【ポイント】
■社団法人の基金の採用には定款の定めが必要
■基金を返還する際には相当する金額の「代替基金が必要」
■基金の返還は、一般債権に劣後する
こんにちは。公認会計士の内野恵美です。
さて基金についての会計面からやや離れた事項をお伝えしてこの基金シリーズを終わりにしたいと思います。
写真は、引き続きあまり関係ないですが、前回の写真野鳥保護区から少し離れたところにある根室の湿原です(エゾ鹿が見えます)。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(法人法)において、基金制度の採用は、義務付けられていません。そのため、一般社団法人が定款によって基金を募集できることを定めた場合にのみ、定款に従い運用することとなります。
基金として集めた金銭等の使途に法令上の制限はありません。ですから、一般社団法人の活動の原資として、自由に活用することができます。
★代替基金
基金の返還をする場合には、返還をする基金に相当する金額を、「代替基金」(だいたい・ききん)として計上しなければなりません。
この代替基金は、取り崩すことができないとされています(法人法第144条)。
代替基金を、返還された基金の代わりに計上することは、法人の財産的基礎を形成する基金(代替基金を含む)の総額を減少させないようにする仕組みです。
そうすることで、外部負債としての性質をもつ基金を、その解散の前に返還できるようにするものです。
まとめると、基金の返還に備えて代替基金を計上することが要請されていることによって、基金を設定すると、その解散まで拠出相当額の財産が維持されていくことになります。
★基金の返還の制限
前述のとおり、基金には、拠出された資金を返還する義務があります。ですから、資金を拠出した人者にとって、基金は返還が約束された債権になります。
ただし、基金の返還に係る債権は、一般債権に劣後します。つまり、基金が他の債務を返還した後にしか返還されません。
このことを、法律では、「一般社団法人が破産手続開始の決定を受けた場合においては、基金の返還に係る債権は、破産法上の劣後的破産債権等にも劣後する」と定めています(法人法第145条)。
さらに、「法人の解散時には基金の返還に係る(法人にとっての)債務の弁済は、その他の債務の弁済後でなければすることができない」と、しています(法人法第236条)。
さて3回にわたってここまでお読みくださってありがとうございます。
今回の基金についての話はここで終わりにしたいと思います。
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