「なぁ、ちょっと訊きたいんだけど」
「あなたの好きにしたら良いと思うわ」
「え?まだ何も訊いてないぞ!」
「うるさいわね。どうせあなたは大した質問なんてしてこないに決まっているもの。だからあなたの好きなように、思った通りにすれば良いと思うわ」
「ぐっ、じゃぁ抱き締めても良いかどうか訊こうと思ってた、って言ったらどうするんだ」
「しつこいわね。あなたの好きにしたら良いと言っているじゃないの」
「ええっ?良いのか?な、何だか思いも寄らない幸せな展開に……」
「あら、あなたが好きにするなら私も好きにしても文句は言えないわね。私に近付こうとしただけで引っぱたかれる空間が出来上がってしまうかもしれないけれど、それでも構わないのかしら」
「うっ、それは恐ろしいな……と、とにかく、僕が訊こうとしてたのは全然違う事なんだけど……」
「あらそう。訊きたいなら早く訊けば良いじゃないの。……試してみれば受け入れるかもしれないのに、こんな事で尻込みしていてはまだまだ先に進む事は無さそうね……」
「え?何か言ったか?」
「あら、何かしら。あなたは私が何を言ったかを訊こうと思っていたのかしら?」
「いや、そんな未来に起こる事の質問をしたりしないぞ。まぁ何も言ってないなら良いんだけど……とにかくたまには髪型を変えようかなと思ってさ、どう思うか訊こうと思ったんだ」
「あらそう。どこも変わっていないように見えるわよ。もちろん昨日よりも0,2~0,3ミリほどは伸びているでしょうけれど、それを髪型の変化と言い出だしたらもうキリが無いんじゃないかしら」
「いや、今じゃなくて、切ったらどうなるかな、と思って……」
「まぁ、ついさっき未来に起こる事の質問はしないとか言っていたのはどこの過去の人だったかしら。髪型の前に価値観が急激に変化してしまって、もう何が何だかさっぱり分からないわ。もうあなたは過去の人よ。私に話し掛けないでちょうだい」
「ちょ、ちょっと待った!さっきのはそういう未来とはまた別の未来で……」
「うるさいわね。冗談よ。とにかく明日になるとあなたがツルツルに頭を剃りあげてくるという話でしょう?暑くてヤケになる気持ちも理解出来るけれど、実際には髪は直射日光から頭皮を逃避させたり、汗が流れ落ちるのを食い止めたりしているのよ。剃ってしまうとかえって暑さを感じる機会が増えるんじゃないかしら」
「誰もツルツルにするなんて言ってないじゃないか!短くしたらどうなるのかな、って訊こうと思っただけだぞ!」
「うるさいわね。髪が短くなれば気が短くなっても許されると思ったら大間違いよ。髪を短くしたいならすれば良いじゃないの」
「そ、そんな投げやりにならずに出来たらお前の意見も参考にしたいんだけどな……実際には僕が見るわけじゃなくて、隣にいるお前が一番目にする機会は多いはずだし」
「ええ、そうかもしれないわね。でも残念ながら本当にどうでも良いわよ。私の髪は変わらないもの」
「自分の髪型さえ完璧なら他は全く興味が無いみたいな言い方だな……」
「違うわよ。私の価値は変わらないもの、って言ったの。あなたの髪が全て抜けたとしても、針金みたいに真上に伸びたとしても、他の人があなたを見て笑ったとしても、私のあなたに対する想いは変わったりしな……って、何を言わせるのかしら、みっともない」
「ううっ、そっか、僕の人間性を好きでいてくれてるんだな。凄く嬉しいよ、ありがとう」
「……だから私が適当に面白おかしく短くしてあげるわよ。早くハサミを持ってきてちょうだい」
「笑いものになっても構わないって言ったわけじゃないぞ!」
「クリックしないと切り刻むわよ」
「ツイッター とかいうものを始めてみたわ」
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