Q&A325 なかなか妊娠しません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2013.9.28「Q&A94 41歳、第二子希望、原因不明」のつづき
その後は採卵のみ行い、現在の凍結胚は、5日目4ABが4個、5日目4BAが1個、6日目4BBが1個、3日目12細胞G2が1個、3日目8細胞G1が1個あります。
①第1子出産後の移植は、新鮮胚盤胞移植を1回、凍結胚盤胞移植を2回、新鮮分割胚移植を1回しました。凍結胚盤胞移植の際はホルモン補充周期での移植だったので、エストラーナテープを1日2枚・ジュリナ1日1錠内服で内膜を作りましたが、卵胞が育って排卵してしまうというレアケースに当たってしまいました。その周期は移植を見送り、次の周期は点鼻薬を使用し排卵抑制しました。卵胞は育ったものの排卵抑制でき、ようやく移植が出来ると思ったら今度は内膜が厚くならず移植中止。さらにその次の周期は、エストラーナ2枚・ジュリナ2錠・プレマリン2錠に増量して内膜を作り移植しましたが判定日のhCG値は1程度で陰性判定でした。私のようなケースでは、ホルモン補充周期は合わないのでしょうか。医師には「ホルモン補充周期の方が着床の窓が開いている時間が少し長いから」ということでいつもホルモン補充周期を勧められます。自然周期で凍結胚盤胞移植をしたことがないのですが、試してみる価値はありますか。
②出産後の胚移植の際には毎回、子宮の前屈が強いとのことで、鉗子でつままれて痛い思いをします。その際に、つままれた部分だけでなく下腹部に子宮収縮した時と同じ痛みを感じました。それを医師に話しましたが、そのまま移植となりました。子宮収縮した状態で胚移植をすると、着床が妨げられたりしないのでしょうか。また、次回移植する際にも子宮を鉗子でつままれることが予測されます。「子宮に痛みがある状態で移植すると、また着床しないのでは」という予感がしてしまいます。例えばTOWAKO法など、何か打開策があるのでしょうか。
③前回の質問の際「妊娠出産されている方に着床障害はないものと考えます」とのご回答をいただきました。不育症の検査も、前回の質問に書きました通り、メジャーなものは自ら希望して受けましたが特に問題は無いとのことでした。甲状腺ホルモンは第一子治療中に検査を受けましたが、問題ないとのことだったので、その後は検査していません。大切な凍結胚の移植です、移植前に何か予め受けておいた方が良い検査などはありますでしょうか。
④私の通うクリニックでは、SEET法は新鮮胚移植の際にしか行っていない(SEET液の凍結保存はしていない)のだそうです。その為、SEET法に代わるものとして2段階移植を視野に入れ、3日目分割胚を2個凍結してあります。移植をする際、どのような組み合わせが良いとお考えでしょうか。
⑤最後に行った移植では、SEET法の代わりに子宮内に自己リンパ球移植を行った上で、凍結胚盤胞の2個同時移植をしましたが陰性でした(2個のうちグレードの良い方にAHA施行)。第一子治療の際の移植前周期に子宮鏡検査を行って妊娠したので、出産後1回目の移植周期前にも同様に子宮鏡検査をしましたが、陰性でした。何か他に少しでも着床しやすくなるような方法はありますか。ちなみに、私の通うクリニックでは子宮鏡検査の際は生理食塩水は使用せず、ガスの注入によるものです。
⑥良好胚盤胞を移植しても立て続けに陰性判定が出ています。年齢的に胚の染色体異常などが原因なのだろうと思っていますが、それでも全く着床しないというのが腑に落ちません。たとえ染色体異常だったとしても、少しぐらいかすってもおかしくないと思うのですが。子宮鏡検査では異常なしとのこと、内膜も8mm以上での移植です。何か原因として考えられるものはありますでしょうか。
⑦担当医師によると、「凍結が向かない人もいる」とのこと。たしかに、第一子は採卵周期の新鮮胚盤胞移植で妊娠しました。あえて採卵周期に新鮮胚移植をする、もしくはドミノ移植をするということは意味がありますか。

A お話の様子では、毎回同じことの繰り返しのように見えます。違うことをトライしてみる価値はあるでしょう。行き詰まっているようですので、転院も視野に入れてはいかがでしょうか。
①ホルモン補充周期で卵胞が育って排卵してしまうのは、それほどレアケースではありません。第一子は新鮮胚盤胞移植で妊娠していますので、自然周期で凍結胚盤胞移植をする価値は十分あります。私の知る限り「ホルモン補充周期の方が着床の窓が開いている時間が少し長い」という説に確かな根拠はないと思います。
②胚移植の際の子宮収縮が妊娠率低下をもたらす可能性はあります。特に、子宮収縮の波が外側に向かっている場合です。また、TOWAKO法は子宮筋層を貫くので、より強い子宮収縮が起きる可能性が高くなりますので、お勧めいたしません。このような場合は、子宮筋層を柔らかくする薬剤の使用、あるいは移植周期での生理食塩水を使った子宮鏡検査がよいと思います。下記の記事も参照してください。
2014.3.22「☆子宮の蠕動運動が培養液を移動させます」
③不妊クリニックでの不育症検査は、必ずしも全ての項目が網羅されていない、あるいは判断基準に「内科の基準を採用」しており、「妊娠するための」基準になっていないことがあります。不育症専門医の受診をお勧め致します。
④⑤SEET法以外にも、G-CSF、スクラッチング、エンブリオグルーなど、着床率を上げる工夫がありますので、それをトライしてみてはいかがでしょうか。もちろん、2段階胚移植もお勧めです。組み合わせは、6日目4BBと3日目12細胞G2を最後にしておけば、あとはどれを選んでも遜色ないと思います。下記の記事を参考にしてください。
2013.11.12「☆☆着床率を上げる方法(NSAIDsとCOX)」
2013.12.25「☆スクラッチング法」
2013.9.19「☆エンブリオグルー」
⑥可能性として考えられること全てをトライしてみるのがよいと思います。
⑦採卵周期に新鮮胚移植をする場合は、強力な刺激は控えた方が着床環境は良くなります。1~2個採卵して、新鮮胚と凍結胚を1個ずつ移植するというアイデアもあります。また、第一子妊娠の時と全く同じ方法を行ってみるのもよいでしょう。