ミュージカル『レ・ミゼラブル』ワールドツアースペクタキュラーを観てきました。
コンサートバージョンのレ・ミゼラブルです。
東急シアターオーブにて。

 

 


コロナのせいですっかり劇場への足が遠のいていて、なんと5年ぶりの観劇。
レミゼ鑑賞自体は帝国劇場100周年記念公演以来なので14年ぶり(゚Д゚)。
日本初演から何度も観ている作品だし、英語版も映像で見まくっていたり、
音楽CDも何度も聴いているので、内容はすっかり頭に入ってます。
ただし新演出版は未鑑賞。

 

2025年8月23日12時の回。

 
当日のキャスト。

バルジャンとマリウスはアンダースタディでした。

 


以下雑感。ストーリーの微ネタバレあり。

ジャベールの力強さと声量がとにかくスゴい!
バルジャンを吹き飛ばすくらいの勢いの歌唱に圧倒される。
このヒト絶対に死なないよね、と思うほどの生命力を感じてしまい、
あの舞台のジャベールは生存しているのではないか?と思いました(笑)。
これでも褒めてるんですごめんなさい。

ファンティーヌの転落人生観が際立つ演技がすごい。
苦しそうで観ていてツラい薄幸の女性がそこにいました。

アンジョルラスの革命家的魅力と声量がすごい。
みんなを引きつける人物がしっかり表現されていました。

テナルディエとその妻の盛り上げ感がすごい。
酒場のシーンが楽しいと、観ているこちらもすごく嬉しいのです。
やっている事は最低だけどキャラクターとしては魅力的でねぇ。

アンサンブルも一体感があってとてもいい!
聴いていてとにかく安定していて安心感がありました。

とても楽しそうだったし! 

みんな声量も申し分なしで、心地よい歌に聞き惚れました。

そして何度も泣く、泣く、泣く。
何が起こるか知っていても同じシーンでまた泣いてしまう。
まず最初に司教様のシーンで泣く。
夢やぶれてでも泣く。ファンティーヌの死亡でも泣く。
別に泣けるシーンでなくても音楽の盛り上がりで泣く。
オンマイオウンと恵みの雨で涙腺崩壊。
エポニーヌ退場シーンでマリウスの方を見るのも泣く。
フィナーレでもボロ泣き。
レミゼを観ると顔が大変ウエットな感じになるのです。

 
カーテンコールは撮影OKなんですって。太っ腹!

 
↓トリコロールカラーが美しい。
そういえば照明の演出が客席に来るのでまぶしかったですね。
銃弾が飛び交うのも光で表現され、客席に何発も着弾していました(笑)。
 

さすがに愛され続けて40年の舞台、演者も観客も熱量が半端ない。
いやぁ、堪能しました。興奮に包まれたひとときでした。
久しぶりに観た舞台が良いもので良かった。満足。
 

 


◆当日の出来事
鑑賞中、下の階ではニュースになるような事件が起きていて、
自宅に帰ってからニュースを見て驚きました。

ヒカリエの7階で催涙スプレーが撒かれて複数の被害者が出たとのこと。

ニュース映像ではすごい台数の消防車が横付けされてうわっ!て感じで。

そういえば一階の道路に消防車が止まっていたなぁと思い出したりして。

(その時は何台もいなかったと思う)

事件現場の7階はシアターオーブへの行き帰りで通行する場所なんですけど、
通ったのは事件前、事件後で、現場ではまったくそんなことがあったという
痕跡もなく、そういうことがあったのは気づきませんでした。
ただ、エスカレーターで警備員が人の流れを止めたりしていて「?」と
感じたりはしましたが。アレはそういう理由があったのかな。



◆オマケ的な画像
帝国劇場100周年記念公演当時のフライヤーを掘り出したので貼っておきます。

これまでに観た舞台のものは、半券もチラシもほとんど保存しているのです。

これ以降は新演出になったようです。
 
当時の私が観た日のキャストを調べてみたら
 

バルジャン 今井清隆
ジャベール 鹿賀丈史
エポニーヌ 島田歌穂
ファンテーヌ 岩崎宏美
コゼット 神田沙也加
マリウス 石川禅
テナルディエ 斉藤晴彦
テナルディエの妻 鳳蘭
アンジョルラス 岡幸二郎
司教 林アキラ

でした。うおぉぉぅ、す、すげぇキャストだったんだな……
このあと14年もレミゼ離れしていたのは、

この日の舞台で満足してしまったからかもしれません。
 

 

『In Stars and Time』の再プレイが終わったので、改めて感想を書くのです。
いつまでもこの世界に浸っていたいなぁと思う程度に、まだ離れがたいです。


前回の記事はこちら↓

 

 



2周目はあとで読み返すためにテキストを書き写しながらプレイして、
個人的な楽しみとして全編一人称の小説にまとめました。楽しかった~!
前記事の末尾に貼った文章の続きを最後まで書いた感じです。
274000文字くらいになりました(笑)。
好きすぎて、なにしてんのコイツって感じです。
読み返して「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉ!(T-T)」
と感動の再確認をしています(もう興奮しすぎてわけわからん)

この作業で日本語版テキストができあがったので(笑)、
英語版でプレイして読み比べています。

チェンジハウス→ウツロイの館 とか、
日本語版の翻訳のセンスが素晴らしすぎてときめきます。
本当にいい翻訳だからこそ物語を楽しめたのですよね。

ウツロイの館 House of Change
ウツロイの神 Change God
侍祭 Housemaiden 
哀し身 Sadness

英語はほとんどわからない私ですが、
主人公シフランの一人称が「You」なのが???なのでした。

例)「僕は目を閉じた」→ You close your eyes. 

↓頭の中で思っている表現と、それを発言する時も違う。

「僕だ!」
思考 It’s you!   
発言 It’s me! 

「僕と、僕の友達だ!」
思考 It’s you and your frends!  
発言 It’s me and my frends!

 

あー、もしかして思考部分はプレイヤーのことを表現しているとか?


↓あとこの言葉。
カニったれ You Crab
やったぜカニったれ! Crab yeah!

作中「カニったれ」という個性的な罵り言葉がよく出てきます。

カニ野郎! ってニュアンスだよね?

クソ野郎、クソったれ、みたいな意味なのだろうか。
しかし嬉しいときでもカニったれと叫ぶし、
どういった状況で使われる言葉なのかつかみにくい(笑)。
どうしてカニがそんなに嫌われているのかも謎。
カニはおいしいのに……と思っているシフランのことは、
ヴォーガルド人には受け入れがたいのではないでしようか。


音楽もとてもいいです。
敢えてPSG表現になっている曲も多々あり。スキ。
町のBGMがちょっぴりドラクエっぽいような。
演出としてのサウンドも秀逸。


プレイ二周目は見逃した会話をかなり拾いつつやりましたが、
それでもまだいくつか取り逃しているようなんです……orz
途中からまたやり直しているところです。
隅から隅まで確認するのはかなり大変。
Switch版って実績解除システムがそもそもないので、
実績を確認できるsteam版でプレイしたほうが気づきやすいのかも。

 

追記・steam版を購入したけど、

実績がけっこう隠されているので自分で発見しなきゃならないみたいです。

 

せっかくだしsteamで「In Stars and Time」と「START AGAIN:a prologue」

と、それにバンドルされているアートブックやサントラも

ひっくるめて購入したんですが……

アートブック! アートブックがあぁぁぁ! 

ツボるカットが多くてきゃあ~と軽く興奮したりして、

あと私はどうして英語読めないんだorzと落ち込んだりしています。

アートブックなのに文章多めなのよね。

日本語対応してくれないかなー……文字が手書き多めだから難しいか……

いやあれ手書き風のフォントなのか?

あとsteamからアートブックを直接開けないのは何故。

PDFファイルを開けて見られたからいいけどさ。

その方法を日本語で書いてないから混乱したわ。

 

ものすごく分かりにくかったのでアートブック閲覧方法を書いておきます。

 

◆ISATアートブックの閲覧方法

steamライブラリのゲームタイトル右クリック

プロパティ

インストール済みファイル

参照

エクスプローラが開く

ISATArtbookフォルダ内

ISAT_ArtBook.pdf→開く

 

◆START AGAIN:a prologueアートブック閲覧方法

steamライブラリのゲームタイトル右クリック

プロパティ

一般

言語を English(英語) にする

インストール済みファイル

参照

エクスプローラが開く

START AGAIN_a prologueフォルダ内

(言語を英語にしないと出現しない)

START AGAIN_a prologue.pdf→開く

 

購入、ダウンロード後、

私はこの方法で見られました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これ以降はネタバレありの感想なので、
今後プレイする予定の方はご注意ください。
内容を知らないまま作品に触れた方が絶対にいいので!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ感想↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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ACT1
オープニング~最初のループまで

物語の背景を説明し、キャラクター紹介会話があり、
バトルを練習するチュートリアルパート。
主人公が岩に潰されて死んで巻き戻ることでループの始まりが描かれる。
シフランが死ぬとループして仲間にはその記憶が残らないけど、
死の瞬間自体は目の当たりにすることになるわけで。
目の前で仲間が大岩に潰されて取り乱さない奴はいないだろう……とか、
シフランが死んだ後の仲間の心情を想像してしまうのでした。
このあと出てくる様々な死も、仲間の心情を思うと、もうね。
しかし前日あの願掛けをしていなければ、
シフランはここで本当に死んでしまうのですよね。なかなかきわどい。

ACT2
初ループ起点~初めて王を討伐するまで

パイナップルを食べるとシフランは死ぬ。
自分が用意した食べ物がシフランを死に追いやった、

という事実に直面したボニーの心情は想像するだけでキツいですね。
王を倒すとクライマックス感がすごいので、
その後無情にもループした時のシフランの絶望感が際立ちます。
この辺からプレイヤーである私が
主人公の感情にじわじわシンクロしていきます。

ACT3
みんなの手伝い開始~王がボニーを殺害するまで

みんなのお手伝いイベントは心温まるハートフルエピソードで、
仲間との絆の深まりをじっくり体験できるので、とても充実しています。
ミラベルの本音、オディールの捜し物、ボニーが気にしていたこと、
イザボーと星を見る……どれもエモーショナルなお話。スキ。

が、どんなにイイ話でも、延々と繰り返していると次第に飽きてきます。
どのエピソードも長尺だしね。
既読スキップはできますが、台詞が少し変わっていたりもするので、
それを見逃すのも惜しい……
みんなとのイベントアリと、みんなとのイベントナシで、
館の中のリアクションや台詞も変わってくるし、うわぁ悩ましい。
記憶やサイドクエスト回収ができるのはACT3と4までなので、攻略も忙しい。
頭の中が混乱してくるなか頑張って獲得条件を満たす作業をして疲れました。

ACT4
願いのクラフトのことを侍祭長に聞くところまで

ボニーを王に殺されたことでシフランの心がだいぶ不安定になってくる。
僕は平気だ、と繰り返し自分に言い聞かせるシフランが痛々しい。
全然平気じゃないのよもう。
王と対面すると怯えてスピードが遅くなるのも厄介(初回だけ)。
そして心をざわざわさせながらも
サイドクエストや記憶の回収にいそしむプレイヤー。
回収することでエピローグの会話が増えるので見逃したくないのです。
といっても初見ではかなり見逃しまくっていましたね……(泣)
既プレイヤーさんの記事や英語wikiを読んでヒントを得ながら回収しました。

『会話が増える条件と思われる記憶』
エピローグは通常会話の他に、
各キャラ三つずつ会話があるっぽい。
もとからある会話に加え、ゲーム上のイベントをこなして
条件をそろえると発生するやりとりがある。
全部読みたいので再プレイでがんばってみたよ(疲)。
初見であったものに関しては勘違いがあるかも。すみません。

 

イザボー 
おめでとう。ようやく言えたね。←「ふれあいの記憶」入手で台詞が追加
イザ、きみは賢いな!      
ジョークを言ってもいいかな?←「ダジャレの記憶」入手で増える

ミラベル
王を倒してすごかったね!
その、ウツロイの信仰についてだけど…←「ウツロイの神の記憶」入手で増える
きみも講義で先生役をしたって聞いたよ!←「学習の記憶」入手で増える

ボニー 
おやつリーダーさん…
ボンボン、僕の目だけど…
ボニー…
初見から全部あったから、何がどう増えるのか分からないけど
「おやつの記憶」は必要かと思う。
それと遺体処理の話について会話済でも増えてそう。

オディール
オディールの仮説を聞かせて
「だ」から始まる恐ろしい言葉って何?
オディールは一度、すべてを見抜いてたよね。←「ある秘密の記憶」入手で増える

 

ループ 
銀貨についての記憶を思い出す
それについてループとの会話発生

特にループのエピソードは重要だった……
初回プレイ時、条件自体は満たしていたというのに、
ドーモントに戻れることに気づかずエンディングに行ってしまいました。
終わってから「あれ? ループどうなった!?」と気づいたのです。わーん。

ACT5
シフラン自暴自棄~ラストバトルまで

仲間を単なる登場人物としてしか見られなくなってきて、
雑に応対してみんなに拒絶されまくる展開がもう
バッドエンドにまっしぐらな印象。
どうせループすればみんな忘れてしまうんだと思いつつ、
もう繰り返しには堪えられないとも感じているシフランは
思考の矛盾に気づいていない。
みんなに拒絶される流れがプレイヤーとしても嫌な体験でしたね。
時計台でのみんなの話を部屋の外で聞いてしまう状況も悲しい。
そのあと単騎特攻する展開は、音楽でも絶望感を盛り上げられてキツい。
これまでのプレイに関係なくシフランがレベルカンストしているので、
ここから先は経験値も得られないイベント戦闘なのでザコからは逃げるが勝ち。
うなされるようにおかしな迷宮を進み、王と戦って自壊寸前……
プレイしながら「早くシフランを楽にしてやって~(T-T)」と思っていました。
どん底に墜ちたところで仲間が助けに来る!……というのはお約束ですが、
初回プレイ時はあのままバッドエンドだろうなと思っていたので、
みんなが来たのは本当に意外で驚喜しました。
この嬉しい展開のあと、シフラン巨大化イベントがあってアツい。
時間を巻き戻そうとするシフランをオディールが阻止するシーンがシビれました!

ACT6
エピローグ

全て終わってからの、キャラクター達との会話がたっぷり。エモい!
物語的に告白はラストなんだろうなと察することは容易でしたが、
ここでやっとイザボーが告白できて「ようやく言えたね!」と安心感を得ました。
オディール同様、あいついつコクるんだとやきもきしていたのでね!
シフランが控えめに彼の手を握ったというのが大きい決断に繋がったね。よきよき。

シフランのループの原因はオディールの考察でほぼ正解なのでしょう。
複雑に入り乱れてこじれていたものを、よく解決できたなぁと思います。

ループとの最後の戦いはシフランが負けるパターンのほうが好き。
けれど、結局ループだけが幸せでなく、救われてもいないのです……悲しい。
クリアしたあとニューゲームを選択すると「まだ大団円を見ていない」と
ウツロイ様に言われるんですが……
あれはループも幸せになれるエンディングがあると解釈していいのかなぁ。
どうすれば大団円を見られるのか。わからないのがもどかしい。

メインキャラに感情移入すればするほどハマれる作品だと思います。

 

キャラクターの詳しいプロフがアートブックに載っているので、

興味ある方は見て~♪

年齢や誕生日や名前(明かされていないものも)等しっかり書かれていて嬉しい。


【シフラン】
ノンバイナリー。男性寄りの中間。
英語版の表記は(he/they)になっている。
20代前半らしいけど本人は自分の本当の年齢を覚えているのかな?

誰からも忘れられている北の島出身だが、本人自身も忘却しているので、
どんな人生を送ってきたのは謎に包まれている。信仰対象は宇宙(星)。
シフランの出身国民はクラフト使いにたけているようで、
宇宙の力を借りて大きなクラフトを無意識にでも使えてしまう。
魔法使いのようなマントと帽子はおそらく親から与えられている。
サトイモのフリットは親が作ってくれた好物。
くせっ毛の身内(妹とか?)がいるかもしれない。
家出してボートで海へ繰り出した。
北の島が忘れられるような事件があったらしいが、詳細は不明。

彼の仲間への愛情と執着心が、そもそもの元凶というかなんというか。
大好きなみんなに嫌われたくなくて隠し事だらけで、
しまいには巨大化して暴れまくる駄々っ子主人公です。かわいい。
巨大化バトル時の音楽がすごく好き。

時間が巻き戻る事を最初は喜んでいたのに、
ラスボスを倒してもループが終わらず、
何をやってもループが終わらず、ループから抜け出す方法もわからず、
主人公が苦しんでだんだん精神を病んで
正気と狂気を行ったり来たりする過程を体験するわけで、
それがなかなかにじわじわくるものがあります。
油断しているとこっちも不安定になるような没入感でした。
どう考えてもバッドエンドにまっしぐらな展開だったから特にACT5はキツかった。
それゆえにみんなが助けに来てくれたシーンで涙腺崩壊なのですが。
画面より先に音楽が流れるので、急に明るい曲が始まって「何事!?」と思ったけど。

プレイヤー側としては、
ループの過程で館(ダンジョン)を行ったり来たりする作業を
何度も何度もやらなくてはならないため、だんだん飽きて面倒になり、
しまいにはウンザリしてきて無感情になって雑に死んだりし始めます。
そのへんの神経のすり減らし状態がシフランと同調してしまう理由なのかな。
チュートリアルエネミー惨殺事件なんか、「毎回チュートリアル邪魔だな~」
と思っていたプレイヤーの思いを反映したエピソードでしたね。
ヤバい表情の絵まであり、みんなにドン引きされていてカワイソウでした。

RPGの主人公は無個性になりがちですが、
シフランはしっかり個性派で色々な思考をするのがイイ。
彼に寄り添いながら「どんな結果になっても最後まで見届ける」
という気持ちになっていました。
しかしシフランは仲間に嫌われたくなくてずっとループを秘密にしていたけど、
困難な状況に陥ったら、私ならすぐ仲間に相談するなー。
オディールとかいい知恵を出してくれそうだし。

私としてはシフランと同期しつつ、同時に客観的な視点でも見ていました。
苦しみつつループを体験するシフランの気持ちに寄り添いながらも、
奮闘するシフラン可哀想可愛い♪とか思いながら割と無情に楽しんでもいました。

 

シフランは表情差分が豊富で、どれも大変かわいいのです。
フィールドキャラもかわいいのです。
帽子を取った姿もかわいいのです。
オディールの気持ちがよくわかってしまうのです(笑)。

イザボーに対する感情は、初回プレイでは
「まんざらでもない?」くらいにしか感じませんでしたが、
周回プレイでふれあいイベントを経て、これはループを重ねるうちに
思いが育まれて大きくなってしまったんだろうなぁと感じましたね。
最初はイザが何を言いたいのかまったく気づいてなかった子がねぇ。ふふっ。
温かい目で見守りたい存在です。


【イザボー】
20代前半、シフやミラより少し年上。
初期の段階ですでにシフランに気があるんだな~と分かったので、
コイツいつ告白するんだ!?と期待して見ていました。

作中ことあるごとにシフランを気遣う台詞があったりしてニヤニヤしていました。
しかし恋する感情を抱いたままシフランと同じベッドに寝ていて、
手を出したりしたくはならなかったのかな?と下世話な事も考えてしまいます。
彼だけがシフランを「シファルーニ」と言うんですが、あれは愛称なの?

オディールとともに深酒して色々アレな感じになったことがあるらしい。
その話kwsk!

作中で何をどう選択しようが最終的にシフランとはああなるので、
彼に好感を抱けるか否かでこの作品の印象が随分変わるのでは、と思います。

【ミラベル】
20代前半、ウツロイの館の侍祭。
神に選ばれた(ということになっている)パーティーメンバーの要。
彼女についてはあまり思い入れがなく、書くことは少ないです。

興味のある事に関して急に饒舌になるのはオタク気質なので、親近感はある。

シフランに酷いことを言われた時の容赦のない反撃は見事でしたね。
ウツロイ様のしゃべりが独特すぎィ。顔文字うざっ。

【ボニー】
この子もノンバイナリー。良くも悪くも存在感がある。
作中10歳にも満たないという台詞があった気がするが
プリティーン(10~12歳)とも言われているし、年齢は10歳前後ってことか。
ゲーム的な休息として3回もスナックタイムがあるんですが、
おやつリーダーとしての任務を一身に引き受けるパワフルなお子様。
最終決戦の食事として魚のカマ焼きをチョイスする辺り、タダ者ではない。

絵的には兜焼きなのでは? とも思いますが。

バトルでは2ターンごとに何らかの行動をするけど、
攻撃をハズす結果になることが多かったです。回復はありがたい。
子どもなので感情の制御がうまくできず、シフランが対応に苦慮している。
シフランとボニーのハグイベントは何度見てもじんわりくる。スキ。

【オディール】
日本がモデルなのかもしれないカ・ビューからの異邦人。
最初にオディールのイラストを見てこのゲームに興味を持ったのが始まり。
独特な髪型。メガネ。目つきが鋭い。
性格がクセつよで、頭脳派なのがいい。
翻訳の男性的な口調も彼女のイメージに合っていて良いですね。
ボニーにおばあちゃんと言われるほどにマジで年寄りっぽい。
ゲームのパーティーメンバーに「おばさん」がいるのは珍しいのではないか?
(他ゲーでおじさんは結構いるけど、おばさんはあまり見ないような) 
かつてストーカーがいたらしい。その話もkwsk!!

ボニーのことをボニファスというのは彼女だけ。
オディールは仲間達全員を子どもだと感じていますね。

 

オディールの母国での名前が思いっきり日本名だったのにびっくりです。

 

オディール最っ高に格好いい! とシビれたのは
シフランの時間のループを阻止したシーン。
バーンと一枚絵も出てきてシビれる!

ここどうやって止めたの?と思いましたが、おそらく

独自に強化して準備していたクラフトブレイクを使ったんだろうな、

と受け取りました(レベル云々はスルーで)。

客観的な視点では「シフランここでループしちゃだめー!」と思っていたので
止めてくれてマジで神!と感じました。
台詞も格好いいんだよな……もう惚れるわ。
このシーンを描写したくてオディール視点のSS(二次創作)を書き上げたので、
下に貼っときます。

【ループ】
もう一人のシフラン。
でもどうしてああなったのか作中で一応語られてはいるが、
シフランのループに閉じ込められた詳細がよくわからない。
パラレルワールドのシフランなのか、彼自身の過去のシフランなのか?
シフランはループのコピーなのか? そのへんも曖昧。
ループの過去は「START AGAIN:a prologue」で語られているエピソードが
そうなのかな? そのうちやってみるつもりです。

そういえばオープニングで星を食ってたのはループだよね?


以下、二次創作SS(といっても一万文字以上あります)
オディール視点のACT5~ACT6
すごくネタバレなのでお気をつけて!
既プレイの方には解釈違いとかあると思いますがすみません。

 

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 寝起きが悪いのは自覚している。体のあちこちが痛い。膝と腰の痛みを忌々しく思いながら、私はゆっくりと起き上がった。この歳になると、身を起こすのも一苦労だ。
 薄暗い室内を見回す。皆はもう起きているようで、目に入ったのは空のベッドだけ。
(予定より起きるのが早くないか……?)
 しっかり睡眠を取るのも大事なことだというのに。
 建物の中に人がいる気配がない。違和感を覚えた私は手早く着替え、時計台の外に出て周囲を見渡した。
 朝の陽光が容赦なく降り注ぐ。イライラするほどの晴れやかな、夏の空だ。
「マダム!」
 町の方から只ならぬ表情を浮かべたミラベルが駆けてくる。はぁはぁと息を荒げて近づいてきた彼女の口から、厄介な事案が飛び出した。
「シフランが昨晩から帰ってこなくて……町のどこにもいないの!」

 ウツロイの館の侍祭ミラベル。
 彼女と行動を共にする戦士イザボー。
 この国、ヴォーガルドに呪いをかけた王を倒すため二人旅をしていた彼らに出会ったのは、半年ほど前だったか。異国から訪れた旅人――つまり余所者だった私だが、そんな重大案件をこの二人だけに任せてはおけないと自ら同行を申し出た。もとより彼等が戦力不足だったからだが、十中八九死地に赴くことになる健気な若い二人をここで見捨てたら後悔すると思ったのも事実だ。
その後陽気なシフランと幼子であるボニファスが加わり、現在は五人で行動している。
 私たちは首尾良く事を運び、王が居座る異形の館へ突撃するすべも得た。
 しかし、いよいよそれを実行するという前日に――問題が起きたのだ。
 先頭に立ち仲間を導く役を担うシフランの変調。
 確かに昨日の彼(表現上は彼と言っておく)の様子は異様だった。
 知るはずのない事を知り、突如仲間達を罵倒した。出会ってからこれまでの彼の態度からは考えられないような残酷な言葉を使って、皆の心を傷つけた。
 私自身もいきなり投げかけられた言葉に狼狽し、怒りのあまり彼の襟首をつかんで殴りかかりそうになった。すんでのところで感情を押しとどめてその場を離れ――それ以来、彼の姿を見ていない。
 団結して王に挑むという重要なタイミングであの態度は何のつもりなのか。私はシフランを信頼していいのか分からなくなってしまった。しかし――タチの悪い冗談で皆を怒らせたことを悔やみながら、バツの悪い顔をしつつ戻ってくるだろうと、どこか期待して楽観視していたのも事実だ。甘かったか。事態は思っていたよりも深刻そうだ。
 彼が一体どこへ行ったのか見当もつかない。
「今イザボーとボニーがあちこち回って探してる……ああ、どうしよう」
 ミラベルは激しく動揺している。昨日一番激怒していた彼女だが、仲間思いなのは変わらない。失踪したシフランの事を本気で心配しているのが窺えた。
「落ち着け、ミラベル。呪いはもうすぐ、確実にこの町を飲み込むだろう。時間が無いんだ。シフランがいなくとも私たちは館へ向かわねばならない。決断を……」
 時には冷酷な判断をしなければならない。私が感情を抑えてそう言ったとき。
「ミラ! オディール! 今すぐに、ついて来てくれ!」
 全速力で走ってきたイザボーがそう叫んだ。

 願いの木、その前に奇妙な姿をした生物がいた。
 光る頭部に闇色の体、胸には星形の印。彼は自らを『ループ』と名乗り、シフランについて信じ難い事実を私たちに語った。
 彼曰くシフランは、昨日と今日を繰り返すループに囚われているのだという。死を迎える度にループする二日間を、永久にも感じられる長い間体験してきたシフランの精神はもう瓦解寸前で、遂に変調をきたし、私たちに酷い言葉を投げかけた事が原因で見限られたと思い込み、絶望したまま単独で王のもとへ向かったというのだ。
「そんな……」
 話を聞いたミラベルが混乱して涙ぐむ。荒唐無稽な話に全員が言葉を失った。私たちには何の記憶も残らず、シフランだけが時間のループを繰り返していたという。そんなことがあり得るのか? 
「お願いだみんな、星くず君を……シフランを助けてよ! あいつは自分の手だけで王を倒さなきゃいけないと思い込んでる! だけどそれじゃダメなんだ。また巻き戻るだけ……いや、最悪、王の精神攻撃を受けた挙げ句、永遠に静止させられてしまうかもしれない。そんなの……」
「そんなことはさせない。行こう、みんな!」
 こういうとき迷いなく立ち上がるのは常にイザボーだ。自分が鼓舞すれば皆の勇気に繋がると理解しているのだろう。私自身は半信半疑だったが、館へ向かわなければならない事に違いはない。頭の中に直接語りかける術を知っているという星の生き物『ループ』は、館に入ってからも我々をサポートすると約束した。
 彼が語った事柄について真偽を確定するのは早計だ。まずシフランと会って話をしなければ。
「すぐに向かおう」
 もう出発の準備は昨日のうちに済ませている。私たちは即座に行動を開始した。

 シフランが「時間のループ」というクラフトをもし本当に使ってくるのなら、対策が必要になるだろう。私はそのための準備も怠らない。
「……」
 道中「マダム、いつにも増して目つきが怖いな」とイザボーに恐れられたが、知ったことではない。私はもともとそういう顔だ。
 私は考える。
 星の生き物の話が事実なら、私たちは何度となくシフランのループを体験しつつも、それを記憶に残せていない事になる。繰り返す時間に囚われたシフランが何を考え、どのように行動したか知る術はないが、ある程度推測することはできる。
 死ぬとループするということであれば、最初のうちこそ翻弄されていたのだろうが、回を重ねるにつれ心が麻痺して慣れてくる。そのうち無自覚に、最終的には自分の意志でループさせることも可能になった筈。となれば――臆病者の彼は、おそらく自分にとって都合の悪い結末に辿り着く度にループさせていたに違いない。時間のクラフトの事が仲間内の誰かに発覚しても同様だ。その場合、真っ先に気づくのは恐らく私かイザボーだった事だろう。
 しかし――そもそも、彼の時間が巻き戻る原因はなんだ? 星の生き物は、シフラン自身どうしてループするのか分かっていないという。だからこそループから抜け出せないのだと。
 その理由が明らかにならない限り、問題は解決しない。そう思う。

 館内の死の罠を避け、施錠された扉の鍵を発見し、迷うことなく王の間に辿り着けたのは、ひとえに星の生き物のおかげだろう。彼のサポートがなければ全員あっさりと死んで終わっていた。
 今――私たちは、膝を突いて床に伏したシフランと王の間に立って、最後の戦いを終えた。王は自らが放った凍結の呪縛をその身に浴びて凍り付き、動きを止めたのだ。おそらくは永遠に。
「ミラ、今のクラフトは……さっき書庫で覚えた反射のシールドか!」
「すっげー!」
 若人が大はしゃぎだ。確かに、あの短い時間で難解なクラフトを理解したミラベルの能力には驚嘆する。
 イザボーとボニファスは「倒した! 倒したぞ!」と驚喜してクルクル踊っている。まったくもって子どもだな。
「やったぜ、このカニったれ!」
「やったぜ、このカニったれーーー!」
 二人で喜びのダンスを踊ってから、イザボーがくるりとシフランの方を向いた。
「だがな、シフラン」
「どうしてわたしたちに、あんな酷いことを言ったの、シフラン!」
 ミラベルの怒りも収まってはいなかった。シフランを見て怒りの感情が再燃したのだろうか。
「いけないんだぞ。いーけないんだぞー!」ボニファスがはやし立てる。
「あれはカニもどきみたいにひどかった」イザボーも口を尖らせている。
 私もつい咎める口調になってしまった。
「どうして一人で行ったんだ? 館を単独で進むなんて……愚か者のすることだ、シフラン。それに、あんな風に酷い態度をとるなんて、きみらしくもない」
 皆に囲まれたシフランは、わかりやすく満身創痍だった。単独で王と戦った結果がこれだ。言葉を発することもできず、どうやら立ち上がることすらできないらしい。私たちは手を貸そうとして彼の体に触れる。熱い。
「この先に侍祭長がいるのがわかるよ……! わたし、助けてもらえるよう先に行って知らせてくる!」
 ミラベルが奥の間へ向けて、慌てて駆けだした。
「シフ、歩けるか……?」
 イザボーがやっとの思いで立ち上がったシフランの体を支えて、寄り添いながら歩き出す。

 侍祭長は体の大きい美しい女性だった。
 彼女は私たちを快く招き入れ、救国の英雄として讃えてくれた。しかし――何かがおかしかった。用意された台本を淡々と読み上げているだけのような違和感。会話になっているようでなっていない異様さ。しまいにはまともな文脈にすらなっていない言葉の羅列になり、侍祭長は誰が声をかけても反応しない奇妙な存在になり果てた。
「なあ、侍祭長さん……俺たちの声が聞こえるか?」
 なんか怖いな、とボニーがイザボーの後ろに隠れる。
「オホホホ! ……もうすぐ皆さんは日常生活に戻れるでしょう。闘争に別れを告げられます。ようやく、故郷に帰ることができるのです!」
 壊れた侍祭長がそう言った途端。シフランの体がびくんと跳ね上がって、その小さな体が闇色に染まり――いや、小さな体がどんどん肥大化して……王のような巨体へと変貌した。
 何だこれは。これこそタチの悪い冗談と言えるのではないか?
「ダメだ!」とシフランは叫んだ――「故郷になんて帰さない!」
 どうしたんだシフラン、と皆が巨大な彼を見上げる。
 これは非常事態だ。なんとかしなければならない。シフランが腕を振り上げて侍祭長を弾き飛ばした。明確な攻撃の意志だ――このままでは皆が危険にさらされる。
(それは許されない、許さないぞ、シフラン)
 私は魔導書を開き、有無を言わさず先制攻撃を加えた。シフランの巨体が仰け反る。
「オディール!? どうしてシフを攻撃する!?」
「あいつは私たちの脅威だ! これは自己防衛だ!」
 しかしイザボーとミラベル、ボニファスも駄目だと強い口調で私を止めた。
「やめてよ! フランを攻撃するなんて――友達なんだよ! 友達には攻撃しちゃダメっ!!」
「しかし……」
 異形の存在に変貌しても仲間は仲間。戦いたくないという皆の気持ちは分からないでもない。だが、このままでは。
 躊躇いつつも次の攻撃を繰り出そうとして、私は気づいた。シフランが反撃をしてこないことに。それどころか自身を傷つけている。どういうことだ。
「シフラン!」
 強い口調で彼の名を呼ぶ。
「――故郷に帰るなんて許さない! 許せない、絶対に!」
 そんな叫びが返ってきた。皆がどういうことなのかと口々に問いかける。王を倒して旅を終えることこそが目的だったはずなのに、何故、と。しかしシフランは故郷に帰さないと繰り返すばかり。
「シフラン……訳が分からないぞ! きみは帰りたくないのか? 自分の故郷に帰りたいと思わないのか? どうしてミラベルの旅についてきたんだ。王を倒して故郷に帰りたいと思っていないなら、なぜ!?」
「帰れないんだ! みんなにも、帰ってほしくない!」
 帰れないだと?
「帰る場所がない。みんなも同じだ! 帰さない! 行かせないからな!!」
 シフランは帰れない、帰さないと繰り返しながら自傷を続ける。このままでは埒があかない。一体どうすれば――どうしろというんだ。
「ようやく、手に入れたんだ! 完璧な結末だ! 僕たちは勝って、みんながここにいる! 今は帰さない! 何度も何度も、僕は繰り返してきたんだ! 僕は帰らないし、きみたちを帰さない。ここにいるんだから! 幸せになれるんだから! みんながそれぞれの帰路について……故郷に帰るなんて……そんなの僕が願ったことじゃない!!」
 ――――これだ。
「『完璧な結末』……?」
「『僕が願ったことじゃない』……」
 つまり――
「『何度も、繰り返してきた』……つまり、あの星の……ループが言ったことは本当だったんだな」
 時間のクラフトと、願いのクラフトは実在した。そういうことだ。
「シフラン……昨日の態度……きみの言葉。本気だったのか、そうじゃなかったのか。両方なのかもしれないな」
 ミラベルの書類の中身。服のデザイナーになるというイザボーの夢。戦闘中にわざと転び、ボニファスを追い込んで哀し身を倒させたこと。シフランは全てを識っていた。
「そして、私が一族の物語を探していたことも……更に本のありかも知っていた。王と戦ったときのきみの振る舞いも……それに、今言ったこと。さっきの言葉だ。『何度も何度も、繰り返してきた』……」
 どうやら、あの星の生き物の言ったことは全て真実だったらしい。
「ハハ……大げさに言ってるだけだと思ったが……シフラン、きみは……ずっと、時間のループの中にいたんだな?」
 ………………!! イザボーの言葉を聞いたシフランが息を呑むのが伝わってくる。知られたくない事を仲間に知られてしまった彼が、この後取る行動はおそらく――
 私は魔導書を開いたまま身構える。
「……っ!」
 視界がぶれ、頭痛が襲ってきて、砂糖を焦がしたような匂いが纏わりつく――私はその不快な感覚を強引に振り払い、弾き飛ばすように消し去った。
「ああ、それはできないぞ。若者よ、きみはここにいるんだ。話が終わるまで、どこにも行かせない!」
 ぶっつけ本番だが、時間のループの阻止に成功した。対策を考えておいて正解だった。私は誰にも気取られないようホッと息をつく。
 巻き戻りを封じられたシフランは驚愕し、怯えているようだ。
「うっわああああ……ヘンな感じがした」
「今のって……あれが時間のクラフト? シフランは今、時間を巻き戻そうとしたの!?」
「ヤな感じ! 何時間も焦がしたカラメルみたいなにおいがしたよ! うえぇっ!」
「確かに不快だ……ここにいるだけで、頭痛がしてきた」
 皆も私と同様の感覚に襲われたようだ。私はシフランに向かって咎める口調で言葉を叩きつける。駄々っ子にはキツい物言いでなければならない。
「シフラン! どうやって、どういう理由で時間のループが起きているのか知らないが、きみを逃しはしない。ここに留まれ。そして私たちと話をするんだ!」
「そうだよ! ディールがオマエを離さないからな、バーカ!」
「オディール、やれ、オディール、やっちまえ!」
 同時に、星の生き物に聞いた話とシフランの行動や言動をもとに、仲間達が考察を始める。
 時間のクラフト――絶大な力が必要――願いのクラフトの話――願いの木への願掛け――シフランの願い――人々の願い――『僕が願ったことじゃない』――
 そう。シフランが願った内容が『鍵』だ。
「シフラン……シフランはもう分かっているはずだ。きみ一人がその力を手に入れた理由。王と戦おうとしていたのは、私たちも同じなのに……きみに関わりがあることなんだろう? きみが願ったことが関係しているのではないか?」
「シフラン……あなたが願ったことを、わたしたちに教えて。言いなさい! それが、あなたを解放する鍵になるかもしれない! これ以上、時間のループを繰り返さずに済むかもしれない!」
 私とミラベルが詰問する。しかしシフランは激しく頭を振り、イヤだイヤだと繰り返すばかり。皆が自分の願いを彼に伝えて、教えてよと懇願する。子ども相手に優しいばかりでは駄目だ。時には厳しく接しなければ。
「言うんだ!」
「わたしたちに言いなさい、シフラン!」
「「「「何を願ったのか言ってよ!!!」」」」
 渾身の力を込めて皆がシフランに詰め寄った途端――周囲が光に包まれた。

 シフランの帽子が強い風に煽られ、虚空に舞う。

 いつの間にか、シフランの体はもとの大きさに戻っており、私たちは手を繋いで円になり、ふんわりと空を飛んでいた。現実主義者である私には正直このファンタジーな状況は受け入れ難いものがあったが、そんなことを気にしている場合ではない。
 皆が穏やかな口調で彼に問いかける。
「何を願ったのか言ってくれ。なあ」イザボーが優しい目でシフランを見つめる。
「言って」ミラベルは穏やかだが厳しい目を彼に向ける。
「言ってよ。言ってってば。ねえ。言って言って言って言って言って言って――」
 ボニファスが言って言ってと執拗に繰り返す。
「さっさと言うんだ」
 そして私はやはり厳しく命令する。
「だけど……言いたくないんだ。言うのが怖い」
 喉から絞り出すように答えるシフラン。何を恐れているのか。
 オイラたち知りたいんだよとボニファスが言う。またおしりペンペンして言わせようか?と続け、イザボーとミラベル、そして私もその流れに乗った。
 そんな風に責められたシフランはぎこちない笑みを浮かべてから、息を大きく吸って、吐いた。もう一度吸って、吐く。これが彼の、心を落ち着けるための儀式なのだ。
「僕、その……」
 もの凄く小さな消え入るような声で、シフランは言った。
「……イザボーが作った服を着ること」
 小さく告白した彼の言葉を聞いて、イザボーの顔が嬉しそうに綻んだ。
「それが願い……って、ほ、ホントか? きみが、着てくれるのか? ぜひお願いするよ、シフ! きみのための服を作りたい!」
 でも、とシフランは続ける。願ったのはそれだけじゃないと。
「あのとき願った、僕の願いは――み……みんなとずっと一緒にいることだ……!」
「な……?」
 ………………
 …………
「王に勝ったら、僕たちの旅は終わりだろ? ミラベルは館に、イザボーはジュヴァンテに戻る……オディールはカ・ビューへ、ボニーはお姉さんのもとへ! みんな、故郷に帰ってしまう!」
「……」
「勝ったら、みんないなくなるんだ! 僕は――僕はそんなのいやだ! みんなと一緒にいたいんだ!」
 これがシフランの本音。彼の願い。
 ごめんなさいごめんなさい、と彼は涙混じりに謝罪する。皆が故郷に帰っても平気でいなければならないと本当は分かっているのだと。けれど独りになりたくないと。でも皆を時間のループに閉じ込めるつもりではなかったと。
 ミラベルが彼の言葉をぴしゃりと止めた。
「シフラン、そんな風に思ってたの……? 旅が終わったらすぐにでも、あなたのことを忘れてしまうって!? わたしは、みんなで過ごした時間のことを忘れたくない。それに、旅が終わったらみんなと二度と話せなくなるなんてイヤだよ!」
 わたしはみんなと旅を続けたいと彼女は言った。ボニファスも、そしてイザボーも同意する。それは、しばらく前から私自身も考えていたことだった。
「……さすがに、分からなかったよ。皆同じ気持ちだったんだな。そのうち、皆に聞いてみようと思っていたんだ。もう少しだけ、旅を続けたくないかと……王のことを心配することなく旅を続けられるなんて、良いと思わないか?」
だが、私にはそれを聞く勇気がなかった。しかし今ようやく自分の気持ちに素直になれる。
「……それに、私は……この旅が楽しいんだ。皆との旅が。皆との会話が。まだ……まだ、皆との旅を終わりにしたくはない!」
「シフラン! わたしたちも、あなたと一緒にいたいと思ってる。あなただけじゃないんだよ!」
「この旅はまだ終わらない。話したいことがある限り終わらないんだ!」
「それに、旅が終わっても、それで終わりじゃない。お互いの人生の中に、お互いの存在がずっとあり続けるだろう」
「そうだよ! だからバカはやめて、オイラたちがフランを忘れるなんて思うなよ。忘れるわけないだろ、バカフラン!」
「シフ!」
「シフラン!」
「シフラン!」
 皆が彼の名前を呼ぶ。
 シフランは泣いて――笑った。

 全てが元に戻ってから、ボニファスは現状を端的に表現した。
「それじゃ、結局……フランはオイラたちのことが好きすぎて、ずっと一緒にいたかったから、もう少しで世界を壊しちゃうところだったのか?」
 ダメだぞ、そんなことしちゃ。そう言ってボニーはシフランに「めっ!」と言った。
 言われた当人はあーあーあーあーと呻いて、真っ赤になった顔を両手で覆ってしまった。
 私は手近な椅子に腰を下ろす。
 ああ、全身が痛い。目は霞むし、眩暈はするし、首と肩が凝っているし、そろそろ腰もやばい。館をさんざん歩き回って足もガタガタだ。明日は筋肉痛で立てないな。美味しいモノでも食べて、温泉につかって、しばらくゆっくりと休みたい。年寄りに無理をさせるとこういうことになると、シフランに思い知らせてやらないと。
 そんな彼は小さな体を更に縮こませて申し訳なさを前面に押し出し、ひとりひとりに謝りはじめた。何をどれだけ謝罪すればいいのか彼自身も分かっておらず、たどたどしく言葉を紡いでいる。皆もそれを笑って受け入れている。そんな若者たちの姿が眩しくて愛おしい。
 誰一人欠けることなく彼等が元気に生きているだけで、私は満足だ。
 ところで戦闘中に弾き飛ばされた侍祭長は怪我一つなく無事で、シフランは心底安堵したようだった。侍祭長自身も正気を取り戻しているようで何よりだ。
 しぱらく皆と話していたシフランが、よろよろとこちらへやってきた。
「ああ、シフラン……熱は下がったか?」
 彼は頷く。
「よかった。それを聞いてうれしいよ。ああ、そうだ、もう一度言っておこう。良心に従ってきみを許す。つまり謝罪は必要ない」
「……」
「どうした?」
「みんな、僕のしたことを良い方に解釈しすぎだよ」
「なんだと? 時間のループのことや、きみが忌々しいカニったれだったことをか?」
「……」
 心配ないと言っても彼は納得していないようだ。自分自身が許せないのだろう。
「確かに、きみには昨日、ひどいことを言われた。私たちは嫌な気分だったし、腹を立てた。だがその後で、きみが一人で館に向かい、単独で奮闘していたことを知った。それに、きみがした酷いことは……ひどく落ち込んで、正気を失っていたのが原因だということも分かった」
 同情の余地は大いにある。
「きみは、私たちとずっと一緒にいたいと願うあまり、無意識のうちにかどうか分からないが、自分自身を時間のループに閉じ込めてしまったのだ。それを知って、私たちがどんな気持ちだったか、分かるか?」
 シフランは少し考えて、上目遣いに恐る恐る問うてくる。
「気分が悪かった?」
「うーーーん。みんなが同じ気持ちかどうかは分からないが……私の知る限りでは、断トツにかわいいことだと思うぞ」
「かわいい!?」
 何を言われたか理解できないのか目を白黒させているシフランの頭を、私はスリスリと撫でた。手入れをしていないようなのに、ふわっふわだなこいつの髪。ああ可愛い。
 私を慕い離れないでと縋りついてくる子どもや小動物ほど愛らしい存在はない。可愛くない訳がないじゃないか。
「シフラン、シフラン、シフラン。きみは私たちを愛するあまり、忘れられたクラフトの力を使って、私たちとずっと一緒にいようとしたのだぞ。かわいいだろ?」
「かわいくないよ、そんなの――」
「かわいいぞ」
「違うって!!」
「私の気持ちは変わらないぞ」
「オディール、きみ――」
 それまでこわばっていた彼の顔が、ついに綻んだ。
「ほう」
(ますます可愛いじゃないか)
「かわいくないってば。あれは……」
「すっごくかわいい」
 いかん、彼の反応が可愛くてニヤニヤが止まらない。しかし言うべきことは言っておかなければならないな。
「……シフラン。もちろんきみは、昨日マズいことをしたと思っているだろう。実際、そうなのかもしれない。だが……私も昨日はマズいことをしたと感じている」
 彼と話をしなかった。何が起きているのか、知ろうとしなかった。明らかに何かがおかしかったのに。
「あの時ちゃんと確かめていれば、きみを助けるために、もっと早くから色々なことができたはずなのだ」
 いやそれは、とシフランは視線を彷徨わせる。
「ふん! そうは思わないという顔だな。それでいい。私たちはお互いに罪悪感を感じていてもいい。それがいつか相殺しあうことを願おう。だが、これだけは覚えていてほしい。私たちも、きみともう少し一緒にいたいと思っているよ。なぜなら、私たちもきみと同じ気持ちだからだ」
 きみを大切に思っている。きみに幸せでいてほしい。きみともっと時間を過ごしたい。
 普段なら絶対に言わないであろう言葉を、私ははっきりと口に出した。そのほうが彼も理解しやすいだろう。
「これから私たちが始める新しい旅も、いつかは終わる。最終的にそれぞれの道を歩み始めるのは、避けられないことだ。だが、一緒にいなくても……それぞれがまったく別の場所にいるとしても……一緒に過ごした時間を忘れることはない。きみのことはけして忘れないよ、シフラン。四人とも、きみを忘れることはない。きみがまだ信じられないと言うなら『だ』から始まる恐ろしいあの言葉を言ってやってもいい。だが、きみを調子に乗らせる必要もないしな。いいな?」
 彼は頷いた。
「よかった。それにな、シフラン。たかが『子ども』が私にいじわるするたび腹を立てていたら、私は常に腹を立てていなきゃならなくなる。心配しなくていい。さっきも言った通り、きみのことは許した。何が起きているのかもっと真剣に探ろうとしなかった私を、きみが許してくれることを願っている」
「……分かった」
 シフランは帽子を下げて照れた顔を隠そうとした。けれど――もう彼の帽子はない。
「ハハ、帽子がなくちゃ顔は隠せないな?」
 私たちは同時に笑い声をあげた。
「よし。ここはもういいから、若者同士でもっと話してこい。きみが話しかけてくれるのをずっと待っているあいつの視線が痛いしな。それに、感情的な会話をして私は疲れてしまった」
「戦いすぎたせいじゃなくて?」
「当たり前だ、愚か者め。私の身体は最高の状態だぞ。さあ行け、シフラン」
 人をおちょくる余裕が出てきたならもう大丈夫だろう。私はシフランの髪をくしゃくしゃと撫でると、笑って彼の背中を押した。
 柔らかな微笑みが返ってきた。


 

 

 

 

 

 

 

 










 

『In Stars and Time』というゲームにハマりました!
私がやったのはNintendoSwitch版。

 

トレーラー日本語版もあるんだけど(ニンテンドーeショップで見た)、

つべは英語版しか見つからなかった……

 

 

絵柄がかわいくて以前から気になっていた海外作品。
RPGだから面倒かなぁと、しばらく手を出していなかったんですが、
このたび急に思い立って購入。
やりはじめて、とりあえずエンディングを見て、

うわー! うわー! うわあああああ!(T-T)
心がざわめく~! 
ぶっ刺さりました。

強大な敵を倒さんとする主人公パーティーの前日の描写から、物語は始まる。
翌日、敵の拠点に突入してすぐに主人公はあっさり死亡。
その瞬間時間が巻き戻り、再び前日に目を覚ます。
といった、いわゆるループもの。

主人公が死んで戻ってループの自覚もあるが、仲間達にループの記憶はなし。
つまり主人公だけが背負う、長くて孤独な戦いが始まるわけだ。

「何度失敗してもやり直せる!」と最初は喜んでいた主人公が、
死んでは繰り返すなかで自分はループに閉じ込められていると気づき、
じわじわ精神をすり減らせてゆく、
可愛らしい見た目に反してなかなか心にクるものがあるお話です。

あの絵だからこそイイんですけれど!

 

今までにいくつかループもののゲームをプレイしてきたけど、
だいたい絶望的な展開になるわけで、
この作品も例外ではなく。

ただ、ストーリー展開がものすごくエモいのです。
膨大な会話群。
人物達の表情も多彩。ツボるやりとりが多く、
なにより主人公シフランの表情変化が多くて、見ていて萌える。
そして仲間達との対話が全て愛しくなる。

物語が進むと、ループに苦しむシフランとシンクロしてきて色々キツい。
なにしろ何度もダンジョン攻略しラスボスを倒す羽目になるわけで、

それが同じ事の繰り返しで作業ゲーじみてくるので、いい加減うんざりしてくる。

それも作り手が意図してやっているのだろう。
気づくとシフランがプレイヤーとシンクロしているような行動を取ることも。
没入感がとにかくすごい。

そして日本語テキストが神!!!
キャラによって口調などがしっかり設定されており、

個性がはっきり生き生きして、会話中の演出も凝っている。
素敵な翻訳にはもう感謝しかない……

しかし8ビット風な文字フォントで、どうして漢字がきちんと読み取れるんだろう。

トゥルーエンドや細かい会話を取り逃しているようなので、再プレイします。
記憶を消してトライしたいくらい好きな作品。
ただし全ての人にオススメってわけではないです。
キャラクターに思い入れが湧かない人には響かないと思うし。

作中出てくるおやつも魅力的。
パルミエって、どこかで見たことあるようなお菓子。
……あっこれ「源氏パイ」だ! 
なんか急に食べたくなって即購入。もぐもぐうまい。
(源氏パイってやはりパルミエをもとに作られたらしいです)





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◆久々に書いた二次創作

以下、序盤のストーリーをあらすじがわりに(長いです)
ゲームのテキストをベースにしてプレイヤーの思い入れをたっぷり詰め込みつつ書いた、主人公一人称視点二次創作文章。心にぶっ刺さったゲームに対して発生する、私の楽しみ方。
活字で表現しつつ物語を深掘りする遊びみたいなものです。既プレイの方がいらしたら解釈違いはご容赦下さい。シフランかわいい。ネコっぽい可愛さ。

熱に浮かされたように没頭していました。久々にこういうの書いたな。楽しかった。

一応序盤までなのでネタバレってほどでもないけど、何も知らずにプレイしたい人は読まないで下さい。

 


◆ACT1

……フラン!
「シフラン!」

 僕の名前を呼ぶ、優しく心地良い声。
 刹那――まどろみの中で思い出そうとしていた夢の残滓が、雲散霧消する。

「シフラン?」
 草地の中央に寝転がっていた僕の顔に、すっと影がかかる。ゆっくり目を開けると、こちらをのぞき込んでいるミラベルの顔があった。
「朝だよ。っていうより、昼……だね。お昼寝してたの? シフランらしいね。こんな時にすやすや眠れるなんて、あなたしかいないもん!」
 彼女は呆れたような口調で言葉を続ける。
「でも、休めるときに休むのはいいことかも……明日に備えなきゃだよね。いよいよ王と対決するんだから」
 甘美な眠気が全身を包む。眠すぎて話す気になれない僕は、もう一度まぶたを閉じた。
「……まだ寝ぼけてるんだね」
 ううんと不満げな唸り声を上げた僕に「しょうがないなぁ」と呟くと、彼女は「もう少し寝ててもいいけど寝すぎはよくないよ。起きたら町に来てね」と言い置いて歩き去った。
「ふぁーぁ……」
 大あくびをしたら顎がコキッと鳴った。まだ眠い。あと5分……いや10分。
 このまま惰眠をむさぼり続けたいところだけど、日が暮れるまでそうしている訳にもいかない。それはさすがにグウタラすぎる。
 ちょっと無理して起き上がる。
 目覚めろ、シフラン。国を救わないといけないんだ。

 草地を後にして森林の道を抜けると、改めてミラベルが出迎えてくれた。僕を待っていたのかな?
「シフラン! 起きたのね」
「やあ、ミラ」
「お昼寝はどうだった? 10点満点だと何点ぐらい?」
「バッチリ9点」
「……満点じゃないのは、最後が完璧じゃなかったから?」
 わたしが起こしちゃったからねと申し訳なさそうに呟いた彼女は「次はずっと寝かせてあげるからね、そうすれば幻の10点満点になる!」と力強く拳を握った。
「ところで、訊きたいことがあるの」
「何?」
「今夜のことなんだけど……王との決戦前夜になるわけだし、みんなにとって特別な夜にできたらいいなって思って。だからね、お泊まり会なんてどうかな? みんなで美味しいごはんを食べようよ! それから同じ部屋で寝るの。お話なんかもしてさ。素敵だと思わない?」
 それは普段やっていることと同じでは? と思うが口には出さない。
「……あぁ、くだらないって思ってるんでしょ。ごめんね。わたしはただ、今晩楽しいことがしたかったの。でもこれしか思い浮かばなくて……やっぱりバカバカしいよね? お泊まり会なんて忘れたほうがいいかも……」
 おっとマズいぞ。冷めてるのがバレてミラベルが動揺している。フォローしなきゃ。
「い、いやいや、楽しいと思うよ! やろう!」
 どもりつつ必要以上に強い口調で賛成する。
「……本当にそう思う? それなら……えっと、じゃあシフランからみんなに知らせてもらえる? わたしが言っても乗ってもらえない気がして」
 引っ込みがつかなくなった。これは僕がやるしかなさそうだ。
 ちょっとメンドクサイと思ったことはおくびにも出さず、僕はにっこりと笑顔で勿論いいよと引き受けた。
「よし! えっと、マダム・オディールはお店で買い物中。ボニーは東にある畑のあたりにいるはず。それからイザボーは、願いの木にいるよ!」
 夕方になったら時計台に集合しようと伝えてね、という彼女の指示に粛々と頷く僕。ちなみにその時計台は、この町ドーモントで僕たちが宿泊している建物だ。
「いっぺんにいろんなことを言っちゃったけど……誰がどこにいるか覚えた?」
「僕の記憶は完璧だ」
 胸を張る僕に対し、ミラベルは不安顔。
「覚えていてもいなくても、みんなの居場所を書いたメモを渡しておくね! 念のためにどうぞ。忘れたらこれを見て!」
 なんという念の入れよう。僕って信用無いのかなぁ。
「じゃあ時計台で会おうね。わたしは図書館の近くにいるから、用事があったら声をかけて。それと、ウツロイ様の像にも必ずお参りしてね。きっといいことがあるから!」
 ひとまず僕たちは手を振って別れた。

「ウツロイ様の像、ね……」
 町の中央。ひときわ大きなウツロイ様の像を中心に、表情も大きさも色々な、いくつもの像が設置されていた。哀しそうな眼をしているのもあれば、明るく微笑んでいるのもある。クラフトの力で動いている像もいくつかある。
 跳ね回っている像がコツンと足に当たった。ヴォーガルド全土で崇拝されているウツロイの神が、僕の目前に立っている。
「この冒険も、もうすぐ終わるんだな……」
 ここまで無事に辿り着いたなんて、なんだか信じがたい気持ちだ。
 ――僕がこの国でミラベルと出会ったのは、ほんの数ヶ月前。
 それからいろいろな出来事があった。

 ヴォーガルドは誰でも受け入れてくれる国だ。どこから来たのかも明かさない僕のような怪しげな旅人ですら。
 平和で居心地の良いそんな国に、突如災厄が訪れる。
 一年ほど前、どこからともなく現れた「王」を名乗る者が、強大なクラフトを操ってヴォーガルド国全土に呪いを放ち、呪詛に触れたあらゆるものの時間を静止させた。
 呪いはゆっくりと、しかし確実に国を包み込んでゆく。
 ドーモントの町に建つ「ウツロイの館」を制圧した王は、今はそこに腰を落ち着けて、ヴォーガルドが完全に静止するその時を待っているのだ。
 王の勝利はほとんど確定しているかのように見えるが――唯一の光明はミラベルだ。
 ウツロイの館を急襲した王は、そこにいた全ての人を凍りつかせ、誰も侵入できないよう固く門を閉じたのだが、その渦中にいてミラベルは、ただ一人逃げ延びたのだ。
 一体どうやって王の魔の手から逃れたのか。きっとミラベルはウツロイの神に祝福されているのだと、人々は考えた。彼女は王の呪いに抗う力を神から授けられたのだと。
 つまりヴォーガルドを救える英雄となれるのはミラベルしかいないというわけだ。
 人々から注目され期待される――内気な彼女にはさぞかし荷が重かろうと思う。

 僕がミラベルと出会ったとき、彼女はすでにイザボーやオディールと行動を共にしていた。王を倒すには、館の門を開けるオーブを入手する必要があり、その目的を果たすべく、仲間とともに危険な冒険を繰り広げていたのだ。
 ある日、ミラベルたちが手強い敵――王が生み出した「哀し身」に苦戦しているところを、通りがかった僕が手伝った。哀し身とは、王にやられた人々のなごりのような「敵」だ。嘆きや哀しみでできているそのなごりは、もう敵も味方もわからず闇雲に襲ってくるのだとオディールが言っていた。
 戦闘が終わると、引き続き力を貸してくれと彼らに頼まれた。他にやることもなかったから、僕は仲間に加わることにしたのだった。
 それから何週間かしてボニーと出会い、今のパーティーになった。
 旅の途中でヴォーガルドの町をいくつも訪れた。完全に時間が止まった町も、まだ無事な町もあった。
 僕らは迫り来る呪いを慎重に回避しながら、全員で旅を続けたんだ。

 ウツロイの神の祝福に応えるために、愛する館を救うために、そしてヴォーガルドを救うために侍祭ミラベルは健気に戦ってきた。
 戦士であるイザボーはヴォーガルドの防衛隊が協力を断ったと知り、ミラベルに同行するようになった。
 カ・ビューという国から訪れた研究者のオディールには、ヴォーガルドをもっと知りたいという探究欲があったが、ミラベルと行動を共にする理由はそれだけではなく、彼女曰く「一国の命運をひよっ子たちに委ねるなんて、考えただけで胃に穴が空く」ということらしい。
 一方ボニーは、呪いによって凍りついた姉を助けるために仲間に加わり、僕は他にやることがないから仲間になった。僕だけ動機が曖昧だって? そうかもね。
 けれど、ここにきて思う。みんなと旅をする以外の選択肢なんて僕にあっただろうか?

 やがて行く先々の人々から『救国の英雄』なんてもてはやされるようになったけれど、僕たちにできることなんて限られている。そんなこと人々も分かっているだろう――それでも、何かに縋らなければ迫り来る呪いの恐怖に耐えられないのだ。だから僕らはその呼称を甘んじて受け入れている。

 あるときミラベルから、国を救う旅に同行して大丈夫なのかと訊かれたことがあった。希望のない冒険にみんなを引きずり込んでしまったことを、彼女は引け目に思っていたんだ。
 僕は彼女を安心させたくて、みんなとの旅は自分にとって一番幸せな時間だと答えた。
 率直な感想だったのだけれど、ミラベルは不服そうだった。
 正直、思い出すだけで穴に入りたくなる。ミラベルのような問題を抱えている人に、あのタイミングで言うには不適切な言葉だったと思う。

 これまでの冒険や仲間との出会いと絆、オーブを手に入れるまでの悪戦苦闘は描かれないのかって? 一大スペクタクルなエピソードは山のようにあるけど……ああ、いきなり魔王直前から始まるなんて物語の構成としておかしいってことか。
 けれど今から過去の冒険譚を語っている余裕はない。
 静止の呪いは最早この町と館を除いて、ほぼ国全土に行き渡っているんだ。
 僕たちには時間がないし、後ろを振り返る余裕も、ましてや後戻りもできない。
 どんなかたちであれ、明日にはこの旅が終わる――

 町を散策しながら過去の回想をしていたら、ふいに声をかけられた。
「ほぉ? そこに誰かいるのかい?」
 目を向けると杖をついた老人がいた。目は閉じられている。
「いるよ。こんにちは」
「おお、どうもこんにちは! 聞き覚えのない声だなぁ……もしかして救国の英雄のお仲間かな?」
 ああ――この人、盲目なのか。最近とある事故で左目を失った僕は、目の不自由さについて助言をもらいたい衝動にかられたが、それはさすがに不躾すぎだろう。ここは自制して「そうだよ」とだけ答える。
 すると彼は「やはりな」と嬉しそうに頷いた。
「お会いできて嬉しいよ。先刻別の仲間にも会ってね。お菓子の匂いをさせていたよ……」
 成る程彼はボニーに会ったんだろう。老人の畑を褒めたボニーのことを嬉しそうに語り、育てた野菜を少し持って行っていいよと伝えたという。
「だからね、君たちは今夜、その野菜を食べられると思うよ」

 すぐ近くにある畑へ向かうと、件の野菜達をなぜか不機嫌そうな顔で睨みつけているボニーが視界に入った。僕が声をかけると、ボニーはその表情を貼り付けたままこちらに顔を向ける。
「……フラン。……」
 うっ。この独特な緊張感、相変わらずだな。やれやれ。
 小さな怒りんぼ。ボニーは齢十にも満たない、大人から愛され保護されるべき正真正銘の「子ども」だ。なぜ危険を伴う冒険の仲間に普通の子どもが加わっているのかって? そんなの、ほっとけないからに決まってる。
「……何か用か?」
「時計台でお泊まり会をやるよ」
「お泊まり会? バッカみたい。シフランの思いつき?」
 なんだよぉ……くじけそうだ。
「ミラのアイディアだよ」
「へえ。それはいいアイディアだね。オマエは思いつけなかったわけ?」
 この刺々しい言葉でも分かるように、僕は彼に嫌われているようだ。星たちよ、ボニーとどうやって付き合っていけばいいですか?
「……ボニーは、明日のことが心配?」
「ううん。ちっとも心配してない」
 嘘だな。
「お姉さんはきっと大丈夫だよ」
 そう言うと彼は声を荒げた。
「姉ちゃんのことを言うな! それに、姉ちゃんのことは心配してないよ……今いる場所から動くわけじゃない」
 ボニーのお姉さんはバンブーシュという集落にいる。ここから何百キロも離れた海辺の村だ。何ヶ月か前に、王はその村の時間を止めた。明日、王を倒せなければ、ボニーのお姉さんが再び動くことはない。
「ところで……これが終わったら何をしたい?」
「王を倒したら? バンブーシュにいる姉ちゃんに会いに行く」
「それから?」
「……それから、姉ちゃんをハグする」
「それから?」
「……それから、やれることはやったんだって言う」
「それから?」
「その時シフランはいないから、オイラにバカな質問はできないぞ、このカニったれ!! オマエはどうすんだ? 何をするつもり?」
 僕は煙に巻くような言葉を次いだ。
「僕は宇宙に行くよ」
「なんだよ『宇宙』って。どうせ行けないだろ」
「行けるよ」
「…………うそ。ホント!? どうやって?」
 こういう素直に信じちゃうところがお子様だし、そこが可愛いんだけどなぁ。僕はお茶目にウインクしてみせた。
「ひ・み・つ☆」
「……そういうとこがヤなんだよ、シフラン」
 あちゃー。
「用はそれだけか? ふーん」
 それじゃ時計台でね。素っ気なくそう言って、ボニーは再び野菜を睨みつけるという謎の作業に戻った。

 次はオディールに声をかけようかな。僕は町で唯一とも言える雑貨店に向かう。
 狭い店内に入ってすぐ見えたのは、商品を眺めているオディールの姿。彼女はすぐ僕に気づいた。
「おや、シフラン。よく休めたようだね。世界の終わりを前にして、こんなにくつろいでいるきみを見られるのはよいものだ。それで、何か用かな?」
 鋭くて好奇心旺盛。人生経験豊富な研究者である彼女の印象は、ズバリ「学校の先生」だ。あたたかく子どもを見守るというより、厳しめに教育するほうの。何を研究しているのかは、頑なに教えてくれない。
「時計台でお泊まり会をするよ。ミラベルの発案でね」
「お泊まり会? やれやれ……きみたちは本当にコドモだな」
 実際、中年女性(本人曰く「おばさん」)である彼女からしてみれば、僕らはまとめて子どもに見えるのだろう。
 心配事を忘れるためだと僕が言うと、オディールは頷いた。
「そうなんだろうな。まあ、参加するよ。かわいそうなボニファスには必要だろうから。私たちみんなに必要かもしれないな」
 そこまで言って、ふと思い出したように続ける。
「だが、部屋には3つしかベッドがないだろう? 当然だが私は1台を占領させてもらう」
 ああオトナには逆らえないな、特に彼女には。
「ミラとボニーが一緒に寝て……」
「ミラベルとボニーが? それじゃ、床で寝るのはどっちだ? きみか、イザボーか?」
「僕とイザは一緒に寝るよ?」
「……面白い。とにかく、後で行くよ。時計台に集合というのは、もう決めてあったんだし」
 そうだ。待ち合わせは時計台ってもともと決めてあったのに、みんなに知らせてまわる必要なんてあったのか? 時計台でみんなを待っていればよかったじゃないか。
 まあいいや。僕は再確認するように言葉を紡ぐ。
「……明日は王と戦うんだね」
「そうだな。ちゃんと準備ができていることを願うよ。王と、王の破壊が作り出した哀し身……彼らは私たちの時間をスローダウンさせたり、時間を完全に止めたりできるクラフトの力を持っている。つまり、明日もきみが頼りだ。きみのスピードが決め手になる」
「つまり、僕にまた先頭になれって?」
「よければ、いつも通りみんなを先導してくれ。罠を回避して、みんなを助けてきてくれただろう? それを変える必要はないと思う。遭遇する敵の情報については、いつもどおり私を頼ってくれていい」
 ボニファス以外は戦闘に加わるが――と彼女は少し悩ましい表情を浮かべる。
「ボニファスにも何か頼むかもしれない。子どもに何か仕事を与えておくのは、きっといいことだ……ふん、戦術の話など、つまらないな。おしゃべりは終わりにして、館の最上階へ向かうのに必要な道具を買うとしよう」
 あれ? わかったかも。僕は唐突にひらめいた。
「オディールの研究分野って『戦術』?」
「呆れた。研究分野を当てるのをまだ諦めていなかったのか? 違うよ。私の研究分野は戦術じゃない。イザボーも先週同じことを言っていた。遅かったな」
 うう……彼女には頭が上がらないし、毎度へこまされてばかりだ。それに、最初に出会ったときから、なんとなく壁を感じる。少し警戒されている、ような。僕の気のせいだと思いたいけれど。壁に関しては僕も人のことは言えないし。
「諦めるんだな。私の研究分野がきみたちに分かるはずない。永遠の謎になるだろうね」
「諦めないよ僕は。それはそうと、この戦いが終わったら、何をしたい?」
 ついでだ、僕はみんなに聞くことにした。
「王を倒して、まだ生きていたら? そこまで自信があるとは、うらやましいよ……たぶん、私はカ・ビューの家に帰るだろうな。もう何年も故郷を見ていない。ミラベルとイザボーに会う前は、ヴォーガルドを旅してさまざまな町や名所、文化を見るのが目的だった。ミラベルとの旅で、この目的は達成できたから」
「研究のための旅?」
「……そうだ」
「研究分野は……文化に浸る学?」
「『文化に浸る学』なんて分野はないよ、シフラン」
「だけど、きみはその分野に人生をかけて築こうと……」
「私の過去を捏造するのはやめてくれ。きみはどうなんだ。何をするつもりだ? 明日、王を倒したら。きみも自分の国に帰るのか?」
「自分の研究分野を決めるよ」
 僕ははぐらかす。
「やれやれ……よし。それじゃあ、後ほど時計台で会おう」

 図書館前を横切ったときミラベルの姿が見えた。気になったので声をかける。
「気分はどう?」
 この町に来てから、彼女はどこか落ち着きがない。
「わたしの気分……? あっと、ドーモントに戻ってどういう気分かってこと?」
「そう」
「懐かしい気持ち。やっぱり、昔暮らしていた土地だから。勉強したり館で働いたりもしていたけど。ドーモントそのものは特に変わっていないけど、館は……ここから見ても分かるでしょ。いびつなかたちになってる」
「うん」
 実際、北の丘から見えた館は、屹立する魔王の塔みたいに邪悪で禍々しかった。王が館に攻め入る以前は、善良な人々が住み、学び、祈りを捧げる平和な建物だったはずなのに。
「あのとき、逃げられたのはわたしだけだった。たくさんの人が傷ついてるはず。もしかしたら、みんな、もう……」
「明日、全員救い出そう」
「……うん。そうだよね。前向きにいかないと……ごめんね」
 謝る必要なんてないんだけど。
「ところで、この戦いが終わったら何をしたい?」
「さ、先の話をするのはよくないんじゃない? そうね……まずは館のみんなの無事を確かめたい。王を倒せばまたみんなの時間が流れ始めて、固まった状態から解放されるはずだから! それから……侍祭長とお話して、待たせてしまったことを謝りたい。王を倒すのは侍祭長のはずだった。あの方だったら、わたしよりずっといい働きをしてたと思う。王に時を止められさえしなければ……それで謝った後は……また旅に出ようかな? だってだって、わたしはウツロイの館の侍祭だから、つねに変化を求めないと! 一般の信者よりも積極的に! ……だから、巡礼の旅に出るのもその一環なの。わたしはまだやっていないけど」
 息つく暇も無いくらいよくしゃべるミラベル。ちょっと過剰なくらいに。
「この冒険自体が巡礼の旅に数えられたたりしないの?」
「違うんじゃないかな。わたしは巡礼とは思わないけど? 巡礼は新しい物事を学ぶ旅。新しい土地を見て、自分と、出会う人々に変化をもたらすことが目的なの。この冒険も巡礼になっていたかもしれない。でもわたしはちっとも変わってない。前と同じミラベルのまま」
 ……出会った頃とはずいぶん変わったように思うけど、僕が決めることでもないし……
「あなたはどうなの、シフラン。終わったら何がしたい?」
「僕も巡礼の旅に出るかもね」
「えっ!? すごい!! でもあなたは……ああ、ウツロイたまえ! あなたもウツロイの信仰に入ろうと思ってるの? もしそうなら館のみんなも喜ぶわ! パンフレットあげるね!」
 冗談っぽく言ったのに本気にされた。ヤバい。さすがにパスだな。
「いや、僕はずっと今のままでいいや」
「それでいいの……? そう……分かったわ……」
 あと声をかけていないのはイザボーだけだ。僕はそう言ってミラベルと別れた。

 願いの木は、町のどこにいても見えるほど大きな樹木だ。
 のんびりそちらへ向かうと、木の前にイザボーがいた。相変わらずの巨躯。どちらも見上げるような大きさだ。
 彼は願いの木に頼むことをじっくり考えているようだった。
「イザ!」
 にっこり笑って僕が近づくと、陽気で大きな返事が彼の口から飛び出す。
「シフ!」
「イザ!!!」
「シフ!!!」
「イッザァァァァァ!!!」
「シフ!!!」
「イ」
「よしよし、そこまでだ! このやり取りは、ここまで!」
 ううっ、冷静に止められた。
 えええぇぇと不満声を上げつつ「なんだこのアホな挨拶は」と僕も思う。アホだからこそいいんだけど。
「こうすべきなんだよ、シフラン。俺は願いの木を見てただけなんだ! この木、かっこいいよな?」
「ああ、そうだね……」
「同じ気持ちで嬉しいよ」
「この木はかなり……」
「なんだって?」
「キになるね」
「ハハハハ!!! そうだなっ! いいぞ! ウケたぞ!」
 僕の放ったダジャレに、イザは毎回とてもイイ反応を示してくれる。
 イザボーは大声で笑いながら片手を上げて僕の肩に向かって伸ばし――その手を止めて、腕を下ろした。
「ハハッ……ウケたウケた。俺はもう行くから、好きなだけここにいるといい。俺が行く前に、話したいことはあるか?」
「そうだなぁ」
 僕は、この木はなんなのかとイザボーに問うてみる。
「あれ、願いの木のことを知らないのか? これは、よくある大きな木だ。でも、ウツロイの館を信仰する者にとっては、特定の場所にある大きな木は、願いの木なんだ! 力の宿った木で、願いごとをすることができる。頼みごとの方が近いかな? たとえば『防衛隊の試験に合格させてください!』とか。これは完全なる架空の例だけど」
 架空だって? イザボーは以前、防衛隊にいたはずだけど。この体格で誰よりも勇敢だし、実際戦闘でもかなり強いし、納得の職業選択だ。
「伝説の木に、試験に合格できるよう頼んだの?」
「そして見事に合格したんだぜ。ありがたいことにな。もちろん、勉強もちゃんとやったから、木だけのおかげじゃない。でも、少しは役に立ってくれたかも! シフもお願いごとをするといいぞ。明日は決戦の日なんだしな!」
 僕は訊ねる。
「……戦いが終わったら、何をしたい?」
「王を倒したら? すごいな、シフ! 自信があるんだな! すげえや! 気に入ったよ! 俺はジュヴァンテの我が家に帰ると思う。他には何も予定ナシだ!」
 力強く「!」が多い豪快な語調だが、素というより意識してそうしているようにも思える。彼はかすかに憂いの表情を浮かべ、遠い目をしつつ言葉を続けた。
「……ジュヴァンテは今頃どうなってるかな。あそこを発ったときにはまだ無事で、時間も流れていたけど、今はもう王の呪いに呑まれただろうな……」
「それじゃあ……元の仕事に戻るの?」
 防衛隊。イザボーの元職場。しかし彼は首を横に振った。
「いや、防衛隊の仕事にはもう魅力を感じないんだ」
「そうなの?」
 意外だ。
 彼は言う。ずっと防衛隊に憧れていたと。
「身の回りの人たちや自分の街を守る仕事だからな! 困っている人たちを助けるんだ。木に登ったネコを捕まえたり、お年寄りの荷物を運んであげたり。でも、ミラがジュヴァンテに来て、支援を求めた。ドーモントの館が奪われた後のことだ……俺は覚悟ができてた。支援しようとするジュヴァンテの防衛隊みんなを支援するつもりだった。なのに、防衛隊のみんなは、なんて言ったか知ってるか?」
 知らないけれど彼の表情から大体想像はつく。
「みんながあんな風に言ったのは、恐怖からだってはっきり分かった! ミラのことを、盗賊かもなんて言ったやつもいた! つまり、ヴォーガルドを救うことに手を貸すのは、みんなにとって急に荷が重いことになったんだ! だけど、怖いから手を貸さないなんて……俺には受け入れられなかった」
 そんなのいくじなしだ。だから防衛隊をやめた。もう戻らないつもりだ! と言い捨てた彼は「他のことをするさ」と微笑む。
「新しいことに取りかかるタイミングなのかもしれない! 秘密にしてたけど……俺、服のデザイナーになりたかったんだ! どこかに弟子入りするのもいいかもしれない……!」
 それは、全然知らなかった。僕は率直な感想を口にする。
「すてきだね、イザ」
「ヘヘッ……シフなら分かってくれると思ってた! シフはどうするんだ? 王を倒したらどうするつもりだ?」
「コメディバーを始めるよ」
「おい、ホントか? マジで言ってる?」
 舌を出しながら本気だよと言う僕に、彼はうんうんと頷いた。
「そうか……もっとたくさんの人に、シフの面白いダジャレを聞いてもらえるってことだな……」
 この愛すべき偉丈夫はすぐに僕の話を信用してしまうのだ。少しは疑うことも覚えた方がいいと思いながら、なんとなく気が向いたので、僕は町でもらった花を差し出した。
「お褒めの言葉をありがとう。お礼に、お花をどうぞ」
「え、なんだ? 花? ……俺に!?」
 あれ――なんかイザボーがすごく驚いている。超びっくり!!! みたいな顔。僕そんなに変なことをしたかな。ちょっと反応が過剰じゃない?
「俺にって、きみしかいないじゃないか」
「ハハ、やった!!」
 イザボーは花を受け取ると、手のひらでそっと包み込んだ。
「……ありがとう、シフ……俺……ずっと大切にするよ!」
 うれしそうだ。そんなに好きだったのかな、花が。
「……あ、そうだ。ミラベルの提案で、時計台でお泊まり会をすることになったよ」
「お泊まり会? やったぜ、カニったれ! だけど、時計台にはベッドが3つしかないだろ? ボンボンとミラが一緒に寝て、オディールが1台を独り占めしたら……また俺たち2人で一緒に寝るんだな、シフ! 俺は左側を使うぜ!」 
「いいよ」
 イザボーもオディールと同じ意見だな。ベッドの争奪戦をしなくてすむのはいいことだ。
「決まりだ! でも、ブランケットを独り占めするのは、今回は勘弁してくれよ。夜は寒くなりそうだから」
「あぁ……うん、そんなこともあったかな」
 そういうこともあってみんな寝るときの事にこだわるのか。うん。少しは反省しておこう。
「よし! 俺は行くよ。後で、時計台で会おうな!」

 イザボーが去り、誰もいなくなった願いの木の前に立ち、鬱蒼と生い茂る梢を見上げる。
 僕は木の幹にゆっくりと近づいた。葉っぱをつかめそうだ。
 願いの木に願い事をするなら、葉っぱが必要だ。
 よさそうな葉っぱを探して、考える。
 ふむ……
 大きな木みたいに力のあるものに何かを頼むってことは、祈りのようなものだと思う。
 ここの来る人たちはきっと、ヴォーガルドの無事を祈願しているんだろう……
 みんなが願っていることを、僕も願う必要はない。その願いはもう、木に聞き入れられているだろうから。
 でも、ヴォーガルドを救うというみんなの願いよりも大きなことを願うのは、みんなの願いを払うようで、悪い気がする。
 じゃあ、小さいことを願おう。シンプルなこと。ちょっといいことだ。
 少し考えて、決める。
(……イザボーが作った服を着ること)
 イザボーと旅をするのが、こんなに楽しいとは思ってもみなかった。いつもジョークを言い合うけど、これまでに現実的な、大切なことを話したことはない。服のデザイナーになるのが夢だと教えてくれて嬉しかった。イザボーにぴったりだ。イザボーと話していたいし、僕が着る服を作るのを見ていたい。彼が作ったものを着る僕を見て、笑顔になるイザボーを見ていれば、僕も幸せな気分になれるだろう。
(みんなとずっと一緒にいたい!)
 選んだ葉っぱを見つめ、心の中で願い事を唱えた。
 葉っぱに願い事を吹き込み、3回唱えて、葉っぱを折りたたみ、願いを閉じ込めた。
 これでいい。葉っぱを静かに手から離し、町の方へ戻ることにした。
 今夜はお泊まり会だ。
 もう一度木を見上げると――僕の願いを込めた葉が、ふわりと風に舞っていた。

 時計台に着いたときは夕刻を過ぎ、周囲はすっかり暗くなっていた。
「シフラン、来てくれたんだね!」
「待ってたんだぞ! さあ、中へ入ろう! 俺、ちょーーーー腹減ってんだ」
 ミラベルとイザボーが僕を迎え入れてくれる。
 僕もお腹が空いた。ボニーが食材を掲げながら元気よく時計台を指さす。
「食べもんいっぱい仕入れたぞ! 早く入ろうぜ!」

 たっぷり時間をかけて食事をした。その後。
「ふぅ。ボンボン……めちゃくちゃウマカッタ~!」
「料理の腕がどんどん上達しているな、ボニファス。今日のサモサは実に美味だった」
 イザボーとオディールの賞賛に、「おやつ係」を任命されているボニーの顔が綻ぶ。
「ほんと? マズくなかった? 気に入ったの? そ、そんなのうまいに決まってんだろ。オイラはマスター料理人だからな!」
「シェフのことか」
「シェフ料理人だからな!」
オディールに突っ込まれ言い直したボニーだけど、やっぱりなんか変な単語。ミラベルがにこにこしながら、そんなやりとりを聞いている。
「最っ高の料理だったよ、ボニー! 今夜はぐっすり眠って、明日は元気いっぱいだね!」
「ちょっと食べすぎたぐらいだよ……もう動けそうにない……」
 食べすぎ? 僕はもっと食べられるけど。みんなと同じく食べたつもりだけど、今日はまだ空腹感が拭えない。何故だろう。
「おっ、シフはまだ食べ足りないのか?」
「フランはたくさん食べたな! オイラの料理がそんなに好きなのか?! ほら、そんなに腹が減っててオイラの料理が好きなら、もっと食べていいぞ」
 ボニーがくれたニンジンスライスをもぐもぐといただく。
「まだ食べられるのか……こんなに小柄なのにどうやって……」
 呆れ顔のオディールに成長期だからねと舌を出す。
「成長期なのにお酒を飲んじゃうの?」
「この中じゃ年上のほうじゃなかったっけ?!」
 ミラベルとイザボーのツッコミをうけて、僕はお茶目にウィンクしてみせた。

 ふと、ミラベルが居住まいを正す。
「……あの、みんな……ちょっと、話してもいいかな?」
「どうしたんだ、ミラ?」
 なんとなく言いにくそうにしている彼女に気づいたイザボーが、優しく話の先を促した。
「あのね……わたしたち、しばらく一緒に旅をしてきたでしょ? 楽なときばかりじゃなかったけど、みんなに出会って……ヴォーガルドのあちこちを旅して、館の門を開けるためのオーブを手に入れて……わたし一人じゃ到底できなかったよ。だから、ありがとうって言わせて。ここまで一緒に来てくれて、ありがとう!」
 そう言って視線を下げるミラベルの表情は――硬い。
「明日は、ついに王と戦うんだね。ヴォーガルドを静止と沈黙に追い込んだ張本人と……ヴォーガルドのほぼ全土で時間を止めた張本人と……わ、わたしはみんなが同じ目に遭わないように全力を尽くすよ。でも、もし来たくなかったら、もうお家に帰りたかったら……」
「ミラベル、今さら言うことではないんじゃないか?」
 彼女の言葉を遮ったオディールにミラベルが向けるのは、悲壮感に染まる表情。
「……そ、それはそうだけど……わたし……」
 そんなミラベルの肩を、イザボーの大きな手が優しく包み込む。
「マダム・オディールが言いたいのは、みんな一緒に行くってことだよ!」
「その通りだ。せっかくここまで来たんだから」帰る選択肢などないな、とオディール。
「俺たちがきみを置いて帰るなんて思うか? きみをひとりっきりにして?」
「ついてくぜ、ベル! みんなで力を合わせる! 心配すんなって!」
 みんなに続いて僕も、心からの言葉を告げる。
「きみと一緒に行くよ、ミラ」
 そう、何があろうと、彼女ひとりで行かせたりしない。それはもう決めたことだ。
 それまでの不安そうな表情から一転、ミラベルは破顔した。
「あ……あああ、ありがとう……!」
 イザボーとボニーがミラベルをひしと抱きしめる。一方僕とオディールはいつも通り、少し離れて立っている。芝居だったら観客が「ああ」と嘆息するところだ。
「……さあ、もう寝よう!」
「明日は忙しくなるぞ!」
「そうだな……ではみんな、おやすみ」
「おやすみなさい!」
 それぞれが寝る支度を終えて、部屋の明かりを落とした。

 深夜――
「シフ……おい……なあ、シフ。シフラン。シファルーニ」
 外で鳴いている虫の声にまぎれて、すぐ横から声が聞こえてきた。
 イザボーが僕の名前を囁いているのか――寝返りを打って話を聞くことにする。
「あっ、ごめん……起こしちゃった? 言わなきゃいけないことがあるんだ。きみさえよければ」
「……」
 僕の睡眠を邪魔するとは。けれど僕がどれだけ睡眠を大切にしているか知っているわけだから、よほど大事な話なんだろうなと思い、眠気をこらえて僕はうなずいてみせる。
「ああ、うん、よかった。じゃあきみに伝えよう! きみを起こしてまで言いたかったことを! ハハ! うん、よし。それで……きみに伝えないと、いけないのは、つまり、俺……には今、特に言うことがないってことだ。でも言うよ。明日、えっと、王を倒したときに。オーケー?」
 何か要領を得ないな。それにこれって死亡フラグってやつじゃない?
「…………イザ、むしろ不吉に聞こえるんだけど」
「そ、そういうつもりじゃないんだが??? 俺は、あの、今は言いたくないんだ。きみの気が散るかもしれないからさ。それは避けたほうがいいだろ? だから、えっと、王を倒した後に言おうかなって。それでいい?」
 僕に何を言いたいっていうんだ? 彼にとっては大事なことみたいだから……僕に言えることは――
「分かった」
「……よし!」
 何故か嬉しそうにそう言った瞬間、イザボーの顔面に枕が叩き込まれた。投擲の犯人は隣のベッドのボニー。ミラベルも怒っている。彼らの顔にはしっかりと「うるさいよ!」と書いてあるのだった。
「おい、こっちは寝ようとしてんだけど!」
「そうだよ、イザボー! 寝ようとしてる人もいるんだよ! ペチャクチャ言ってないでもう寝なよ!」
「じゃあ侍祭さんもペチャクチャ言うなよ! マダム・オディールが起きちゃうぞ!」
 言葉の応酬がヒートアップしそうになる。やばいぞ。オディールが……
「もう起きている」
 闇をも切り裂くようなオディールの鋭利かつ苛ついた声。ひっと息を呑んで振り向く二人。ついでにイザボーも僕も、猛獣を前にした時のように硬直した。
「だがおしゃべりが続くようなら、寝床から出ざるを得ない。私が寝床を出たら何が起きるか、きみたちは知らないほうがいい」
「ごめん」
「ごめん、マダム……」
「ご、ごめんなさい……」
 こえー、熟女の怒りってこえぇー! というみんなの心の声が聞こえてくる……

 一瞬で静かになった。

 イザボーの表情がくるくる変化して、寝る前の一言。
「おやすみ、シフ!」
 仲間に囲まれると、すごく安心できる……
 眠気が襲ってきた。

 翌日――僕らは館の門前に立つ。
 全ての元凶である王がここにいるのだ。
 ものものしい大きさの門を見上げて、驚くイザボー。
 固く閉ざされた門を開けることができるのは、長い旅と冒険を経て手に入れたオーブだ。
 僕ら五人はそれぞれの手から取り出したオーブでついに扉を開け、館内へと足を踏み入れた――

 当然のことながら、王のいる場所へ直行という訳にはいかない。
 正面には複数の哀し身が待ち構えていたのだ。
「邪魔!」
 これまでの冒険で経験値を上げ、みんな強くなっている。特定の手の形をつくり繰り出すクラフトスキルの数々を駆使し、襲い来る敵を突破するのは、だからそれほど難しくはなかった。
「ちょっと待って」
 敵を退けてまっすぐ進んだ廊下に差し掛かったとき、ミラベルが足を止めた。
「ここ……危ないかも」
「どういうこと?」
 みんなを静止したミラベルが、この廊下について語り出す。
「思い出したの……館の侍祭長から何度も聞かされてたから。彼女が言ってた。ここは『死の廊下』だって!」
「死の廊下? そいつは穏やかじゃないな」とイザボーが目を見開く。ミラベルも緊張感を崩さない。
「もともと館は安全な建物だった。しかし王が来てから、一部の罠が作動するようになったかもしれない……つまりそういうことか?」
 オディールの言葉を聞いて、僕は不敵に笑う。
 罠? 罠だって? 
「じゃあ僕の出番だ」
 一歩前に足を踏み出す僕。
「そう、きみの出番だシフラン」
 みんなの前に立ち、罠の発見や解除をするのが僕の仕事だ。イザボーが「頼りにしてるぜトラップマスター」と言った。さあ、みんなの期待に応えないと。
 ミラベルを安心させるために一働き、というのは実はよくあることだ。
 さてと、調べるか……
「うーん」
 廊下のあちこちをウロウロしていくつか柱をチェックしたけれど、怪しげなスイッチも罠も見つからない。特に問題はなさそうだった。
 年長の侍祭はいつもここで死者が出たって言ってたもの、だから罠があるはずだよとミラベルはまだ心配している。
「踏むと作動するとか、そんなようなやつが! あるいは……時間で作動するのかも! ここにずっといたら、そのうち……」
 おいおいやめてくれよ、と僕は思う。
「変なものは何もないよ」
「でも絶対あるって!」
「なあ、ベル。そんな心配すんなって。シフランはいろいろヘタっぴだけど、罠には詳しいんだぜ」
 ボニー、ちょっと。
「そうだな。こんな序盤からパーティーの先頭メンバーに不信感を抱くようだと、先が思いやられる」
 オディール、ちょっとちょっと。
「で、でも――」
 僕はミラベルに、安心してくれよと笑顔を向ける。「まだ誰も死んでないだろ?」
「それもそうだね……」
「この廊下に来てからしばらく経つ。そしてシフランはあちこち歩き回っている。踏むと作動するタイプの罠だったら、とっくに死んでるさ」
「その通り。だから大丈夫だ!」
「あら……そうだね! うん、分かった。信じる! 心配しちゃってごめんね……ちょっとピリピリしすぎたみたい……」
「大丈夫だよ、ミラ。ほらね? すべてオッケーだ」
 にっこり笑って廊下の中央に立った途端に、
 僕の頭上から大きな岩が――
 聞いたことのないような嫌な音がした。
 今までにない感覚だ。巨大な岩に身体が押しつぶされると同時に、

 胃が ひっくり 返り そうに なる そして
 そして――

 僕は死んでしまった。


◆ACT2

 目覚めたのは草地。
(へっ?)
 ミラベルが僕を起こしに来た。
「シフラン? 朝だよ。っていうより、昼……だね。お昼寝してたの? シフランらしいね……こんな時にすやすや眠れるなんて、あなたしかいないもん!  でも、休めるときに休むのはいいことかも……明日に備えなきゃだよね。いよいよ王と対決するんだから」
「は?」
「……まだ寝ぼけてるんだね……」
 横たわったまま彼女の顔をまじまじと見上げる。
「もう……しょうがないなぁ……もう少し寝ててもいいけど、寝すぎはよくないよ! 起きたら町にきてね」
 聞き覚えのある台詞を言い終えて、ミラベルが歩き去る。

 ……あれ? はあっ? 待て待て。
 死んだよね?
 死んだはずだ。間違いなく死んだ! 夢じゃない。館を探索していたらデカい岩が落ちてきて……気づけばまたドーモントの草地。ミラベルが自分を起こそうと声をかけて……あの言葉は……うん、やっぱり前にも聞いたよね?

 それにしても、あああああ! あの罠! バカタレ! とんだ間抜けだ! 罠を解除するのが僕の役目なのに、真っ先に引っかかるなんて! 王の姿なんてこれっぽっちも見かけなかった! あー、自分の役目なのに! 行き先を確認して、罠があったら解除する、だろ!! 自分の仕事すらまともにできずに、間抜けの役立たずのボンクラだったせいで死んでやんの! 
 死んだんだぞ! デッドだ、デッド! 体がぐしゃっと潰れるのを感じた。なのに草地で寝ている。生きている。肌がかゆくて胃が痛い。死んだのに!!
 口を手で覆って叫ぶ。
 星たちよ! 僕はバカで役立たずで間抜けです!
 あああああああああああああああああああああああ!


 ………………よし、落ち着いた。
 深ぁく息を吸ってぇぇぇぇぇ……吐いてぇぇぇぇぇ。
 ふぅぅぅぅぅ。
 震える手を背中に回し、思い切り体重をかけて草の上に押しつける。
 まとめよう。
 その1,僕は死んだ。
 その2,僕は生きている。ぺしゃんこにもなっていない。
 その3,今は前の日だ。ミラベルに昼寝から起こされた。
 つまり戻ったってこと?
 うん、あるよね。全然ある。
 完全に100%、どこからどう見てもあり得る。
 …………
 …………
 まぁとにかく、いつも通り先頭に立っていたんだ。死んだときの位置関係からして、岩が当たったのは僕だけだったはずだ。仲間は誰も死んでいない。犠牲になったのは、そう、自分ただ一人……
 危険そうな場所に行くときは、毎回自分が先頭に立つことになっている。そう決めておいて、本当に良かった。
 それにしても――またここだ。館に行く前の日に戻っている。
 ……どんなからくりだ?
 それに、なぜ?
 それにそれに……次は死なないようにできるだろうか?
 仕事再開だ、シフラン。国を救わなきゃいけないんだから。

 

 

 









 

角川武蔵野ミュージアムというところへ行ってきました。
 
どこが正面かわからない建物はインパクト大。

 
内部の「本棚劇場」はこんな空間。本だらけ。すてき。

 
こちらの壁面を用いたプロジェクションマッピング上演もあり。

 

本棚劇場に置いてある本は好きに手に取って、椅子に座ったりして読めます。

 
上の方は届かないけどね!(笑)

 
5階と4階をつなぐ階段へ続く通路。

 
視界が本だらけってだけでなごむぅ。とてもイイ空間だなぁと思うのでした。

うちにも壁一面のデカい本棚が欲しいな。
そんで押し入れにぎっしり保管してある古いマンガをずらっと並べたい。
 
 
1階にはマンガ・ラノベ図書館という空間もあり(別料金ですが)、
読みたい本があればずっと読みふけっていられそうです。
ザーッと見回したところ、私が読みたい本はなかったのですが。
というか読みたい本は電子なり紙媒体で買っちゃうからな……
ラノベがずらーっと並ぶ光景は壮観。
一時持っていたけど手放した本とかがあって懐かしい。
 
 
ここは大勢でわいわい行くより、一人で行って黙々と本に没頭するのが楽しいかも、
という印象でした。
 
周囲の「ところざわサクラタウン」には他に飲食店や書店、ホールなどがあり。
さらに近代的なデザインの
「武蔵野坐令和神社(むさしのにます うるわしき やまとのみやしろ)」(゚Д゚)…
通称「むさしのれいわじんじゃ」があり、
締切守り等のちょっと変わったお守りも入手できます。
 
全体的にけっこう堪能しました♪
 
 
 

今年の2月に発売されたゲーム「都市伝説解体センター」をクリアしました。
いやあ……久々に興奮した、面白かった!
物語が良い、キャラクターも良い、雰囲気が良い、演出がうまい、音楽も絵も良い。
ドット絵なのもイイんだよな、ファミコン時代のアドベンチャーゲームを彷彿とさせる。
私の好みドンピシャな、魅力的な作品でしたね。

発売後すぐ購入しつつ、二ヶ月ほど積みゲー状態にしてたんですが、
もっと早くにやっておけば良かったと後悔……
一つ前にやってたゲームが95時間もかかってたのでねorz

しかしこの作品、詳しく紹介するとネタバレになるので、
人にお勧めするのが難しい。
ただひたすら「いい作品!」としか言えない。

 

とりあえず公式のローンチトレーラー貼っときます。
PVだけでもワクワクするぅ。