博士の愛した数式 // 小川洋子 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
博士の愛した数式 (新潮文庫)/小川 洋子
¥460
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 「博士の愛した数式」


 小川洋子、著。 平成十五年。



 君が~いた夏は 遠い夢の中~♪

そんな歌を思い出します。

「君がいた夏」の想い出は、いつも儚く切ない

そして美しい物語であるようです。


 これは、記憶障害の「博士」と、少年とその母親

の、「夏の想い出」です。



 「僕の記憶は80分しかもたない」博士の背広の

袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた

・・・・・・記憶力を失った博士にとって、私は常に

「新しい」家政婦。 博士は「初対面」の私に、

靴のサイズや誕生日を尋ねた。 数字が博士の

言葉だった。 やがて私の10歳の息子が加わり、

ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに

変わった。 あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の

物語。 第1回本屋大賞受賞。

 (文庫裏表紙より引用)



 最近ますますノンジャンル♪

節操無く、何でも読んでる私です。

しかも、今月は現在2冊先行♪

つまりすでに16冊読んでいる事になる。

ついに壊れたか?


 まあ、何冊読もうが、それでどうなるモノでも無い。

偉い訳でも無い。

あえて言うなら、ブログのネタに苦労が無いくらい

の事なのですが・・・。


 いやあ、皆さんのブログにお邪魔していると、面白

そうな本ばかりで、読みたいものが増える一方です。

読んでも読んでも、本が増えて行くという「怪奇現象」

が・・・。


 ああ、脱線しました。

つまり「博士の愛した数式」は、普段あまり読むこと

の無いジャンルの作品なのです。


 でも、人様のブログに触発されて読んで見ました。

これがまた、良い作品で・・・♪


 「博士」も私(家政婦)もその息子も、それぞれに

欠落を抱えた存在なのですが、それぞれにそれは

仕方ない事であると思って生きて来ました。


 この三人が出会う事により、大切な何かに気づき、

欠け落ちた何か大切なものを与えあうことで、彼ら

は満たされて行く。


 彼らの奇妙な日々は温かく、優しさに満ち溢れた

夏のひと時だった。

「与える」ことだけで満たされて行く・・・。


 やがて、この輝きに満ちた夏が過ぎ去っても、

「思い出」は哀しいものにはならない。

そして、風化されることも無い。


 「与えられる」ことではなく、「与えること」によって

彼らは確かな何かが自分の内に満ちて行く事に

気付いたからだろう。

それは、決して失われることの無い「夏の光」なの

だから・・・。


 押しつけの感動ではなく、しみじみと潤いに満ちた

温かさに包まれた読後感でした。

「与えること」で充足する心・・・、イノセンス。


 良い物語でした。