この世界は一体何次元なんだろう?
そんな問いかけの答えの候補として、
今回は、5次元より高い次元を考える
超弦理論 や M理論 を紹介します。
さて、
世の中で一番小さいものは何でしょう?
分子や原子が思いつくかもしれませんが、
原子はさらに小さい電子と原子核からできています。
さらに、原子核は、陽子と中性子からなり、
陽子と中性子は3つのクォークから出来ています。
現在の理論では、電子やクォークなどが最小の粒子だと考えられています。
物質の根源は極めて小さな 「ひも」 であるといいます。
ひもが振動することで、
電子やクォークなどの粒子が作られる
というダイナミックな考え方をします。
すべての自然現象の根本を、
極めて小さな振動するひもで説明しようとする
超弦理論は大変興味深い理論だといえます。
< 振動するひものイメージ >
そして、超弦理論によると、
この世界は10次元であるといいます。
10次元というのは想像を絶する世界ですね。
ただし、
このうち6次元は極めて小さく折りたたまれていて、
私たちは感知できないのです。
この6次元の世界を、カラビ・ヤウ空間といいます。
残りの4次元が私たちの世界(空間3次元と時間1次元)なのです。
< カラビ・ヤウ空間のイメージ >
しかし、研究が進むにつれて、超弦理論には
5つの種類があることが分かってきました。
この世界の真理を描く最終理論の候補であるにもかかわらず、
5つもタイプがあるのは、しっくりきません。
そこで、これらの5種類の超弦理論を
統合するような理論が考えられました。
1995年にヴィッテンが提唱し、M理論と呼ばれています。
この理論によるとこの世界は11次元であるといいます。
私たちの住む世界は4次元空間ですが、
11次元空間を考えることで、
すべての自然現象がうまく説明できるのです。
また、超弦理論が物質の根源が 「ひも」 であるのに対して、
M理論では物質の根源は 「膜(ブレーン)」 であるといいます。
< ヴィッテン博士 >
M理論が完成すれば5つの超弦理論を統合することはできますが・・・
M理論自体、未完成な部分が多く、
実験的にも検証されていないため、
まだ確実な理論であるとは言い難い状況です。
ただ、
この世界は11次元であり、
万物の根源は膜である
というアイディアには夢があり、
今後の進展から目が離せません。
ちなみに、Mの由来は、
マジック(Magic)、ミステリー(Mystery)、膜(Menbrane)
などのようにいわれています。
まさに、神秘的で魔法のような理論だと思います。
◆ 「数」 と次元については、私の本 『数の世界』 をご覧ください。
私の本では、実数から八元数までの「数の広がり」について、
数学的な観点から詳しく書かれています。
実数、複素数、四元数、八元数は、
1次元、2次元、4次元、8次元の数とみなすことができます。
(ブルーバックス)
【執筆者】
松岡 学
数学者、博士 (学術)
高知工科大学 准教授
大学で研究や教育に携わる傍ら、
一般向けの講座を行っている。
アドラー心理学の造詣も深く、
数学の教育や一般向け講座に取り入れている。
音楽 (J-POP) を聴くのが趣味。
ファッションを意識し、自然な生活を心がけている。
出版物:『数の世界』ブルーバックスシリーズ、講談社。
『5歳からはじめる いつのまにか子どもが算数を好きになる本』スタンダーズ社。
『キララな恋愛や結婚生活を送るエッセンス』CLAP。
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