Q&A50 夫がタバコを吸います | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 体外受精で不妊治療をしています。私は、タバコを吸ったことがありませんが、夫が喫煙者です。夫婦の一方だけでも喫煙者だと、受精卵の質が落ちて、着床や妊娠継続に影響しますか。喫煙によって、染色体異常となり、着床しなかったり、流産するということでしょうか。禁煙してからどれくらいで、改善されますか。

A 夫婦のどちらかが喫煙者、あるいは喫煙者がいなくとも受動喫煙でさえ、妊娠には悪影響です。簡単に言って、せっかく体外受精を行っていても、妊娠率は半分になります。
質問に記載の現象は全てタバコによって増加します:受精卵の質的低下、着床率低下、妊娠継続率低下、染色体異常増加、流産率増加。

2013.1.5「☆タバコの影響:学会のオフィシャルコメント」をご覧ください。
1 不妊症の13%は、喫煙が原因です。
2 喫煙はあきらかに生殖機能を悪化させ、1~4年閉経が早くなります。
3 喫煙者の男性の精液所見は22%低下し、タバコの本数に比例します。
4 喫煙は、流産と子宮外妊娠のリスクを増加します。
5 喫煙による胎児(受精卵)奇形率の増加が一因となります。
6 喫煙者は体外受精で妊娠するには、非喫煙者の2倍の回数を要します。
7 受動喫煙が多い方は喫煙者と同等になります。

2012.9.26「☆タバコの影響:卵子」
「タバコ→テロメア短縮→遺伝子異常→異常卵→不妊、化学流産、流産」

2012.9.25「☆タバコの影響:精子」
「タバコ→ミトコンドリア膜電位低下→精子運動率低下、DNAダメージ増加→アポトーシス(細胞死)」

タバコを吸っていても妊娠する方は大勢います。しかし、妊娠しにくい方にとっては致命傷になりかねません。少しでも妊娠率をよくするために、禁煙をお勧めします。禁煙は治療の一環であるという認識を持つことが大切です。禁煙してどのくらいで効果が現れるのかについて明らかなデータはありませんが、精子は約75日かけて作られますので、3ヶ月程度みればよいかと思います。