裏に隠されていた「人々の本音」が、本流となって障害者本人を直撃した事件。
…それは、「乙武洋匡さんがレストランに入店拒否された後、彼自身の発信(ツイッター)によって大騒動に発展していった」事件のことです。(2013年5月の出来事)
私は、過去、何度か乙武さんに関する記事をブログにかきました。
ファンだったのか?といわれると…そうですねぇ、自分の中では、ずっと好印象を保っている存在です。
ただ、彼の著書を読んだのは、「五体不満足」一冊きり。
↑こんなんじゃファンとはいえませんかねぇ(‐^▽^‐)
彼がテレビ出演した姿で記憶にのこっているのは、ずいぶん古いもの。
現在の中年のお姿じゃなくて、若さキラキラの時。
「前向きな生き方をしている素晴らしい人」という前提はあるにしろ、若い女性たちから「ステキな異性」としてキャーキャー言われている場面を目撃しました。
その後も、お仕事や活動を通して、話題になる方であり、ニュースでお名前を耳にしてきたものの、発言内容をじっくり聞くとか…正直、してませんでした(;^_^A
レストラン入店拒否事件については、アメーバのお友達数人が、ブログでとりあげていたので、知ったのです。
この事件がおこるまで、乙武さんに好感をもち、応援していた人までが、「乙武さんには、がっかり」と言っていたので、どういうことだろう?とツイッターを見にいきました。
過去記事(限定記事)に書きましたが
自分としては、乙武さんに○、店主さんにも○です。(ふたりとも悪くないと思う)
双方にミス(落ち度)、あるといえばあるけど、人間性をうたがわれるレベルのことではない、と私は思うんですけどね…。世間一般的には、乙武さんは、ずいぶん叩かれていました。
まず、最初に感じたのは、この話は、「障害者差別の問題」ではなかったという事です。
『マナーの問題』ですよね?
それも、ちいさめの問題…。
店主さんは、障害者差別をしていない。(と私は思う)
自分の印象では、この店主さんは、相手が障害者であろうが、著名人であろうが、そういうことで態度を変える人ではないんじゃないかと…。
健常者で一般(無名)のお客様が、お店に対応不可能の要求をした場合も、やっぱり今回のような態度に出る人ではないかと。
「うちのスタイル、なんて言葉、出していません!」と否定なさっていましたが、(そして、それはホントかもしれませんが)、間違いなく「自分のスタイル」を持っている方だと、お見受けします。
店主さんは、「どうやりくりしても、受け入れ不可能」という理由で入店拒否なさいました。
入店拒否することで、迷惑を回避したというより、
「車椅子、あるいは、抱え上げる介助によって入店が可能かどうか、打診された」「可能か否か検討した」
↑これらのことを、手が抜けない時間帯に営業をまわしながら、やるはめになったため、乙武さんと対話したときは、「お店としては、すでに迷惑かけられている!」という認識だったのではないでしょうか。
入店前に、すでに迷惑=営業妨害に近い。。。こういうふうに思っており、怒りの感情をもって乙武さんに近づいていった。
怒りの感情を隠さず、「あなたは、お客さんとしてのマナーが悪いよね」と注意するつもりの人だったのではないでしょうか?
ここで、怒りを隠し、ひたすら低姿勢で『受け入れ無理なんです。申し訳ありません』と、入店拒否の無礼を詫び、相手の気分を害さず、おひきとり頂く道もあったと思いますが、店主さんの感情として、それはできなかったのでしょうね。
「事前の連絡ナシで、車いす入店の介助を求めるのはマナー違反」と本気で主張したのだろうと思います。それは、けして障害者差別ではなかったと思いますが、乙武さんにとっては、障害とプライドの問題に関わる事だったのです。
「入店拒否」と「あなたは常識がない人です、という批判」がセットになっていたから、「排除された悲しみ」を乙武さんにあたえてしまったのでしょう。
さて乙武さん側の落ち度は、店主が主張するように、予約時に、車いすで来店すると伝えていなかった点なのでしょうが、受け入れ不可について「申し訳ないですね」という態度で説明されていたら、乙武さんは、すみやかに納得したと思います。
感情的にこじれたのは、入店拒否に、でなく、入店拒否を告げる時の店主の態度に対してでしょう。
さらに乙武さんがツイッターで、店名を明かしたことについて、重大な「マナー違反」と捉えた人が多かったようです。
フォロワーが60万人以上もいる乙武さんが、批判相手の店名を明らかにして発信することは、、影響力が絶大なだけに、「暴力」になるそうです。。。
この件で、お店に対し、どれほどの営業妨害があったのでしょうか?
逆に「あの乙武さんと、やりあった店」として知名度があがる、とか宣伝効果はなかったのでしょうか?
私が思うに、ほんとうの営業妨害は、ネットの中のことでなく、リアルでお店に抗議電話や無言電話を入れることだと思います。
その行動の責任の大部分は、行動した本人にあります。乙武さんに「責任がない」とは言いませんが、全責任が彼に、というのは違うのではないでしょうか
総じて、ツイッターで店名を晒した事、予約時に車いすだと伝えていなかった落ち度、おもにこの2点について、乙武さんは批判を浴びていました。
批判意見のなかで、とくに印象に残ったのは、車いすを利用している方からの以下のような言葉。
『障碍者への風当たりを考えていない、傲慢な有名人の発言です。悲しいことですが』
『あなたのこのような発言が、我々のような人間への差別の目を強くしていることを自覚してください』
要するに、「ひとりの障害者の目からみても、乙武さんには介助してくれる人への気遣いや感謝が足りないように見える。そのような人が障害者の代表のようにふるまっている事、迷惑です」ということのようです。
ただ自分には、この一件で「障害者への差別が強まる」とは思えませんでした。
むしろ、多数の人々が、乙武さんと、一般の障害者をハッキリ区別したんじゃないですかね。
障害によって社会的弱者という立場になっている方もいるが、乙武さんはちがう。
障害者であるけれど、ネット社会では圧倒的な強者。
特権階級にいるクセに…という反感がすごい勢いで噴出したように見えたんですが。
わたし個人は、乙武さんに○を出します。
べつにこの件でキライになっていません。
賢い彼は、この騒動を、きっと教訓にするでしょう。
過去記事→エロスの神から逆差別① に、乙武さんのことを書いておりまして、あわせて彼と同じ障害を持って生きぬいた女性のことを書きました。
その女性は「自分で自分を卑しめるのが、いちばんの罪悪」という信条をもっていらっしゃいました。
私は、乙武さんにもそれを感じるのです。
介助が必要な場面で、卑屈になることなく介助をもとめる、それが自然にできる。乙武さんの素晴らしい点だと思っています。