☆女性ホルモンのサプリは本当に健康によいか:米国編 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

昨今の健康ブームにより、「女性の健康」をキャッチコピーとして「女性ホルモン」の含まれた食品やサプリメントが話題になっています。しかし、これらを摂取することにより、かえって健康状態を損なう場合があることは、一般にはあまり知られていません。米国産婦人科学会は、下記のオフィシャルコメントを発表しています。

Fertil Steril 2012; 98: 308
要約:女性ホルモン補充療法は更年期の女性にとって欠かせないものです。更年期障害は、女性ホルモンが低下して起こる疾患ですので、それを補充してあげれば症状は良くなります。それ以外にも女性の健康維持全般によいとうたい文句で、盛んに処方されていました。しかし、WHIスタディーが2002年に報告され、状況は一変しました。WHIスタディーでは、それまで女性ホルモンにより予防効果ありとされていた心血管疾患の予防効果が否定され、乳がん、血栓症、脳卒中のリスクが増加するというマイナスの要素が証拠として発表されたのです。つまり、健康維持のための女性ホルモンという選択肢がなくなりました。すると、薬剤に代わるものとして 女性ホルモンサプリメントがたくさん登場しました。これらのサプリメントは、「植物由来の女性ホルモンで、生体のものと同じ構造であるから自然であり安全である」と宣伝され発売されています。しかし、実際は女性ホルモンサプリメントは望ましくないものとして米国産婦人科学会の勧告に記載されています。
1 従来の女性ホルモン補充療法(薬剤)と比べ、女性ホルモンサプリメントが優れているという証拠はない
2 女性ホルモンサプリメントは、抽出状況によりその純度が変化し、効果や安全性のデータが欠如している。
3 女性ホルモンサプリメントは、女性ホルモンとしての活性が一定でないため、過小あるいは過剰の女性ホルモン摂取が起こり得る
4 現在のデータからは、従来の女性ホルモン補充療法(薬剤)が望ましい

解説:日本人も同様に、「植物性」「自然」「天然」という文言があると、何となく「安全」だと思い込んでしまいます。「薬」は「毒」という考え方が一般に浸透しているためかもしれません。植物にも動物にも自然界には毒物はたくさんあります。食品だから安心というのは正しくありません。日本でも厚生労働省の食品安全委員会は2006年に警告文を出しています。次回はそれについてご紹介します。