再放送 彫刻家 有馬寛子さん 第2回「自然や生命の循環から表現が始まりました」 | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みんなの学び場美術館 館長 日下育子です。
        
今日は、素敵な作家をご紹介いたします。
彫刻家 有馬寛子さんです。



有馬寛子さん 

以下、2016年3月の再放送でお届けいたします。
前回、菅原 睦さんのご紹介でご登場頂きます。

菅原 睦さん 

第1回  第2回 第3回 、 第4回  、 第5回  

 


有馬寛子さん
第1回 「自然の中で育ち、自然の風景がテーマです。」

第2回目の今日は、有馬寛子さんの制作テーマと造形表現の変遷についてお話をお聞かせ
頂きます。 最初は自然や生命の循環というところから表現が始まり、やがて海辺と陸の境界に
いる生き物の形をモチーフにされるようになったそうです。 

どうぞお楽しみ頂けましたら幸いです。

********************************************



2008_1
2008_1 「命を得た風景」       
125×125×175cm  石、木   
2008年







2008_2

2008_2 「打ちよせる風景」      
100×75×65cm   ベニヤ合板 
2008年








2008_3

2008_3 「つくろいの景色」      
60×60×85cm    伊達冠石  
2008年







2009_1

2009_1 「繋がる風景Ⅰ-海と山-」  
166×150×130cm  ベニヤ合板 
2009年






2009_2

2009_2 「繋がる風景Ⅱ-山と川-」  
130×90×85cm   伊達冠石  
2009年






2010_1
2010_1 「こだます囁き」       
135×220×150cm  楠    
2010年






2010_2
2010_2 「あらわれた風景」      
25×18×16cm    楠     
2010年






2011_1
2011_1 「あらわれた風景」      
90×320×100cm   栓、楠   
2011年





2011_2
2011_2 「あらわれた風景-隆起-」  
45×45×60cm    朴     
2011年




2011_3
2011_3 「海辺の軌跡」        
40×35×35cm    大理石   2011年





日下
自然の風景を彫刻作品にして表したいというお話でしたが、そのテーマに取り組まれている
経緯をお聞かせ頂けますっでしょうか。 やはり自然を見てきているからかしら。


有馬寛子さん
そうですね。最初の頃は自然の風景を表すためにどういう形を作ったらいいかなと悩んでいた
時期があって。 一番最初の頃の2008年のものは、自分の中では自然の循環というか、生命の
循環みたいなことを考えながら作った作品で、そこから木のような人の体のようなものをモチーフ
に使ってみました。

2008年の2番目になると積層したベニア板使っていますが、地形図を見るのが好きで、等高線の
ある地図を結構見ていたので、それを形に表せないかなと思って作ったのがこういう形なんです。


日下
すごく素敵ですね。面白いと思います。
べニア板を圧着して塊にするのもご自身でされるのでしょうか。



有馬寛子さん
はい、そうです。
そしてグラインダーと、ノミで作ります。最初はチェーンソーとノミとを使って粗取りをしていって。
上は雲の上の世界のようなイメージで作っているんですけれども、上のお皿のような部分の
ところは別につくっておいて後でつけています。


日下
面白いですね。 伊達冠石で彫っている2008の3、それと2009の2も面白いですね。
洗練されているのは後からの方だけど、何か最初の素朴な感じがすごく面白いと思って見て
いました。



有馬寛子さん
ありがとうございます。
水と、陸と海と言うか、川というか、水と地上の境界線の形をだんだん探り始めてた時期で、
それが2009年の形につながっていっているんです。
川が流れた形がまた上がっていって、また雲の上からまた水が流れ落ちてくるようなイメージを
作っていっています。


日下
わぁ~、そういうイメージなんですね。
2009年の作品は、国画展で賞を獲られた作品でしたね。おめでとうございます。



有馬寛子さん
はい。


日下
2008年から2009年の作品って、かたちから流れが感じられてものすごく水の感覚があると
感じます。有馬さんの作品は、年ごとに結構移り変わりが見えますね。



有馬寛子さん
そうですね。


日下
2010年から2011年になってくると、貝とか、貝の断面が山になっている感じとか、すごく稜線の
意識が感じられますね。
稜線の美しさは、山と貝の共通したところだと思いますが、これらの作品にはどんな意識で向かっていかれたのでしょう。



有馬寛子さん
この頃は、木彫を本格的にやり始めた時期なので、まずは、木の素材感とか特性とかを理解する
っていうのから始まって、2010年くらいから元々のテーマだった自然の風景から特に山のかたち
というのがテーマになっています。

最初は具体的な形ではなく、ただの丸い形やおまんじゅうみたいな形を、ずっと2009年の4月
くらいから試行錯誤していたんですけれども、なかなか形にならなくて、その頃に新しい形、
借りる形として削り始めたのが貝の形で。

それは、実際山に行ったり海に行ったりするのが好きで、そこで水と土の境界線上で生きている
生き物の形を見ていて、貝が境界線上にいる生き物の形で、なおかつ環境に沿って生きている
形だなと思って、それをモチーフにしようと思って取り入れ始めました。

最初の頃は、二枚貝だったり、巻貝だったり、2011年の1番目のとか複雑な形を、山がどんどん
大きくなっていく、隆起するような形っていうのを探していて、2011年の2の方だともうちょっとシン
プルな形になっていくんですけれども。

巻貝の2010年、2011年のは自分の中でも挑戦的に作っていたもので、細かい形なんですが
なかなか自分の思う形にならなくて、どちらかというと今までのような丸みのある形の方が表現
しやすいのかなと思い始めて、そのあたりではノミの跡とか細かい面の出し方に気を付けていま
した。

そこから、2011年の2の状態からちょっと石彫の時を思い出したような緩いカーブを作っていく形を
やり始めて、ちょっと形がしっくりくるようなものが出てきました。


日下
素晴らしいですね。この稜線を表現したい気持ちってなんかすごくわかる気がします。
こういう貝などは、本当に神様は良くやってくれたっていう感じの美しさがありますね。
私自身はまだ作ったことはないですが。
今日はとっても素敵なお話をありがとうございました。



2013-2
2013_2 「この先の丘で」       
50×20×15cm    大理石   
2013年

****************************
編集後記

2015年8月20日~09月17日に全5回で掲載した彫刻家 菅原 睦さんのご紹介により、
今回初めて有馬寛子さんにお話をお伺いしました。
私は芸術大学の博士課程まで学ばれたアーティストには初めてお話をお伺いしましたが、
とてもしっかりと丁寧に思索して制作をされている様子が感じられて、また作品もとても美しくて
感動しました。

有馬さんは東京芸術大学大学院で「生活を見つめる場から創造性へ―北方性教育運動と生活
版画教育運動を通して―」という博士論文も書かれています。
着眼点がご自身の制作の実感から生まれているところがとても素晴らしいと感じました。
若手女性彫刻家として、これからの創作活動がとても期待されます。

次回は制作テーマと造形表現の変遷について、有馬さんの制作活動の後半、最近までの内容を
お届けします。

どうぞお楽しみに。


****************************

◆ 有馬寛子さんが掲載されているWEB

◇2009年 第83回国画会彫刻部奨励賞 
 有馬寛子さんのページ

◇有馬寛子さんの博士論文サマリー(要約)
 

◆ 有馬寛子さんが出品される展覧会 (※現在は終了しています。)
 ◇国展 
 ・2016年4月27日(水)より5月9日(月)まで。(休館日なし)
・会場=六本木 国立新美術館  
・主催 =国画会  

 ◇青山表参道の美容室の展示
  2016年3月6日~5月7日GIRLS BRAVO!! NORA Journey×拝借景/東京NORA Journey
  NORA Journey HP  
  拝借景HP

 ◇岩手のチャリティ展
  けやきチャリティ小品展
  12月予定 岩手県花巻市東和町

◆有馬寛子さんがご勤務されている秋田公立美術大学  とその美術教育センター

 

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

本日もご訪問、ありがとうございました。

 

★無料メルマガ【1114(いい石)通信】
メルマガ登録のお申し込みは
 ★コチラから★ 

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

★☆ アーカイブス ☆★

学び場美術館登場作家リスト

学び場美術館登場作家リストⅡ  

学び場美術館 登場作家リストⅢー2014
学び場美術館 登場作家リストⅣー2015  

学び場美術館 登場作家リスト ⅴ ―2016

学び場美術館 登場作家リスト Ⅵ ―2017

 


人気ブログランキングへ ←ポチッとおしてね! 

↓こちらも 
にほんブログ村← ポチっとおしてね!