、動物福祉を軽んじるイデオロギーによって影を潜めた。毛沢東の時代、スズメ害虫として駆除され、飼い犬はブルジョア的だとして良しとされなかった。その後豊かさを求める市民が増え、利益第一の犬肉業者たちがペットの犬をさらったり、野良犬に毒を盛るようになった。


そして今、仏教と彼ら自身の心に導かれ、活動家たちは国民の動物に対する考え方を変えようとしている」。



~記事まとめ以上~



このような過程があったのですね。


様々な面で今後改善や規制が必要だと思いますが、私たち日本よりも前進が見られる分野もあります。


中国も日本も、動物福祉に対する国民や社会全体の意識が向上し、命に思いやりのある国になっていってほしいですね。



以下、中国に関連した過去記事をリンクしました。


ゾウの保護で歴史的な一歩 米国と中国が象牙の取引き禁止で合意


化粧品の動物実験廃止に向け、中国政府が規制改正


英国 中国の輸入化粧品における動物実験廃止へ向け技術協力


中国 実験動物の福祉向上のための法改正を検討(英語)


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中国で初の、畜産と屠殺の動物福祉規約