バイバイ、ブラックバード//伊坂幸太郎 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
バイバイ、ブラックバード/伊坂 幸太郎

¥1,470
Amazon.co.jp


 「バイバイ、ブラックバード」


 伊坂幸太郎、著。 2010年


 初期の伊坂作品は面白かった。
最近は…どうもマンネリ気味か?
単なる構造小説に堕している感がなくもない。

 好きな作家なのですが、いささか倦んでいます。
それでも、やはり、時折、読みたくなる。
心の底に抱えた熱を、爆発させることなく、醒めた視線で…ある種、ハードボイルドでスタイリッシュな作品に仕上げる…、そんな伊坂氏の作風にはやはり魅力があります。

 本作『バイバイ、ブラックバード』は、実に伊坂さんらしい作品でした。
主人公は、金銭トラブルにより、<あのバス>で二週間後に、なにやらとんでもない場所に連れ去られるらしい。
そこには、とてつもなく過酷な運命が待ちかまえているようです。

 彼には、逃亡防止のため見張りが張り付いている。
それは、マツコ・デラックス(miroku的イメージで)のような女性で…。
あるいはゴメス?
という、凄い女で、性格は凶悪で、体格はゴリラで、口も悪くて…とにかく、なんか、スゴイ。

 で、主人公は、現在お付き合いしている5人の女性とお別れがしたいと…。
5人…5股です…。
でも、ぷれいぼおいとか、チャラ男とか、いしだじゅんいちとかという訳ではなく、本人的には5股という意識はないらしい。

 この主人公というのが、何というか凡人…大凡人で、憎めない。
悪意はないし、ちゃめっけもあれば、実に優しいところもある。
真面目…基本的には真面目なのでしょうね。

 ただ、現状認識とか…甘い。
まぁ、人生を甘く見てるのでしょうね。
人間的には、ある種の魅力があるだけに、ある意味ハタ迷惑な奴かも知れない。

 で、まぁ、彼がそれぞれの女性にお別れをいうという5篇の物語プラス・アルファな短編集。
女性たちも個性的。
一人キャッツアイとか、女優とか、子持ちの女性とか…。

 それぞれ、どこか変な人なのだけれど、皆魅力的な女性ばかり。
ユニークです、皆。
個性的って良いよね♪

 内容は違うけれど『死神の精度』に似た作品です。
今回の死神はマツコ・デラックスな感じですけどね。
構成的にはすごく似てます。

 まぁ、最後はバスでどこかに連れ去られる運命ですけどね…。
何処でしょうね?
ギアナ高地?
機械の星?(…とすれば、実に太ったメーテルだな…)

 日常離れしていて、でもハートフルで、奇跡は起こらないけれど…。
奇跡は人の心の中にあるものだから。
そういう意味では、最後に大きな奇跡が起こる…という物語。

 メルヘンですね。
メルヒェンとも言う。
伊坂作品は、常に寓話です。

 大凡人の奇跡の物語かもしれない。
最後は…さて…。
それは読者のお好みで…という作品。

 面白かったです♪
なんか、久々に“らしい”作品を読んだ気が…。
ラストはもう少しなんかあっても良かったような気はしますが…、これも悪くないな、と。

 楽しめました♪