幽霊狩人カーナッキの事件簿 // W.H.ホジスン | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
幽霊狩人カーナッキの事件簿 (創元推理文庫)/W.H. ホジスン
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 「幽霊狩人カーナッキの事件簿」


 ウイリアム・ホープ・ホジスン、著。 

    1910~1947年。

    (創元推理文庫2008年初版)



  幽霊狩人は原題ではゴースト・ファインダーとなって

いて、私としてはこちらの方が好きです。

カーナッキは、ゴースト・バスターではなく、むしろ探偵

や研究者に近い設定です。


 悪霊が出現すると、真剣にビビっているカーナッキは、

スーパー・ヒーローではなく、探究者として勇気をふり

絞り、怪現象に立ち向かいます。


 この本は、短編集であり、十編の作品が収められて

いますが、他のホラー系の作品と大きく違う点は、

全ての事件が悪霊がらみな訳では無く、悪霊の仕業

に見せかけた事件をカーナッキが見破って解決する

ものが含まれている事です。


 この作品群が執筆されたのは20世紀初頭のイギリス

であり、科学とオカルトが同居する時代性を反映して

いるからかも知れません。



 カーナッキ。 電気式五芒星と古文献を駆使しオカルト

と科学を混合させて怪奇現象に挑む、名うての「幽霊

狩人」。

彼が事件を解決するたび、わたしたち友人は招かれて

冒険譚を堪能するのだ。 被害者しかいない空間での

死傷事件、不気味な口笛が響く部屋での怪談等、

名探偵ホームズ譚と同時期に書かれその怪奇版と

して名高いシリーズ全作を新訳。 本邦初訳の

資料的作品1編を含む10編。

 (文庫裏表紙より引用)



 霧のロンドン、切り裂きジャック、ホームズが活躍する

時代・・・、科学とオカルトのこの時代に、あのC.ドイル

ですら後年にはオカルトに傾倒していったと言います。


 この作品集にはそんな時代の空気が漂っており、

一種独自な雰囲気があります。

全十作、「?」な作品もありますが、現代の我々が読ん

でもゾッとするものも含まれています。


 「電気式五芒星」とは、真空管を使った色彩を利用して

結界を作りだすための装置ですが、この装置の設定も

現実を超越したスーパー・マシンではなく、当時の科学

の枠に収められた設定になっており、現代人から見ても

その効果はともかく、「納得」の範囲に収められています。


 さらに、オカルト的な部分では、かの「クトゥルー神話」

のように、独自の古文献や魔術体系を構築しており、

雰囲気を盛り上げる効果が練り上げられています。


 なかなか興味深い作品でした。

けっこうゾッとする作品もあり、時代の雰囲気も味わえて

楽しめました。