BRCA遺伝子変異とAMH低下の関連 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

乳癌遺伝子であるBRCA遺伝子卵巣予備能低下の関連については、下記の記事でご紹介しました。
2013.5.31「乳癌遺伝子(BRCA)と早発閉経の関係」
2013.8.29「BRCA遺伝子変異があるとなぜ早発閉経になるか」
本論文は、生殖細胞のBRCA1遺伝子変異によりAMHが低下しますが、BRCA2遺伝子変異ではAMHが低下しないことを示しています。

Fertil Steril 2014; 102: 1723(米国)
要約:1991~2008年、ご家族に乳癌の方がおられる18~45歳の健康な女性143名のBRCA遺伝子とAMHを検討しました。内訳は、BRCA1遺伝子変異62名、BRCA2遺伝子変異27名、対照群54名です。BRCA1遺伝子変異とAMH低下には有意な関連を認めました。これは、年齢とBMIで補正してもなお有意でした。BRCA1遺伝子変異を持たない方と比べ、BRCA1遺伝子変異を持つ方で、AMH<1.0 ng/mLの頻度が4.22倍有意に多く認められました。しかし、BRCA2遺伝子変異とAMHには関連を認めませんでした。

解説:BRCA遺伝子は二重鎖DNAの修復に働くとされており、BRCA遺伝子変異は卵子のアポトーシスや卵子の枯渇に関連すると考えられています。BRCA1遺伝子は様々な遺伝子の修復に関与し、BRCA2遺伝子は特定の遺伝子の修復に働くという報告もあります。BRCA遺伝子変異のある方は、AMH検査も行い、将来の妊孕性についてのカウンセリングを受けることが勧められます。