☆嬉しい報告 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2013.9.28「Q&A94 41歳、第二子希望、原因不明」
2014.4.24「Q&A325 なかなか妊娠しません」
2014.6.11「Q&A370 子宮筋層を柔らかくする薬剤」
2014.6.18「☆私の目指す生殖医療:ブログ読者のお便りから」の2番
2014.10.21「Q&A487 抗リン脂質抗体候群、潰瘍性大腸炎、橋本病」
以上でご回答本当にありがとうございました。

あれから計7個の良好胚盤胞と1個の分割胚を貯め、移植の運びとなりました。以前お話した通り私には自然周期での移植が合っているのではないかと思われていたのですが、自然周期では早発黄体の状況となってしまった為、自然周期での移植を断念。ホルモン補充周期では卵胞が育って排卵してしまったことがあった為、点鼻薬併用でのホルモン補充周期で移植の準備を整えました。

先生の記事で、「なかなか着床しない場合は着床の窓がずれている可能性もある」とのことでしたので、担当医とよくよく相談し、5日目と6日目に胚盤胞を移植するという二段階移植の応用編で挑みました。5日目に4AA(融解移植時6AA)、6日目に4BB(5BB)を移植、BT9日目の判定日にはhCG 319、数値からは双胎も考えられましたが4w5dで1個の胎嚢が確認出来、6w0dで心拍確認、その後も妊娠継続し、現在19wとなりました。

抗リン脂質抗体が陽性ということで、不育症専門病院にてヘパリン・アスピリン併用、橋本病に対しては甲状腺専門病院にてチラーヂン75μg処方されていますが、お陰様で現在のところ週数通りの順調な妊娠経過となっております。高齢の為染色体異常が気になったのですが、ヘパリン・アスピリン使用中にて羊水検査はリスクが高いとのことで、NIPTを受けたところNegativeとの結果を頂き、さらについ先日、専門医にて中期の胎児超音波診断を受けたところ特に異常はなかった為、ようやく松林先生にご報告しようかという気持ちになりました。ご報告が遅くなり申し訳ございません。

今回の第二子妊娠は抗リン脂質抗体陽性、橋本病、帝王切開後、さらに出産時43歳という高齢であり、かなりのハイリスクとなりますので、安定期とはいえ安心できるわけではありませんが、第二子希望してから約3年、ようやくここまで辿り着いたという喜びを感じております。

採卵すれば良好胚盤胞が採れるにも関わらずまったく着床しないという状況が続いていた頃は希望を失いかけておりました。しかし松林先生のブログで私の質問を何度も取り上げてくださり、その度に何度もご回答いただいたことで本当に勇気づけられました。また、それ以外にもビタミンのことや最新の文献紹介など、とても参考になるものばかりで、先生のブログは私にとってセカンドオピニオンそのものでした。本当に、どうお礼を申し上げたら良いか分かりません。心から感謝致しております。

日々ご多忙のこととは存じますが、どうかこれからも私のように不妊に悩む者の救世主であり続けてください。松林先生の、今後ますますのご活躍を願ってやみません。本当に、ありがとうございました。

コメント:
4回のQ&Aを経て無事妊娠が成功しており、大変嬉しく思います。今回の一連の内容を再び読んでみましても、いかにフレキシブルに対応できるかが妊娠するための最大のキーポイントだと再確認できます。
1 不妊クリニックでは不育検査は異常なしと判断されていますが、不育検査を専門医で行なったところしっかりとした異常が確認されています。
2 着床の時期をズラす作戦が奏功しています。

あるひとつの方法に固執していると、その方法に適した方のみが妊娠し、そうでない方は妊娠しません。不妊症では全ての手段を行なえる体制が必要です。また、不育症の診療は必ず不育症の専門医のもとで受ける必要があります。不妊クリニックのほとんどの医師は不育症について知識が不十分です。特に、基準値の判断が「妊娠を維持するための基準値」を用いるべきところが、「一般の内科の基準値」を用いてしまっていますので、多くの場合異常なしと捉えられてしまいます。この方は、不育症専門クリニックへの初診の予約で何ヶ月か待っておられましたが、決して無駄な待ち時間ではなかったと思います。また、40代になると、全てが「卵子のせい」で片付けてしまわれることが極めて多いように思います。不育の検査をしても着床の時期をズラしても卵が悪いから「どうせ無理」という悪魔の文言にやられてしまいます。果たしてそうでしょうか。卵子以外の要因をしっかりつぶせているのでしょうか。そう考えると、年齢云々ではなく、どの年齢の方でもしっかりとした治療を施す必要があることがご理解頂けると思います。

当院は、不妊と不育が一緒に診療できる唯一といってもよいクリニックです。そのメリットは計り知れませんので、当院のようなスタイルのクリニックが増えれば、もっと妊娠までの時間が短縮できると思います。そのような観点からも、不妊症の先生にはぜひとも不育症を勉強していただきたいと切に願います。しかし、不妊だけでなく不育の論文にも目を光らせ、不育の急速な進歩についていくことは並大抵の努力ではできないかもしれません。しかも不育の診療を取り入れると、オーダーが極めて複雑になり、通常の不妊クリニックでは対処できない可能性もあります。当院も、複雑なオーダーを何とかシンプルにならないかという要望をスタッフからききますが、そこを何とか我慢して欲しいとお願いしています。なぜならば、その複雑なオーダーが、皆様の妊娠に結びつくからです。

「どうせ無理」という悪魔の文言については、下記の記事の植松努さんの動画を参照してください。
2015.4.1「夢はかなう」