グラスホッパー // 伊坂幸太郎 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
グラスホッパー (角川文庫)/伊坂 幸太郎
¥620
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 「グラスホッパー」


 伊坂幸太郎、著。 2004年。



 伊坂幸太郎版「罪と罰」と言えなくもない。

作品中にも「罪と罰」は小道具的に登場します

が、この作品のモチーフにもなっているようです。


  

 妻を殺された元教師の鈴木は、復讐のため

犯人の父親が経営する会社に入社する。

この会社、どうやらかなり非合法行為を行って

いるらしい。


 ところが、ある日、犯人が「押し屋」とよばれる

殺し屋に突き飛ばされて、自動車に轢かれるのを

目撃してしまう。


 鈴木は、「押し屋」の正体を知るために、彼の

後を追う。


 一方、相手を自殺させると言う、ナチュラルな

催眠術師のような殺し屋「鯨」(彼は常に「罪と罰」

を携帯して何度も読んでいる)、ナイフ使いの殺し屋

・蝉もそれぞれの思惑を胸に「押し屋」の行方を追う。


 それぞれの思惑が交錯して、物語は展開されて

行く。



 伊坂作品としては珍しい「伊坂流・クライム・ノベル」

とでも言うべき作品です。

そしてまた、「伊坂版、罪と罰」です。


 伊坂さん得意の「ドミノ倒し」的な構造ではなく、この

作品は結構ストレートに物語が展開されています。


 勿論「伊坂版、罪と罰」と言っても、そこは「深刻な

問題は軽く話す」と言うポリシーの伊坂さんですから、

テンポ良く読み進める事が出来ました。


 徐序に現実から乖離して行く「鯨」の心理。

軽口をたたきながらも「自己」を確立しようともがく(?)

「蝉」・・・、蝉は地上に出ると(自己を確立すると)

と言う、暗示されたネーミング。


 謎に包まれた「押し屋」と鈴木の不思議な交流。

そして、疾走する物語。

全てが楽しめました。


 さらに、鈴木と彼の妻とのエピソードは、風変わりで

ありながら感動的ですらありました。

(しかし、この作品には「犯罪者」しか出てこないの

だけどね。)


 文句なしに面白かったです♪

満足感を味わえると、実に幸せですねえ♪