ちょっとピンぼけ // ロバート・キャパ | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
ちょっとピンぼけ/R.キャパ
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「ちょっとピンぼけ」



 ロバート・キャパ、著。 1956年。



 先日、行きつけの古本屋で入手して、

読了。

20世紀の伝説の写真家、キャパの手記です。



ああ・・Myu’s Style / とにかく本が好き!


 Robert Capa



1913年ハンガリーに生まれる。

ユダヤ人。 本名アンドレ・フリードマン。

祖国を捨て20歳でカメラマンとなる。

報道写真の古典といわれたスペイン内乱の

「斃れる瞬間の民兵」はじめ、多くの写真を

残したが、1954年5月、ベトナム・ハノイ

南方の戦場で地雷に触れて死亡。

41歳であった。

(著者紹介より引用)




ああ・・Myu’s Style / とにかく本が好き!
(斃れる瞬間の民兵)



 この手記には、主に第二次大戦のヨーロッパ

での出来事が綴られている。

当初は、祖国を捨てたキャパの国籍等の問題

で、従軍取材そのものが非常に困難であった

ようだ。



 そんな時、キャパは呑んで呑ませて担当者

と意気投合し、強引に戦場に押し掛けるように

従軍する。



 写真を新聞社に見せさえすれば、どうにか

なるだろう。

そんな風に考える。


 過剰なヒューマニズムも、ナショナリズムも

彼は振りかざさない。

思いは、・・・あるだろう。

だが、手記に綴られることは無い。



 ジャーナリストとして、従軍し取材する。

それが、この大戦での彼の戦争であったようだ。



 彼は、兵士たちと共に飲み、ポーカーで賭け、

戦場に赴く。

手には、カメラを携えて、彼の戦場に・・・。



 恋もすれば、馬鹿騒ぎもする。

仕事とパスポートのために、ハッタリもかます。

等身大のキャパがここにいる。


 小説でもなければ、エッセーでもない、

ただ手記として綴られるキャパは、実に魅力的

な人物だ。



 思えば、ナチスと戦うこの大戦は、ジャーナリスト

キャパにとって、「幸福な戦争」であったかも知れない。

ここには、戦争の是非を問う必要のない戦場が

あったからだ。



 毎日が命懸けで、悲惨さが日常であっても、彼は

ためらいなくカメラを向けることが出来ただろう。

何度も、最前線に赴き、ノルマンディで上陸戦に

まで同行しても、彼はここでは死なない。



 彼は、その後、ベトナムで地雷により命を落とす。

かの、不幸な泥沼の戦争が彼の命を奪ったのだ。

その事に、何の理由も有る筈は無い。


 けれど、キャパの手記を読み、私は何故か

そのような「運命の皮肉」のようなものを感じました。

いささか、センチメンタルに過ぎる思いかも知れません。


 いつものように、「面白い」などと評すべき本では

無いけれど、生のキャパの一端に触れた気が

します。




ああ・・Myu’s Style / とにかく本が好き!