これだ。
http://ameblo.jp/mokuba-red/entry-10873516376.html
競技スキーの試乗記である。
ノルディカ・ドーベルマンという検索ワードで来る人も多い。
そして冬の間は少なくなるが、モータースポーツシーズンになると急に増えてくる検索ワードが
スクリーマーとビッグバン
である。
主にロードレースの多気筒エンジンにおける点火順序の違いによる呼び分けのことである。
かつて書いたこのトビにヒットしているようだ。
http://ameblo.jp/mokuba-red/entry-10100725003.html
このときは振動という視点から優劣、差異を語った。しかし、上記のトビではメンドクサイからさらっと流しておいた、出力特性の違いも大きなファクターであることは間違いない。
しかし、この点についてロジカルに書かれた記事やサイトを見たことがないので、今日はその点についてじっくりと解説してみよう。
もんのすげぇ~、なっがいので覚悟して読むように。。。(爆)
一応、上記のリンク先トビも読んでもらった前提で話を進める。かつて読んでくれた人も今一度、さらっとおさらいをしてもらうと、この後の話が理解しやすくなると思う。(←ちょー、上から目線。)
それでは、はじまりはじまり。。。
スクリーマーと呼ばれるのは等間隔爆発のエンジン。
一般的な直列4気筒のエンジンをイメージしてもらえばいいと思う。(オイラが知る限りでは直列4気筒エンジンでは、ヤマハのR1の現行モデルだけが等間隔爆発では無く、それ以外は等間隔爆発のはずだ。)
胸の空くような加速感、吹け上がりが持ち味だ。
甲高いエキゾーストノイズのイメージから、スクリーム(scream)が転じてスクリーマーと呼ばれるようになったのだろう。
対して、ビッグバン。不等間隔爆発のエンジンをさして言う。
祭り太鼓?のような排気音となり、今イチ快感度にかけるフィーリングである。
鼓動感なんていう都合のいい言葉もあるにはあるのだが。。。。(苦笑)
その野太い排気音から、宇宙創成のビッグバンに引っかけたネーミングとなったのだろう。
この二つにおける優劣は、状況に応じて変化するが、近年の2輪ロードレースでは総じてビッグバンの方に軍配が上がっているようだ。
その理由を説くキーワードは
パワーコントロール性
である。
そしてそれを理解するためには
タイヤの能力円
についての基礎知識が必要となる。
タイヤのグリップ力というのは、一定の面積、圧力という条件下に於いては、一定の限界が有り、その方向性は無い。
机に消しゴムを押しつけているときに、前後に動かそうが左右だろうが、斜めだろうが、消しゴムと机の間の最大摩擦力=最大グリップ力は同じなのである。
イメージとしてはこんな感じ。
【前提条件その1】一定の条件下の最大グリップ力は方向を問わず一定である。
次にコーナリング中のタイヤを想像して見よう。
ある瞬間に於いてタイヤにかかる力は、遠心力に逆らう力、すなわち旋回中心に向かう力と、加減速に伴う、タイヤの前後方向の力の両方の成分が存在する。そしてその合力ベクトルの大きさはタイヤのグリップ限界を超えることはない。
逆に言えば、合力ベクトルの大きさがグリップ限界を超えた瞬間に、タイヤが滑ると言うことだ。
下の図を見て欲しい。
左から順に
・ブレーキングしつつマシンを倒しこむ瞬間
・クリッピング付近。アクセルは全閉、わずかにエンジンブレーキが残っている瞬間
・コーナーからの脱出時、まだマシンは寝ているがアクセルを開けたして加速していく瞬間
を模式的に表している。見比べると理解できると思う。
コーナーの侵入時にハードブレーキを引きずりながら、フロントタイヤをこじるとあっという間にフロントからこけることが感覚的に理解できると思う。
また、フルバンクで遠心力が最大になっているときには、タイヤのグリップ力は出来るだけ横方向に使ってやらないと、遠心力に負けてタイヤがスリップしてしまうことも想像できるはずだ。
コーナリング中にアクセルを開けるのが早すぎると遠心力と加速力の合力ベクトルが、タイヤのもつ最大グリップ力を超えてしまい、あっという間にリアが横スライドをはじめる。
したがって、実際のライディングでは遠心力の減少にあわせてアクセルを開けて加速方向にタイヤのグリップ力を振り分けてやる必要があるのだ。
バイクに乗る人ならば無意識のうちにやっている行為だが、何となく理解できると思う。
フルバンク時に加速も減速もしない「パーシャル」状態を保つことの意味がわかるだろう。
マシンがまっすぐ立っているときならば、ブレーキングだろうが、加速だろうが、少々滑っても転倒することは無いかもしれないが、どちらにしてもタイヤを無駄に空転させて消耗すると言うことも理解できるだろう。
実際にはタイヤにかかる荷重は、刻一刻と変化するし、接地面積だって変わるのでそんなに単純なものでは無いのだが、わかりやすくモデル化すると上記のようになるのだ。
ライディングテクニックの解説で、
荷重移動をうまく使い、タイヤをつぶしてトラクションさせる
とよく言うが、イメージがわくだろうか?
荷重をあげればグリップの限界そのものが上がるからである。(消しゴムをより強く押しつけた方が動きにくいのと同じ)
前置きが長くなったが、ここからがようやく
スクリーマーvs.ビッグバン
の本質的な違いの解説となる。
スクリーマーは等間隔爆発だと書いた。
と言うことはビッグバンよりはスクリーマーの方がクランクシャフトが「丸く回る」のである。
もっと端的な表現をするならば、
回転変動が少ない
と言うことになる。
燃料を爆発させてそのガスの力を利用してピストンを押し下げ、クランクシャフトを回すというのが、レシプロエンジンの基本構造だ。したがって、クランクシャフトの回転速度は一定では無く、ガス圧を受けている間は速く回ろうとし、ガス圧がなくなると惰性で回るだけなのでだんだん速度は遅くなる。
これが多気筒エンジンの場合、4気筒なら4つのピークをもつ速度変化があるのだ。ピークの間隔が均等な分だけスムーズに感じる。
要するに、誤解を恐れずに言い切るならば、
・多気筒であればあるほど・等間隔爆発であるほど
回転変動が少なく、モーターのような回転をするのだ。
そしてタイヤグリップの限界で走っているときにアクセルを開けようとした場合を考えてみよう。上述の様にエンジンのトルク、出力はモーターのように一定に出ているわけではなく、回転変動を伴いながら、トルクも変動しているのである。
そしてトルクのピークがタイヤの能力限界を超えたとき、瞬間的に微少なスリップが発生することになる。
物理の授業で習ったことがあると思うが、静摩擦係数(静μ)と動摩擦係数(動μ)と言う言葉がある。
タイヤにたとえると、グリップしているときとスリップしているときと言うことになるが、一般に静μよりも動μの方が小さく、タイヤの場合も例外では無い。
すなわち、グリップ限界(すなわち静μの限界)を超えた瞬間にタイヤはグリップを失い、スピン、もしくは横スライドをはじめる。そしてそれを止めるには動μの限界以下までタイヤにかかる力を下げないとならないのだ。
コーナリング中にタイヤがずりっと来た瞬間に
・とっさにバイクを立てる
・アクセルを閉じる
のどちらか、あるいは両方の操作を無意識にすると思うが、バイクを立てるのは回転半径を大きくする、すなわち遠心力を小さくする効果があり、アクセルを閉じるのはそのままずばり、駆動トルクをさげることに他ならない。
つまり、どちらもタイヤにかかる合力ベクトルの大きさを小さくする効果があると言うことだ。そうすることでタイヤのグリップ限界以下に戻すことで、スリップあるいはスライドを止めるのだ。
下の図を見て欲しい。
左はスクリーマー、右はビッグバンのエンジン回転変動(=トルク変動)のイメージを表している。
スクリーマーでは山谷の差がビッグバンよりも小さく、その間隔も狭い。
ピークがグリップ限界を超えた瞬間にタイヤのスリップが起きると書いたが、そのとき、どんなに素早く反応したとしても次のピークまでにアクセルを閉じることは人間の反応速度ではまったく持って不可能である。したがって一定時間、スリップしている状態でも転倒しないように堪え忍びながら、アクセルを閉じてグリップが回復するのを待つ以外に手立てはないのだ。
そしてそのピークが平均的かつ連続的に来るスクリーマーの方が限界を超えたときに一気にタイヤがスリップしやすく、かつ、限界を感じ取るのが難しいのだ。
これに対してビッグバンは山谷の差が大きい分、ピークが限界を超えたときの谷部分の出力はスクリーマーよりも低く、かつ、その周期が長いため、限界を感じ取りやすいというのが、もっともらしい理屈なのだ。
このあたりまで来ると、一見科学的なようで実は感覚的な評価が入ってくるため、すべてロジカルに説明がつくわけではないが、結果ありきで理論を構築するとこうなるわけである。
古い話で恐縮だが、グランプリの最高峰クラスが2サイクル500ccだった時代。
ビッグバンエンジンが各社行き渡った頃に当時の王者M・ドゥーハンがあえてスクリーマーを選択した。高いコントロール能力が求められるが、山谷の差が小さいと言うことは平均値としてはより高い出力(=トルク)を使うことが出来るため、己のコントロール能力に自信があるドゥーハンはライバルに差をつけるため、あえて「むずかしい」スクリーマーを選んだのだろう。
まあ、感覚的にもう少しわかりやすく言うとオフロードバイクがある。
モトクロッサーなどはその軽さも重要なファクターとなるため、どのメーカーも単気筒エンジンとなるが、パリダカールラリーのような長距離を走るラリーマシンをイメージして欲しい。
かつて常勝を誇ったNXR750はVツインエンジンだし、最近のKTMだってそうだ。大昔のBMWはボクサーツイン。
モトクロスの様なタイトコーナーや大ジャンプがほとんど無いラリーレイドでは、ストレートスピードが絶対的に有利に働くので、最高出力を出しやすい多気筒エンジンの方がその意味では有利なはずだ。
しかし、3気筒以上のエンジンはほとんど無い。
かつてヤマハが直列4気筒エンジンを搭載したスーパーテネレというマシンを投入した時期もあったが、最高速には優れるもののレースの結果としてはたいした結果は残せなかったはずだ。
もちろん、多気筒ゆえのマシン重量のハンデや、いろいろな要素があったはずだが、いわゆるスクリーマータイプのエンジンがテネレ以降も現れない一因は、上記のスクリーマー vs. ビッグバンの違いもあるに違いないと思っている。
いかにトップスピードに優れていても長距離を走るラリー故に、総合的な性能ではコントロールしやすいエンジン特性の方に分売が上がるということなのだろう。
おまけ
ビッグバンとスクリーマーという違いの話では無いが、ある意味似ているのが、現在のMotoGPマシンにおける電子制御システム。
昨シーズン、チャンピオンに返り咲いたケーシー・ストーナーは、コントロール能力の高いライダーと言われている。それ故に、電子制御デバイスは「効き」をどんどん弱くする方向のセッティングをするという記事を読んだことがある。
似たような話である。(^^)v
以上で、本日の講義を終わる。
きり~つれ~い
みなさん、さよ~なら。(^_^)/~~