白鴉事件帳―顔のない骸 // 千秋寺亰介 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!

 「白鴉事件帳―顔のない骸」



 千秋寺亰介、著。 2004年。



 あの「怨霊記」シリーズの著者、千秋寺亰介さん

の・・・、と言っても多分ほとんどの人が知らない

のでしょうね・・・。



 まあ、要するに私の好きなあの分野の作家です。

「怨霊記」も、凄く面白いと思って読んでいる訳でも

ないのですが、神道や陰陽道などを中心とした

呪術関係の知識が豊富な作家のようで、そのあたり

が興味を引きます。


 物語も奇想天外で、なかなか楽しませてくれます。

この「白鴉事件帳」も、それなりに面白かったです。

突っ込み所も満載・・・なのですが。



 時代は昭和11年。 五・一五事件の四年後、

暗い時代です。


ある遊郭で女将が、風呂場で心臓発作を起こし

死亡する。


この店に現れた男は、純白の直衣に身を包み、

白い鴉を連れている。

男は白い長髪をなびかせ、顔に赤い烏天狗の面を

つけている。


手に持った旗差者には、「呪い、祟り、呪禁にてお祓い

申し上げ、魔除け、厄除け、滞りなくお引き受け致し

候」と大書してある。


 名は、白鴉唐十郎。 呪禁師(じゅごんし)である。

唐十郎は言う、「この家に白鴉が舞い降りたのは、

家に魔が憑いているが故。 すぐに祭祀儀礼の清祓い

にて呪禁をせねば、採り憑く魍魎の祟りにより、八裂き

にされようぞ!!」


 この店の女将は確かに変死だった。

若女将と対面した唐十郎は、烏天狗の面を外す。

そこに現れた顔は・・・、超絶美形!

(小説は便利だ、美形と描写すればあとは読者が

勝手に想像してくれる)


 「私の呪禁を受けるか」

かくして、唐十郎の魍魎封じの呪禁が始まる。

しかし、かれの呪禁は事件の真相を解明し、人の

心の闇を祓う事だった。



 まあ、「本格推理」と表紙には書いてある・・・。

しかし、伏線もなく、唐十郎の推理のみが冴え渡る

のだから、推理小説では無い。

(本格推理じゃ無いだろうが!)


 何やら、京極堂に似たスタンスだが、この作品では

実際に魍魎が存在する。

それでも、心の闇が晴れると魍魎は消滅する。

(お~い、呪禁術はどうした? 熊野神宮の裏って言う、

呪禁術の家系だろう? 探偵かお前は?!)


 確かに、事件はとても意外性があり、まあ面白

かったのですが・・・、中途半端やなあ・・・。

このあたりが、私が「何となく読んでいる」と言う

所以です。


 まあ、気分転換、気晴らしに呪術知識のおまけ付き

と言ったところでしょうか。

この作者の作品の雰囲気は結構好きなのですが、

「もう一息」ですねえ・・・。