Q&A475 性別の希望は言ってよい? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 原因不明不妊、凍結胚盤胞移植で現在妊娠中
2回目の採卵が上手く行き、5日目胚盤胞9個を凍結しました。一番良いグレードのものを病院側に選んで頂き、妊娠することが出来ました。お腹の子は男の子と判明しました。とっても可愛いし愛おしいし産まれて来てくれるのが楽しみで仕方ないですのですが、昔から女の子の母親になるのが私の夢でした。第2子、第3子も凍結胚盤胞で妊娠出来たらいいなと思っています。
現在凍結保存されている胚盤胞は、院内評価でグレードの一番良い評価の胚盤胞が5個、二番目に良いグレードの胚盤胞が3個、三番目に良いグレードの胚盤胞が1個あります。
全て5日目胚盤胞なので、もしかしたら全て男の子の胚盤胞ではと思うことがあります。
妊娠出来ただけでも有難いし幸せなことなのは解っているのですが、どうしても女の子を産み育てたいという気持ちがあります。次回、第2子の不妊治療を再開するにあたり、医師に性別の希望を伝えようと思うのですが、すごく失礼なことなのではないか、呆れられるのではないか、という不安もあります。また、日本では胚盤胞の性別判定が出来ないこともわかっています。ただ先生に女の子の確率の高そうな胚盤胞を選んでほしいだけなんです。
松林先生はこのような相談を患者さんにされたら、医師として不快に思われますか。また、このような相談をすること自体がものすごく失礼なことでしょうか。お医者様側の見解を是非聞きたいと思い質問してみました。どうか宜しくお願い致します。

A 日本人は女の子を希望する確率が高く、特に第1子が男児の場合には、尚更です。したがって、当院を受診される方にも、女の子を希望とおっしゃる方もおります。私は、人それぞれいろいろな考え方や事情があって当然と思いますから、これを否定するようなことはありません。しかし、どの胚が男の子でどの胚が女の子かは、染色体検査をしなければ本当のところはわかりません。
したがって、このような意見を言った場合に「そんなことはできないから」と心証を悪くされる医師が少なからずおられると思います。

現在明らかになっていることは、下記です。
男の子が多いのは、胚盤胞>分割胚、新鮮胚>凍結胚、体外受精>顕微受精、発育速い>遅い、胚です。したがって、女の子になる確率が高い胚を選ぶ場合には、「分割胚、凍結胚、顕微受精、発育が遅い」胚となります。現在凍結中の胚で妊娠を目指すなら、前三者は変えられませんので、発育が遅い胚を選ぶ以外にありません。発育の遅い胚とは、6日目の胚、大きさが小さい胚(胚盤胞のグレードで数字が小さい胚)、細胞数が少ない胚(胚盤胞のグレードでCC胚)になります。つまり、みかけのグレードが悪い胚から順番に移植すると、女の子になる確率がやや高くなると思います。
以上の事実をご存知の医師だとしても、何故わざわざグレードの悪い胚から移植するのか疑問を持たれるかもしれません。また、クリニックの妊娠率低下につながることを嫌うかもしれません。

下記の記事を参考にしてください。
2013.3.10「発育が速い胚盤胞は男の子になる?」
2014.6.14「☆体外受精、顕微授精による赤ちゃんの男女比」