「そういえば一番得意な教科って何なんだ?」
「あら、何かしら、突然、気持ち悪いわね。私が訊けば何でも答えると思ったら大間違いよ」
「いや、テストをするとどの教科も満点だしさ、僕から見ると得意も不得意も無いように思えるんだ。でももしかしたら得意な教科や不得意な教科があるのかな、と思ってさ」
「あらそう。以前も話したと思うけれど、音楽と体育は確実に苦手教科でしょうね。成績にも表れているもの」
「でもそれは実技が苦手なだけだろ?苦手っていうか参加しないしな……」
「うるさいわね。いない方がマシな実力だから自重しているのよ。そういう自己評価に基づく自主性を評価しないのが今の教育制度の最大の欠点だと思うわ。【やれば出来る】とか【やってみたら楽しいはずだ】とか、そんな風に可能性の無い人間にまで無理やり夢や希望を持たせるのは果たして正しいのかしらね。未来に挫折しか待っていないなら最初から避けて通れば良い、と教える事も大切だと思うわ。実際にそうやって生きていく事は可能だもの」
「まぁでもそういう事をすると出席率とかが減っちゃいそうだし、そこはなるべく学校としても避けたいんじゃないのか?」
「そうね。学校は規律ある集団生活というものを体験させる場としての役割が大きいでしょうし、そう簡単には変わらないでしょうね。実際には私のように集団に馴染めない人間を一切救ってはくれないけれど」
「うっ、何だか重い話になってきたな……と、とにかく苦手な音楽と体育も、筆記試験になれば満点を取れるんじゃないのか?」
「ええ、そうかもしれないわね。でも裏を返すと、実技が重要な教科だからこそ筆記試験が適当という要素もあるわよ。教科書を暗記するだけで誰でも満点が取れる難易度に設定されているものね」
「そ、そうなのか。満点なんて取った事が無いから分からないけど……」
「あらそう。わざとやっているのかと思ったけれど、本気で満点が取れていなかったのね。可哀想に。生きている価値があるのかしら」
「……正に雲の上から見下ろされたような気分だな……でもお前が言うなら教科書さえ見てれば満点ってのはホントだろうし、馬鹿にしてるんじゃなくて真実を言っただけだけだよな。結局は満点を取れなかった僕の責任だ」
「あら、あれだけ明確に馬鹿にしたのにずいぶんと殊勝な態度なのね」
「こら!やっぱり馬鹿にしてたのか!いくらなんでも酷いぞ!」
「うるさいわね。せっかく殊勝な態度になったんだからそのままにしておけば良いじゃないの。近い将来、文字通り別格な、殊更な勝利を私から収める事が出来るかもしれないわよ」
「いや、お前と勝負して勝てるとはとても思えないけど……まぁ良いか。結局得意な教科と不得意な教科ってのはあるのか?」
「しつこいわね。国語よ」
「ああ、なるほど。確かに一番得意そうだな。じゃぁ不得意な教科はあるか?」
「だから言っているじゃないの。国語よ」
「えっ?不得意の意味で言ってたのか?じゃぁ得意な教科は?」
「何度言わせるのかしら。国語だと言っているじゃないの」
「……えーと、真面目に答えてくれると嬉しいんだけど……」
「あら、真面目に答えているわよ、失礼な。一番得意、というよりも一番楽しさを感じるのが国語ね。そして試験が最も難しい教科でもあるわね」
「へー、そういう事か。でもお前の実力なら試験なんて簡単なんじゃないのか?」
「あら、そうでもないわよ。例えば先生が試験問題を作った日時をAとして、試験を受けている時間をBとすると、Bの私は試験を受けている最中にも関わらずどんどん新しい単語や表現を思いついてしまうわ。でもAの時点で世界に存在していた言葉しか解答として求められていないのよ。それを書き込まなければならないつまらなさは耐え難いものがあるわね。言葉は日々進化して、毎日新しい単語や表現が生まれているわ。だから国語の試験というのは常に不完全なのよ」
「な、なるほど……苦手だと思う理由がまた雲の上の話ってカンジだな……」
「それとあなたのせいでもあるわね、腹立たしい」
「えっ?何で?僕のせいで国語が不得意なのか?」
「うるさいわね。どんな単語もどんな表現もただの音と文字の羅列でしかないのに、全然言いたい事が言えないじゃないの。どう責任を取るつもりなのかしら」
「そっか……まぁ何となく言いたい事は分かったけど……ちょっと頑張って口にしてみたら何かが変わるかもしれないぞ?」
「……うるさいわね。このうるさい人は確かミッキーとかいう名前だったかしら、腹立たしいわね。私がいつもあなたの事が大好きだなんて思い上がっていると痛い目に遭うわよ」
「……そういう表現じゃないと言いたい単語も口に出来ないのか……でも焦らなくても良いと思うぞ。僕はそんなミニーの素直じゃないところも大好きだからさ」
「……うるさいわね。躊躇無く口にしたりして。だから言ったのよ、完全にあなたの勝ちね」
「クリックを得意科目にしたらどうかしら」
「ツイッター とかいうものを始めてみたわ」
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