☆AMHは母親の閉経年齢に左右される | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

AMHについては、これまでたくさんの論文を紹介してきました。AMHは卵子の数を示し、卵子の数は生まれつき決まっています。卵子は多い人も少ない人も普通の人もいますが、どのようにして規定されているのかは不明です。本論文は、AMHは母親の閉経年齢に左右されるという非常に興味深い結果を示しています。

Hum Reprod 2013; 1: 247
要約:母親の閉経年齢がわかっている527名の女性(20~40歳、コペンハーゲン大学病院勤務)のAMHと前胞状卵胞数(AFC)を測定しました。母親の閉経年齢とAMHおよびAFCには有意な正の相関を認めました。母親の閉経年齢が45歳以下の場合には、母親の閉経年齢が1歳若いとAMHが8.6%減少しました。同様に、母親の閉経年齢が46~54歳では1歳あたり6.8%減少、55歳以上では1歳あたり4.2%減少していました。AFCも同様に各群で母親の閉経年齢が1歳若いと5.8%、4.7%、3.2%の減少でした。なお、BMI、喫煙、薬剤服用で補正した結果を示しています。

解説:本論文の結果から、母親の閉経年齢が若ければ若い程、その娘のAMHとAFCが低下することを示しています。双子、姉妹、親子の閉経年齢が近いという疫学(統計)調査が複数報告されていることから、閉経年齢は遺伝するのではないかと考えられていました。閉経年齢に遺伝が関与する確率は31~87%と計算されています。一般に5~14%の方が45歳未満で閉経し、1~2%の方が40歳未満で閉経します。2005年の国勢調査によると、女性の未婚率は30~34歳で32.0%、35~39歳で18.4%、40~44歳で12.1%です。晩婚化が進む昨今では、結婚前に(あるいは妊娠を望む前に)閉経してしまう場合もあり得ます。母親の閉経年齢が45歳以下の場合には、一度AMHの測定をお勧め致します。