イノセンス // 山田正紀 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
イノセンス After The Long Goodbye (デュアル文庫)/山田 正紀
¥700
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 「イノセンス

  After The Long Goodbye 


 山田正紀、著。 2004年。



 山田正紀さんが、「イノセンス」をノベライズしていた

とは知りませんでした。 最近、行きつけの古本屋で

見つけて早速読んで見ました。


 私たちの世代にとって、山田正紀さんは思い入れ

のある作家です。 私は彼の「火神(アグニ)を盗め」

を読んで、たちまちファンになったのを思い出します。


最近、けいちゃっぷさんなどの影響もあり、山田作品

を、またぽつりぽつりと読んでいます。


 その山田正紀さんが、どんな「イノセンス」を書くのか、

非常に興味があったのです。



 この山田版「イノセンス・After The Lonng Goodbye」

は、アニメーション映画「イノセンス」そのものを

ノベライズしたものではありません。


 まず、押井守監督作品の「攻殻機動隊」があり、

その続編とも言うべき「イノセンス」があります。

「イノセンス」は、言わば「攻殻機動隊2」と位置づけ

られるアニメーション映画です。


 山田版「イノセンス」は、1と2の間に位置する作品、

言わば「攻殻機動隊vor.1.5」とでも言うべきものです。


 主人公バトーは公安九課(対サイバー・テロ部隊)に

属するサイボーグで、体のほとんどが機械化されて

います。


 彼は「イノセンス」で失った「素子」に対する感情を

処理しきれずに生きています。

その感情が、何であるかすらわからず・・・。


 彼は、愛犬のバセットハウンド・ガブと暮らしている。

ガブのみを友として生きていると言っても良い。

けれど、彼は自分のガブに対する感情が何であるか

それも知らない・・・。


 ある日、ガブのドッグ・フードを買いにいった帰りに、

彼は突然自動車のナビゲーション・システムと同調

した自分の電脳がハッキングされそうになる。


 危機を回避するために、彼は瞬時に自分の電脳

を初期化する。 さらに、全てのデーターを再度

ダウンロードして、彼は危機を乗り越える。


 しかし、帰宅した彼を見るなり、ガブは家を出て

言ってしまう。

完全に、元通りのハズの彼の魂を見失ったかのよう

に・・・。


 ガブを探し求めた彼は、ガブが交差点で攫われた

と言う情報を得る。

しかも、この都市で他にも犬が攫われると言う事件

が多発していることを知る。


 調査を進めると、それはサイバー・テロリストの

「ブリーダー」の仕業である事が解った。

ブリーダーは、世界的ファーストフード・チェーンの

命運を握る少年の命を狙っているらしい・・・。


 それが何故、犬を攫うのか・・・?


 人の魂は、サイボーグにもあるのか?

自分の胸の中のこの感情は何であるのか?

切なく、美しい物語です。


 この作品は、「ブレード・ランナー」=「アンドロイド

は電気羊の夢をみるのか」に対するオマージュでも

あるようです。


 バトーいわく、「アンドロイドは電気羊の夢を見ない。

どんな夢も見ない」のだそうです。

作品世界の設定は「ブレード・ランナー」の世界に似た

世界であるようです。


 この、頽廃的で妖しい世界を彷徨い歩いた果てに、

サイボーグは「愛」を見つけることが出来たのか・・・?

極度に感情を切り捨てて生きて行く定めの彼こそが、

・・・イノセンス。