長い腕 // 川崎草志 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
長い腕 (角川文庫)/川崎 草志
¥620
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 「長い腕」


 川崎草志、著。 2001年。



 かおりさんのブログで紹介されていて、

面白そうなので読んで見ました。

いや~、かおりさん、面白かったですよ!


  

 ゲーム制作会社で働く汐路は、同僚がビルから

転落死する瞬間を目撃する。 衝撃を受ける彼女

に、故郷・早瀬で暮らす姉から電話が入る。

故郷の中学で女学生が同級生を猟銃で射殺する

という事件が起きたのだ。 汐路は同僚と女学生

が同一のキャラクターグッズを身に着けていたこと

に気付き、故郷に戻って事件の調査を始めるの

だが・・・・・・。

現代社会の「歪み」を描き切った衝撃のミステリー!

第二十一回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

 (文庫裏表紙より引用)



 主人公の勤務する(していた)会社で開発中の

ゲーム作りを通じて話題になる、画面上の「歪み」

とプレイヤーとの相関関係。


 ネット社会の「歪み」と現実社会との関係。

現実社会の「歪み」。

早瀬の昔の有名な大工「敬次郎」の建てた家屋

の「歪み」。


 そして、過去の歪んだ事件と、そのために生じた

「歪み」。

人の心の「歪み」とそれを生み出した地域社会の

「歪み」。


 この作品は、幾重にも重なる「歪み」の物語です。

その全てが「縁」であり、「果」へと連なって行く。

とんでもない量の伏線が絡まり合い、エンディング

に雪崩込んで行きます。


 テーマとしては、非常に重いものがあるのですが、

この作品には展開の妙があり、エンターテイメント

としてのテンポの良さがあるために、一気に読み

通すことが出来ました。


 300ページほどの作品ですが、これほどの内容

であれば、じっくりと描き込んで倍以上の量のもの

にすることも可能だったと思います。


 執筆する上で切り捨てた情報量は多大なもの

だっただろうと想像出来ます。

厳選された素材を丁寧に処理してあるように感じ

ました。


 それ故に、その読者の目には触れない切り捨てた

部分がバック・ボーンとなって、作品に奥行を与えて

いるようです。


 本当に引き込まれる、面白い作品でした。

読んでいて、「あると思います!」と思ってしまう

部分が怖いですねえ・・・。