旧怪談(ふるいかいだん) // 京極夏彦 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
旧(ふるい)怪談―耳袋より (幽ブックス)/京極 夏彦
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 「旧怪談(ふるいかいだん)」


 京極夏彦、著。 2007年。



 いつかは読みたいと思っていた「耳嚢(みみぶくろ)」。

そしてご贔屓の京極さんの現代訳と来れば、これは

もう・・・スキップでしょう!


 とは言え、「これは、聞いた話なのだが」と言う、

世間話のようなものを集めた本だけに、最初はなかなか

没頭しにくかったのですが、読み進める内に面白く

なって来ました。



 夜道にうずくまる者

 便所に入って二十年

 幽霊が狐に相談

 礼儀正しい魍魎

 幽霊が作った団子

 人魂が落ちる

 猫になった奥さん


 侍のUさんがお化けを見た!


 (帯より引用)


 「耳袋」は怪談集として有名ですが、本来は江戸時代

に書かれた随筆で、とくに怪談を収集すると言う意図で

書かれたものではありません。


 この「旧怪談」は、その中から京極さんがセレクト

したものが「怪談」として書き改めてあります。

とは言え、実際には「奇妙な話」と言う方が適切です。


 例えば、便所に入った男が消えてしまって、20年後

に同じ便所から出てくる話。


 「まあ、何らかの事情があってこっそり家を出て、

それでこっそり戻ったと、そう考えるのが常識的なんで

しょうが―」

 彼の服は皆の目の前でみるみるぼろぼろになり

埃のように散り失せてしまったのだそうだ。


 猫好きの夫婦の話。

子を残して死んだ猫が、どうやら化け猫の類であった

らしく、妻に獲り付いた。


 夫が、「お前も、お前の子供も可愛がっているのに

獲り付くとはどう言う料簡だ」と問いただすと、

「この人が・・・・・・あんまり可愛がるから」。


 自分の子供の愛情が男の妻に・・・、嫉妬だと

「猫」は言う。

仕方が無いので、彼は全ての猫を捨てるしか無かった。


 「可愛がるから」と言う理由がやるせないですねえ。

判ってはいても、抑えきれぬ思いに・・・、獲り付いて

しまう。 情の深さ故、と言うのが憐れです。


 その他にも、ぞっとする話や奇妙な話のオンパレード。

実に味わいのある本でした。

これは、楽しめた一冊となりました♪