駿女(しゅんめ) // 佐々木譲 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
駿女 (中公文庫)/佐々木 譲
¥940
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 「駿女(しゅんめ)」


 佐々木譲、著。 2005年。



 年間何冊か、「歴史・時代小説」を読みます。

最近ではこのジャンルもちょつとしたブームのようで、

多くの作品が出版されているようです。


 最近では、「乱世疾走」や「信長の棺」などを

読みましたが、「面白かったけどいまひとつ」な感が

拭えません。


 この「駿女」は、久々に文句無しに面白かった作品

でした。



 奥州平泉のさらに山奥深い糠部の地に育った馬の

巧みな少女由衣は、従弟の八郎丸や兄弟達と

ささやかながらも、幸せに暮らしていた。

しかし従弟だと思っていた八郎丸が実は義経の落胤

であったことから、頼朝の奥州平定の戦に巻き込まれて

いくことになる・・・・・・。

 (文庫裏表紙より引用)



 この物語は、義経の死から始まる。

さらに、奥州・藤原氏の滅亡を経て、奥州が完全に

頼朝に平定されるまでの戦いを描いた作品です。


 そして、同時にこれは「義経伝説の完結」までを

描いた作品です。


 鎌倉勢に追われ、奥州に落ち延びた義経は、藤原氏

の裏切りによってその生涯を終える。

歴史的事実はそうであっても、日本人にとっての

「義経伝説」はそこでは終わらない。


 ひどい説だと、義経は大陸に逃れてジンギスカンに

なる。

この作品では、義経は死ぬが、その落胤が残されて

いたと言う設定です。


 やがて、彼は奥州の旗印となって頼朝の軍勢と

戦うことになる。

そして・・・。


 この作品では、歴史そのものが変わることは有りま

せん。

実際の歴史の裏に、上手く虚構の世界が入り込み

実に面白い作品に仕上がっています。


 主人公の由衣という少女は、馬が巧で弓の名手です。

この少女は、常に八郎丸と共に闘います。

彼女の勇気と明るさが、暗くなりがちなこの物語を

照らします。


 そして・・・。


頼朝の死のありようについては、後にいくつもの言い

伝えができた。 落馬による死であることも否定する

伝説もある。 (中略)

ただし、奥州の民の側には、長いこと伝えられた話

がある。 つまり・・・・・・ (了)


 ここに、義経伝説が完結する。

私たちの願望を裏切ることのないエンディングがここに

ある。 しみじみと・・・、良かった。


 色鮮やかに、激しく儚い物語でした。

大満足の読後感。

最近読んだ「歴史・時代小説」の中では、私にとって

この作品は・・・、白眉でした。