父の会社への貢献,どう評価される?~寄与分~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 父の相続で兄弟がもめています。
  父が経営していた会社で兄弟両方とも働いていたのです。
  2人は,それぞれ会社への貢献があると主張し,譲りません。
  どのように判断されるのでしょうか。

ちょっと本題離れて,今日のニューズ。
今日,福島第1原発で作業員が亡くなりました。冥福をお祈りします。
死因についていろんな噂が飛び交っています。
被曝線量が0.17mSv・作業関与2日目という報道が正しい前提であれば,死因は放射線は関係ないはずです。
約16~20000mSv(致死量)を瞬時に浴びたJOC臨界事故でも死亡まで85日でした。苦しい闘病でしたが。
最初の約2週間は普通に喋れていました。
99%致死線量は7000~10000mSv。
ポイントは,この致死量の2倍を被曝しても,最初は見た目健常者と見分けがつかないということです。
最初から細胞内部はめちゃくちゃに壊れていましたが。
「直ち」には影響が出ないのです。
直ちに影響ない≠安全 ということなのです。

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A 具体的・個別的状況によります。ただし,兄弟両方とも寄与分が認められない可能性が高いと思われます。

類似裁判例(審判)を末尾に引用します。これを元に説明します。

兄弟A・Bが,双方,役員になっていた期間がある,とか,その父経営の会社が不動産(借地権)を取得する交渉をがんばった,などと自らの貢献度を主張しました。
裁判所は結論として,双方の寄与分を否定しました。
裁判所の理論は,すっごく要約すると,「貢献して助かったのは父ではない。会社である。」ということです。
私なりに切り込みます。

気付いたこと1
会社の資産形成に貢献した場合,父個人の資産形成に貢献したと言える可能性もあるはず。
小規模の会社では,オーナー,つまり株主が創業者個人100%ということもあります。
そうです。会社の保有する資産価値 は 個人の保有する「株式」という財産の価値 にリンクしてくるのです。
このリンクが薄いことになれば,多くの資産を会社に移して,リッチな会社,にすれば,個人財産を減らせることになります。
普通「財産を減らしたい」と思う人は居てないはずですが,「減らしたい」と思う変な場面はあります。
そう,「税金」です。
相続税対策になりそうです。
しかし!
裁判所と税務署は違うのです。税務署は株式の価値もしっかり見ています。
昔から 節税対策vs税務署 は骨肉の争い(?)を続けてきました。
株式の価値の評価方法だけでもものすごく複雑化しています。場合分けが激しいのです。
会社にどんな財産を持たせているか(持っているというより「持たせている」というニュアンス)によって株価算定方法が違うのです。
・・・と熱くなりそうな相続税対策・税務訴訟のネタはまた別の話し。
あ,言いたかったのは,税務署の考え方と裁判所の考え方がすごい大きいなあ,このマターは。ということ。

気付いたこと2
小さいことです。
裁判例の中で,兄弟のうち片方(A)が一時期会社から給与をもらっていなかったことがピックアップされています。
ついで的に。カッコ書きで。
Aが4年間給与をもらっていなかった ということが Aの不利に 使われています。
要は,「その4年実は働いてなかったんちゃう?」と。
この点,私はこう思う。
もしかしたら,4年間は会社の利益を上げるため,報酬半減どころではなく全額返上でがんばった!ということもあるのでは。

ここは真面目に言えば,「Aがそのような主張をしていなかった→だからそのような考慮はしなかった」ということなのでしょうけど。
逆に,主張をしていないと,あらん方向に事実が評価されるということもあるんだな,と思います。
もっと細かい部分では,経験している限りでも,「裁判官,完全に誤解しているな」と思う判決もあります。有利にも不利にも。


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<裁判例(抜粋)平成21年1月30日東京家庭裁判所>
(2) そこで,検討するに,申立人Aは,①昭和23年ころから○○業を営んでいた被相続人と昭和24年×月×日に婚姻し,昭和25年×月に相手方を,昭和27年×月に申立人Bを,昭和28年×月に申立人Cを,昭和30年×月に脱退前申立人Dを,昭和33年×月に同Eを,昭和35年×月に同Fを順次出産しており,相手方,申立人B,同C,脱退前申立人らの育児等に追われ,家事も担っていたことが推測されることからすると,申立人Aの母や身内の者が家事や育児を助けてくれることがあり,申立人Aが○○業を手伝うことがあったとしても被相続人と同等に仕事をしたとの説明は措信できず,○○業の手伝い(取引先との連絡や会計処理等を含む。)は夫婦間での協力の範囲にとどまると解されるので(なお,相手方によれば,申立人Aは給与の支払を受けていたという。),結局309坪の借地権を被相続人が取得したことについて申立人Aの特別な寄与があったと認めるに足りる具体的証拠はなく,この借地権が等価交換(甲32,借地権売買と別紙遺産目録1記載の土地の売買,同目録2記載の建物の建築請負とを一体化した契約に基づき取得)された別紙遺産目録1,2記載の土地建物の持分についての申立人Aの具体的寄与行為は認められない。②申立人Aが昭和47年から平成3年まで被相続人に代わって○○株式会社の不動産賃貸業の経営に実質的に係わってきたとしても(甲37によれば,申立人Aは昭和56年から59年までの4年間同社から給与支払を受けていないことからすると,同社の経営に係わっていたか疑問である。),同会社に対する貢献があるにすぎず,これをもって被相続人の遺産の形成維持に貢献があったとはいえない。③被相続人の役員報酬(給与)は,同会社から支給されるものであって,申立人Aが同社を実質的に経営していたとしても,申立人Aが被相続人に対し財産給付したものではなく,同申立人による寄与ということができないことは明らかである。
   また,申立人Bが,平成4年から実質的に○○株式会社の経営にあたっていたとしても,被相続人の役員報酬(給与)は同会社から支給されるものであって,申立人Bが被相続人に対して財産給付をしたものではないし,前記借地権と遺産土地建物(被相続人持分100分の65,○○株式会社持分100分の35)の交換について関与したとしても同社の役員としての立場をも有していたことからすると,被相続人の遺産の維持増加につき特別な寄与があるとは認められないから,いずれも申立人Bの寄与ということができないことは明らかである。
   よって,申立人A及び同Bの寄与分の申立ては,いずれも理由がない。